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<第2部:第12章 女の子たちのグループ交際反省会(10):アロン君の家に初めてお邪魔> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第358回
<第2部:第12章 女の子たちのグループ交際反省会(10):アロン君の家に初めてお邪魔>


1本目の興味深い海洋ドキュメンタリー映画が終わり、2本目の映画との間に10分間の休憩時間が入った。
その時、試供品だという飲み物が配られた。底にある紐を引っ張ると冷却が始まって、1時間程で飲み頃になるそうだ。わたし達は2本目のファンタジーアニメが始まったところで、その紐を引っ張った。


さてリーダーお勧めの2本目の映画とは。
いなかの雑貨店の娘のところに、ある日、伝説の勇者様がやってくる。勇者様と雑貨店の娘は、髪や瞳の色こそ違うが、なんと容姿はそっくりだった。しかし些細なことで勇者様は下等な化け物に石にされてしまう。村も、魔物とそれを操る謎の人物によって火の海となり、娘は絶望のどん底に落とされる。
魔法力を持つがまだ十分に開花してない幼なじみの男の子と、見かけだけ勇者様の雑貨店の娘は、果たしてこの危機を、再び荒れ狂うこの世界を救えるのか。
リーダーが言っていた通り、美少女ファンタジーといえど緊迫感ある内容に、わたしもつい手を握りしめてのめり込んでしまった。
原作のかっぱさんのブログが閉鎖されてしまったので、今となっては続きを知る術がない。

そんなアニメのハラハラな展開が一段落したところで、わたし達は飲み物の事を思い出した。飲み物の缶はすっかり冷え切って霜が降りてた。
「どれどれ。おう、冷たくって旨い」
そう言ってリーダーがごくごくと飲んだ。
わたしも一口。
柑橘系の香りがする。たぶん甘みがついてて飲み口のいい飲み物みたいだ。だけどきんきんに冷えすぎてて味をよく確かめられない。というかこの映画館、冷房の効きが悪くって少々暑いから、冷たい飲み物がやけにおいしい。リーダーじゃないけど、わたしもごくごくと飲んでしまった。






映画が終わり、わたしは流れるエンドロールをふわふわとしたいい心地の中で眺めていた。
この気持ちの良さは何だろう。体が熱い。アニメが思いの外面白かったから、その充実感からだろうか。まだ完結ではないようだから、続きができたらまた見たいな・・。

「美少女ファンタジーアニメなんて普段見ることないからわかんないですけど、これはおもしろかったですね。・・なんでしょう、顔が火照って、ああ・・なんか眠くなってきました・・・」

この映画をお勧めしていたリーダーが喜んでコメント返しそうなものだと思ったけど、リーダーは何も言ってこなかった。
反対に、それまで大人しかったのが急に活発になったのはカーラさんだ。カーラさんはアロン君の手を取ったかと思うと、なんと体をすり寄せて甘え始めた。

「2本立て、疲れた・・・。ねぇキューケイしてこうよ、キューケイ。2人でお部屋取って~」

キューケイ?お部屋取って?

こういう事に疎くって知識もないわたしでも、それがどんな所で、キューケイというのが漠然とでもあんな事するかもしれないという事を、半ば夢うつつになりかけてる頭でも判別できた。

ちょ、ちょっとカーラさん、それをアロン君と?

「カ、カーラさん。そのキューケイはちょっとまずくないですか?」
「なによぉ~、あなたもリーダーと一眠りしてきなさいよ。リーダーも青い顔しちゃって、休みたがってるよ?」

リーダーと?わたしが?有り得ない。

ただリーダーは脂汗をかいて、何かこみ上げてきているものを必死で抑えようとしているように見える。文字通りの休憩をした方がよさそうに見える。

「だから、ねぇ~アロン君、あっちもキューケイするみたいだから、私達もいこ」

そんなカーラさんの誘いが耳に入らないくらい、アロン君はさっき飲んだ飲料の缶を必至になめまわして調べていた。そして顔を上げると、カーラさん、わたし、リーダーと一人ずつ顔を確かめるように見入った。

