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<第2部:第11章 ピクニック(5):河原> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第345回
<第2部:第11章 ピクニック(5):河原>


片田舎の駅から電車で1つ隣の駅に降り立つと、オリエンテーリングをやったクスス山が奥の方に見えた。そのクスス山を源とする川が目の前を流れている。駅のそばの川原は下流の方に向かって広くなっていて、川遊びしている人やバーベキューをしているグループもいる。上流の方は両側の岸が背高く迫って崖のようになり、渓谷になっていた。

みんなはその川原に下りていった。さらにそこから奥の、両岸が岩で囲まれた渓谷状になっているところまで進み、荷物を下ろした。そこは日陰なうえ渓谷になっているので、クーラーが効いているようにひんやりとしていた。

「わーお、涼しい」
「気持ちいいわあ」
「いい所だろ。じゃあこの辺で店開きしようぜ」
「ういーっす」

アロン達は持参のバーベキューセットを組立始めた。

「僕はどうすればいいかな」

勝手が分からないリーダーは手にぶら下げたビニール袋を持ち上げてアロンに聞いた。

「勇夫がグリル組み立てるのを手伝ってよ。リーダーが持ってるのは炭だから、グリルが組み立て終わったら勇夫と炭に火をつけてくれ」
「分かった」

裕美子もアロンのところに歩み寄った。アロンのところには野菜が入っている袋を持ってきたカーラもいた。

「あの、敷物どの辺に敷きましょうか」
「平らな所がいいね。任せるよ」

カーラが上を仰ぎ見ながら言った。

「太陽どの辺かな。ずっと日陰な方が、い、いいよね」
「あ、そうだね。川下の方が南だから・・」
「あ、あの木の枝が張り出してるところにしようか。ユミちゃん」
「は、はい」
「行こう」

カーラさん、アウトドアだと頼もしいな。




少し地面を慣らして二人で敷物を広げた。

「ユミちゃん、これ四隅に杭打つ穴あるけど、そんなのあった?」
「いえ。知りません」
「荷物で押さえてもいいけど・・」

カーラはきょろきょろと周囲を見渡すと、真っ直ぐな小枝を拾ってきた。

「これ先を尖らせたらいいんじゃないかな」
「カーラさん凄いです。でも道具ありますか?」
「え?・・持って、ないよね?」
「アロン君に言って借りましょうか」
「う、うん・・」

カーラはちらちらとアロンの方を見てはもじもじしだした。

『カーラさん何ためらってるの?。わたし行っちゃおうかな』

そう思ったところ、あっちにいるレソフィックがナイフを持ってロープを切っているのが見えた。

「あ、レソフィック君がナイフ持ってます」
「え?あ、ホントだ」

カーラは立ち上がるとレソフィックの方へ行った。すぐナイフを手にして戻ってきた。ついでにレソフィックも一緒にやってきた。

「ほら、これ削って尖らして杭にしようと思うの。ペグって言うんだっけ?」
「ああ、なるほどね。いいんじゃね?」

カーラは木の枝を手にすると、ゴボウのささがきでも作るようにシャッシャと器用に削って先を尖らせた。

「カーラさん、包丁は使えないのに、なんでそういうのは上手なんですか?木の方が堅くて難しそうなのに」

『カーラさん、きゅうりも切れなかったんですよ』

「車のタイヤもパンクさせるほど尖らせたもんなあ。特殊工作員だからじゃねえか?」

海賊事件のクライマックスでカーラが仕掛けたトラップのことである。

「レソフィック君、刺すわよ」

やあっ、と尖った枝で刺すふりをした。

「わあ、こえーこえー」

ぴょんぴょん跳び退けながらレソフィックは逃げていった。

『うふふふ。面白いですねこの二人は』

カーラが作ったペグで敷物の四隅が地面に固定されたところで、アロンが見にきた。

「カーラ、ペグ自作したんだって?あ、うまく止まってるじゃん」
「あ、アロン君!えへ、えへへ・・」

『カーラさん、ぎこちない笑いして・・。もっとアピールすればいいのに。・・はあ、やっぱりカーラさんはアウトドアの方もよく気が回って、アロン君にお似合いだな』

ちょっとしょげる裕美子。そこへリーダーがざくざくと足音をさせてやってきた。

「ふう、そこに上着置いてもいいですか?」
「あ、はい。どうぞ」
「炭に火点けてたら暑くて暑くて・・」
「川に足だけでも浸けてみたら?冷たくて涼しくなりますよ?」
「それ、気持ちよさそうだ!やってみよう」
「リーダー、肉焼く準備が先!」