「うぉ!もうだめだ!」

リーダーが突然立ち上がって、猛ダッシュしてシアターの外へ走っていった。アロン君はそれを眉間に皺を寄せて目で追った後、すぐにわたしとカーラさんの方に向き直り、

「カーラも小泉もちょっと顔洗って目醒ましてきな!」

と言ってわたし達を立ち上がらせ、外へ引っ張っていった。連れて行かれたのは女子洗面所。
だけどわたしは体がなぜか凄く重くって、瞼も重くって、立ってられなくって

「眠いです・・」

と寄りかかってしまった。

うあ・・これアロン君だよねぇ・・。いいのでしょうか・・

「ユミちゃん、寄りかかる相手間違えてるよ?あ、いないわ」

今の、カーラさんの声だよね・・。何だかずいぶん遠くからに聞こえるな。そっか、そうよねぇ、アロン君はダメよねぇ。

体を離すと、声のする方に寄りかかった。
跳ね返すような硬い体から、包まれるような柔らかさと、さっきより高い体温。

これ、どこの部位だろう・・あ、お胸だぁ・・

「こっちですね。・・やわらかくって、いい気持ち・・」
「いやぁ!リ-ダーどこよ~。はやく裕美子連れてってぇ。ひっく!」

リーダー?リーダーに連れて行かれちゃうの?わたしとリーダーだけになっちゃうの?それはちょっと・・・

「リーダーと2人きりはいやぁ」

この辺でわたしの意識は、自分の制御下から離れていってしまった。
でも向かった先がアロン君の家らしいということは理解していた。
眠くてこっくりこっくり舟を漕ぎつつ、なんとかだどり着いたどこかの部屋に横になり、そこにはリーダーだけでなくカーラさんとアロン君もいることに安心すると、深い眠りに落ちていった。






わたしは賑やかな話し声と笑い声で目を覚ました。薄目を開けると、見知らぬカーペットの上。

えっと、ここどこだっけ?わたしどうしたんだっけ?
リーダーと映画を見に行って、そしたらアロン君とカーラさんも見に来てて、一緒に見ることになって、2本目のアニメを見終わった頃に急に眠気に襲われて・・。
あの眠気とだるさ、もしかしてお酒?前にレソフィック君の家でワイン飲んですぐ眠くなったのによく似てる。もしかしてあの映画館で配られた飲み物のせい?
それでわたしだけじゃなく、リーダーとカーラさんも様子が変になったから、どこかで休憩する事になって・・・

ガバッと起き上がった。

「そうだ。アロン君の家だ!」

図らずもアロン君の家に上がり込むことになったんだった。もちろんカーラさんとリーダーも一緒のはず。どこにいる?
わたしは賑やかな声のする方に向いた。するとそこにはアロン君とカーラさんだけでなく、どういう事かハウルさんと勇夫君、クリスティンさんとレソフィック君も一緒にいた。

「あら・・みんないる」

各ペアとも予定してたことが終わって、約束してたわけでもないけど、自然とアロン君の家に集まったみたいだ。
いつもの人達がいつものように集い、和やかに笑談しているのを見たわたしはある意味ホッとした。
だってわたしとリーダーもいるとはいえ、こんな風に寝ちゃってたら、その間にカーラさんとアロン君が何してたって分からない。あんまり抑止力にならない。

それでリーダーは?

首を左右に回すと、ちょっと離れたところに寝転がってた。
わたしが起き上がったことに気付いたアロン君が、こっち向いて声を掛けてくれた。

「小泉、大丈夫?」

恥ずかしい。またアロン君の前で醜態を・・。違う、アロン君だけじゃなくて、これじゃみんなにだ。でも寝たおかげで頭は冴えたわ。

「ええ、もうすっきりしました。ありがとう、お部屋まで・・」

そうだ。わたしアロン君のお家に初めてあがったんだ。嬉しい。ここでアロン君暮らしてるんだ。

失礼ながらわたしはお部屋中を見回してしまった。こざっぱりしてあまり物を置いてない。
どこかで見た間取りと思ったら、そうか、レソフィック君の家と同じだ。同じアパートだもんね。

すると、そっちでうーんと唸ってリーダーがのっそり起き上がった。
リーダーもお酒飲むと気持ち悪くなったりするのよね。休んで良くなったかな?

「リーダー、大丈夫ですか?ひどい目にあいましたね」
「こ、小泉さん・・いてて。小泉さん大丈夫ですか?」
「ええ。もう平気です」
「よかった」

未成年者にお酒配るなんて、なんて映画館かしら。生徒会長あそこでアルバイトしてるんでしょ?大丈夫なのかしら。今度会ったら聞いてみよう。
凝り固まった首を回して口をパクパクしてるリーダーを見て、わたしは喉がカラカラに渇いてるのに気付いた。お水もらおう。リーダーもかな。

「お水飲みますか?持ってきましょうか」
「あ、ありがとう!じゃ一杯」
「アロン君、お水もらいますね」

おう、とアロン君は手を挙げて応えた。
わたしは立ち上がるとキッチンへ向かった。レソフィック君の家と同じ間取りだから、初めて来たのにどにどんな部屋があるか分かってるっていうのがなんだか変。


キッチンに入ると、雰囲気はちょっとレソフィック君のところとは違った。冷蔵庫は同じだけど、食器棚が違うからかな。
コップ、コップ。ぱっと見、ティーカップしか見当たらない。食器棚の中、探していいのかな。
そしたらアロン君がひょっこりキッチンにやってきた。

「コップあっちにほとんど出しちゃったんだった。ちょっと待って、新しいの出すから」

食器棚の下の扉を開けて、奥からごそごそと小さな箱を2個出した。それ、サンドイッチ屋「ハイウェイ」の景品じゃない?。

「急にみんな来るからさあ、準備できてないんだよ」
「そうですよね。そういえば、前、レソフィック君のところには食器沢山ありましたね」
「あの時は俺とか勇夫の所からも持ち寄ったからね。はいこれ。あ、洗わないと」
「やります。シンクお借りします」
「悪りーね。頼む」

コップを洗ってる間に、アロン君は冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出してくれた。

「水、これな。・・・小泉、キッチンにいるの、様になってるなあ」

ぼふっと顔が熱くなった。

「ば、馬鹿にしてますか?」
「褒めたんだよ。小泉、料理上手いから」

そう言ってアロン君はリビングに戻っていった。

ど、ドキドキするじゃないですか。
許されるなら・・通いたいですよ、ここに。

わたしは頬とおでこが火照って熱くなったので、ここでコップ一杯一気に水を飲んでしまった。
ぷはっと一呼吸すると、やっとこリーダーにお水を持っていった。


「すみません、遅くなりました」
「ああ、ありがとう。ゴクゴクゴク・・・。あー、旨い!冷たくて旨い!」
「なんか、映画館であの飲み物飲んだ時みたいですね」
「ま、まさかこれも、酒じゃないですよね?」
「さすがに違うでしょう」

わたしは微笑んだ・・つもりだった。
またどうやらわたしは思った通りの表情になってなかったようで、呆られたように見えたらしい。

「は・・ははは・・」

リーダーはまたばつの悪そうな笑い顔をした。
その時、みんなのいる方からハウルさんの通る声で

「お腹減った~。早く何か作ってよー」

というのが聞こえてきた。

「手伝え、食うばっかだけじゃなくて!」

キッチンに向かって歩いてきた勇夫君がリビングの方へ叫び返した。こっちに振り向いたとき、勇夫君とわたしは目が合った。

「おーっ、料理の専門家がいるじゃんか!」

何ででしょう。これも一種褒め言葉だと思いますが、勇夫君に言われても嬉しくもドキドキもしません。

「それより勇夫君。その顔、どうしたんですか?」

勇夫君は顔に絆創膏をベタベタ貼っていた。

「バイクで事故っただけだ」
「事故?!」

リーダーが血相を変えた。

「相手は?!怪我とかさせてないだろな!学校に連絡しなきゃ!」
「単独事故だよ。それも山の中で。すげえ急な坂道で下ってて前転しただけだ」
「勇夫君、今日はハウルさんと一緒だったんじゃ・・。ハウルさん大丈夫だったんですか?」
「急坂をアタックするときだったからハウルは下ろしてて、あいつは脇で見学してた。つーか、おめーら、俺の心配はしねーのか」
「見るからに元気そうなので」
「見るからに元気そうじゃないか」