アロンがキッとリーダーに釘刺した。教室と逆の立場だ。

「わ、分かったよ。でもグリルのところ、熱ですごい暑いんだ」

裕美子は思い出したようにクリスティンが持ってきた袋を取り出した。

「川の水、どれくらい冷たいですか?きれいですよね?」
「冷たいと思うよー。水もきれいだよ」

そう言ってアロンは肉を焼きに戻っていった。

「お手拭き持ってきたんですけど、川の水で濡らしたらいいかなあって」
「名案ですね!冷たくて気持ちよさそうだ」
「濡らしたら持っていってあげます」
「お、お願いします!」

『リーダー嬉しそうだなあ。でもリーダーにだけじゃなくて、みんなにやってあげようと思ったんだけどな』


川の水はすごく冷たくて、透き通っていてとてもきれいだった。オリエンテーリングの時、ウォルトがクスス山のおいしい水を土産に持って帰ろうとしたくらい(結局自分の水分補給で全部飲み干してしまったが)、ここの水質は良い。それを浸した手拭いを、裕美子はバーベキューの準備で汗流してる男の子達のところに持っていった。

「はい、リーダー」
「おお!ありがとうございます!ひゃーっ、生き返るー!」

同じく炭火をいじって最も暑い思いをしている勇夫にも濡れ手拭いをあげようとしたら、

「いさお、温めてーっ!」

と勇夫の背後から顔に手をくっつけたのはハウル。前触れなくやったので勇夫は大びっくり!

「冷てえ!うわっ、なんだ?ハウルの手?」
「川で遊んでたら冷え切っちゃった!すごい冷たいのよ、ホラ」

今度はTシャツの首もとから手を突っ込んで胸の方に手をやった。

「うひゃーっ、心臓止まる!」
「あはははは」
「おめー、俺らが汗水流して準備してんのに、手が冷え切るほど遊んでたのか!」
「今から手伝うよー」
「もう肉焼き始めるわ!」
「じゃあ食べるよー」
「取り皿準備するとかしろーっ」
「わかったわよー。・・・ホレ」
「つめてーっ!!」

『ふふふ。ハウルさんはみんな言ってるように本当に勇夫君と遊ぶのがいいんですね』


次回「第2部:第11章 ピクニック(6):回想、またまた裕美子の恥ずかしいシーン」へ続く!

前回のお話「第2部:第11章 ピクニック(4):バーベキュー当日」


対応する第1部のお話「第1部:第15章 ピクニック(8):バーベキュー当日」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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第1部のバーベキュー当日のシーンに入る前までの様子でした。
カーラちゃんが海賊事件で作ったトラップは釘を使ったものでしたが、とにかく工作が得意ということです。第1部海賊事件の章36話辺りに出てきます。
そのくせキュウリも切れなかったというのは、第2部夏のエピソードでの夕食作りのときですね。
バーベキュー会場となった川の源流のクスス山で行われたオリエンテーリングは第1部第1章第2部第3章に書かれています。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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コメント 2

hanako

面白いです^^
by hanako (2015-06-24 19:18) 

TSO

ぼんぼちぼちぼちさん、ほちゃさん、コミックンさん、mentaikoさん、bitさん、やってみよう♪さん、nandenkandenさん、Ujiki.oOさん、hanakoさん、いっぷくさん、niceありがとうございます。
hanakoさん、コメントありがとうございます。今後も読んでいただければと思います。ファッションセンスがないので服装について文中に書くことができず・・・。hanakoさんのブログでおしゃれな服を勉強しないとデス。
by TSO (2015-06-27 10:01) 

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