わたしとリーダーはハモって答えた。

「ちきしょう、覚えてろ!」

覚えてたら後で何かいいことあるんでしょうか。
勇夫君はキッチンの入り口すぐに置いてあったダンボールを、さも自分の家にでもいるようにためらいなく開けると、中から現れたスナック菓子の袋を取り出した。

「しばらくこれで食いつなぐとして・・。アロン、なんか食いもんあったか?」
「えー?こんな大人数が来るなんて予定してなかったから、なんもねーよ。・・・ああ、こないだ親どもから届けられたサツマイモが箱いっぱいあるけど。南米のどっか山の方でもう収穫したやつとかいう・・」
「よっしゃ。小泉!サツマイモだって!」

アロン君と勇夫君が別の部屋から重そうなダンボール箱を持ってきた。
わたしは腕時計を見た。まもなく午後7時という時間だった。5時頃映画終わって、アロン君の家に移動して、一眠りしてだから、そうだよね。

「皆さん、今日お夕飯は家で食べないんですか?もうそろそろそんな時間ですけど。帰らなくていいんですか?」
「ここは俺んちみたいなもんだ。どうせ作らにゃならんし」

まあ勇夫君やアロン君、レソフィック君はそうですが・・。

「私は今夜親の帰りが遅いから、自分でどうにかしないといけないでーす」

ハウルさんが右手を挙げて、放置されてることを元気に披露した。

「私はどっちでもいいわぁ」

クリスティンさんも放置されてるらしい。

「あ、あたしは・・連絡すれば、どっちでも・・」

カーラさんのお家は寛大ですね。

「夜遅くほっつき歩いてると補導されるぞ!だいたいお前ら集まったら、また飲酒とかしそうじゃんか。だめだ帰ろう!」
「わたしもそろそろ家に帰らないと・・」

もっとここに、アロン君の家にいたいけど、夜遅くなるとは思ってなかったし・・・家にも何も言ってない。

「俺ら一人暮らしだから感覚おかしいんだって。残念だけど小泉はリリースしよう」

アロン君が言った。

「リ、リリースって、わたし釣れた魚じゃありません」
「じゃあこのイモどうする?」
「焼き芋とか?何で焼くんだ?焚き火?」

レソフィック君と勇夫君がボケる。それは秋の落ち葉焚きです。だいたい焚き火なんてどこでやるんですか。

「オーブンで焼けます。でもお芋焼くの結構時間かかりますよ。ふかす方が早いですが、それでも・・」
「時間かかるの?お腹減ったよー。すぐ食べたい食べたーい」

ハウルさん、子供ですか。

「じゃあみんなで生イモかじるか。ジャガイモと違って中毒にはならないだろ」

アロン君まで、本気ですか?ツッコミばかりやりたくないんですけど。
誰もまともな調理法知らないの?もう、心配だわ。

「ハチミツとかありますか?」
「ハチミツあるよ。分かった、ハウルに舐めさせて出来上がるまで黙らしとくんだな?」
「違います。あと、揚げもの出来るくらいの油と、もしかしてお醤油とかあります?」
「醤油は常備してるよ。勇夫もいるし、俺ら日本食よく食うから」
「それでしたら大学芋できます。揚げた方が早いです。あと・・ゴマなんてないですよね?」
「レソフィック、ちょっと近所のよろず屋行ってゴマあるか見てこい!」
「おう!」
「それより小泉、帰んなくていいの?」
「帰りますよ。ちょっとだけ延長。家に連絡入れます。30分あれば一皿分くらい作れますから。追加は自分達で作ってください。作り方は一緒に見て覚えて」

わたしはダンボール箱からサツマイモ2個取り出してアロン君に手渡した。

「俺でも作れんの?」
「作れますよ。自炊してるんでしょ?はい、お芋洗って、皮むきしといて下さい」
「任せとけ」

アロン君はお芋を持ってキッチンへ向かう。
わたしは携帯電話を取り出して、家にもう少し遅くなると連絡を入れることにした。

「リーダー、どうする?」

立ち上がったレソフィック君がリーダーに聞いた。こうなると、帰ると宣言したのはリーダーだけになってしまった。

「う・・・」
「そろそろ暗くなるから、もうちょっといて小泉送ってったら?」

こういうところがよく気が回る大人なレソフィック君だ。

「ゆ、裕美子さん送ってった方がいいよな」

リーダーももう少し留まることにした。






家に連絡もし終わって、キッチンに入ると、アロン君がお芋洗い終わったところだった。

「それで、切るの?」
「あ、はい。スティック状にしましょうか。火の通りがいいですから」

わたしはアロン君の横に並んで、まな板を広げた。

わあ、嬉しい。アロン君と並んでお料理なんて。夫婦みたい・・・・、なんて!なんて!

有頂天になりそうなところで、わたしは思い出した。

ちっ違う、これわたし、やっちゃいけないです!

慌てた顔を持ち上げて、アロン君の顔見た。

「なん?」

触れてもおかしくないほどそばにいるわたしを、何の疑いもなく見下ろすアロン君。顔と顔の距離、40cmくらい?。
かわいい。素敵・・。
だけど、ダメ!

「カ、カーラさん!」

わたしは、本来この人の横にいなきゃいけないんじゃないの?という人を呼び寄せた。

「はいはい」

呑気にお菓子頬張ってちゃダメでしょ!

「カーラさん、つ、作るの手伝って」

カーラさん、とたんに口元を引きつらせた。

「あ、あたし、料理”ぜんぜん”だめだから。・・あっ、レソフィック君のゴマ買うの手伝ってくる!」

ドタドタドタと、まだ玄関にいるレソフィック君を追いかけて走って行った。

ちょっと!カーラさんそれでいいんですか?!
あなたアロン君のペアでしょ!

「カーラは工作は得意なんだけどな」
「材木切るのとお芋切るの、どっちが難しいと思ってるんでしょう」
「カーラにとっちゃ、材木の方が簡単なんだよ」

楽しそうに答えるアロン君。
あんなカーラさんも受け止めてあげるんですね。素敵です。
いいなあ・・・






スティック状にしたサツマイモを油で揚げて、ハチミツにちょびっと醤油を加えた蜜にそれを絡め、レソフィック君とカーラさんが買ってきてくれたゴマを軽く炒ってパラパラと振りかけて、簡単大学芋が出来上がった。

「うわ、美味しーい」
「甘~い。スイーツみたぁい。これいいわぁ」
「香ばしいゴマがいいね。レソフィック君、買いに行った介あったね」

よっぽど女の子達はお腹減ってたのか、最初の一皿はほとんど女の子達で摘んでしまった。まあハウルさんの食欲が凄いだけなんだけど。

「足りなければ・・、足りないでしょうけど、同じ要領で追加作ってください。大丈夫ですよね?」
「大丈夫、大丈夫。簡単だったね。助かったよ」

アロン君の笑顔が嬉しい。今日は迷惑かけたから、役に立ってよかった。

「それじゃ、わたしは帰ります」
「サンキュー」
「裕美子、ごちそうさま!」
「手伝えなくてごめんね」
「いつもありがとね~」
「お、おふっていひまふ(送っていきます)」

リーダーが慌てて手で口を押さえながら立ち上がった。

「リーダー、ゆっくり食べていってください。一人で平気ですから。慌てると喉に詰まりますよ」
「いや、今いきまふ・・うっ!!」

ドンドンドンドンドンドンと胸を叩いた。案の定、喉に詰まったらしい。

「リーダー、面白すぎよぉ~」

ニコニコとクリスティンさんが水を差し出す。

「ぶはっ!死ぬかと思った!」
「はははは。リーダー、そんなでエスコートできるか?されるんじゃないぞ?」

水を飲んだリーダーは、急ぎわたしを追ってどたどたと玄関へ走っていった。

「お邪魔しました」

玄関にはアロン君が見送りに来ていた。

「またな。帰り道分かるか?」
「前来たことありますから」
「ん?いつだ?まさかこっそりストーカーしてたのか?」
「何言ってるんですか。レソフィック君の家に集まったじゃないですか。この上の階でしたよね」
「そういやそうだった」

いたずら気味に笑うのは、分かってて言ってるからだろうか。からかってるんだろうな。

「カーラさんとか、他の娘はその後来てるんですか?」
「来てないよ。夏休みは日中ほとんど留守にしてたしな。あ、小泉は晩飯作りに来てもいいぞ」

わたしはしばらく無言でアロン君の顔をじぃっと見入ってしまった。これもからかってるんだろうけど。ほのかに頬が熱くなった。

「そういうのは、お嫁さんにしたい人に言った方がいいですよ」
「え?あ・・・」

アロン君は顔を赤らめてほっぺたを掻いた。

「いつもからかわられるから、たまにはお返しです」

リーダーが玄関にやってきた。

「こ、小泉さん、お待たせしました」

リーダー、慌てるように靴を履くもんだから、左右間違えて、また履き直した。

「じゃあリーダー、送るの頼むよ。気を付けてな」
「ああ。みんな早く帰らせろよ。アルコールもだめだぞ」
「わかったわかった」

片手を軽く挙げて見送るアロン君に、わたしは会釈し、リーダーと階段を下りていった。



その後残ったメンバーも、追加のお芋をたらふく食べて、リーダーの心配を一応気に留めて、早めに解散することになった。

「お芋まだ残ってる?」

ハウルが芋の入ってるダンボールを覗き込んだ。

「まだ半分以上あるな」

一緒に覗いた勇夫が答える。

「また食べに来よっか、カーラ」
「え?ええ・・。でも、あたし達でそんなに食べちゃっていいのかしら」
「今度は違う食べ方がいいなぁ~」
「ちょっと、あたしの心配聞いてる?クリスティン」

大きな芋を一つ取り出した勇夫はそれを顔の前に持ってきて眺めながら言った。

「やっぱ焼き芋で食いてえな。ほくほくしたあの感じと甘み」
「ベイクドポテトみたいな感じ?」
「そういやハウル、ジャガイモ好きだったな。ほくほく感は似たところあるけど、甘さはこっちのイモならではのもんだ。そっか、ベイクドポテトと同じ要領でやりゃあいいんだ。バーベキューコンロで炭火で焼けるぜ」
「よし!勇夫、次は焼き芋やろう!」
「お前、ちゃんと手伝うんだったら食わせてやってもいいぞ」
「やーねー、私がいつ手伝わなかったことがあって?」
「いつもだ」

勇夫とハウルが取っ組み合いを始めた。
二人をほっぽっといてレソフィックが引き継いだ。

「次のイベントも決まったみたいだな」
「食べるイベントばっかりじゃ太っちゃうわあ。体動かすのも考えようよ。個別開催でもいいのよ?レソフィック君」

にこにこ顔で迫るクリスティンに、レソフィックが後ずさりする。

「サ、サイクリング以外、な」

今日サイクリングに行った二人だが、何かあったのだろうか。

「炭火熾すんだって。名人のカーラにまた来てもらわないとだな」

アロンに言われたカーラ、しどろもどろになった。

「ああああたしが?そんないつも火遊びに慣れてるかみたいな・・で、でもおイモも食べてみたいからやってもいい、かも」

アロンににっこりされて、カーラは真っ赤になってうつむいてしまった。
そして向こうでは取っ組み合いの決着がついたらしい。

「男って丈夫でいいわー。力入れても簡単には壊れなくって、男の家来できて最高だわー」

床にひっ潰れた勇夫の上に乗っかったハウルがうれしそうに言った。

「せめて”男の友達”とか言ってあげたらぁ?」






アロン君のアパートを後にしたわたしとリーダーは、夜の帳(とばり)が下りて涼しくなった片いなかの夜道を歩いていた。

「いつもながらさすがでしたね。旨かったなあ。今度ゆっくり食べたいな。ははは」
「アロン君のところにまた食べに行けば?もう彼で作れますよ。まだ相当お芋ありましたし」
「え?あはは・・・(裕美子さんに作ってもらいたいんだけどなあ)」

駅への分岐までやってきた。リーダーの家は電車で一駅隣だから、ここで別れよう。

「ありがとうございます、エスコートしてくれて。ここまででいいですよ」
「いや、家まで送った方が・・」
「ううん。男の人とだと説明するのが面倒くさいし、ここでいいです」
「そうですか・・」
「あの、今日のアニメの原作・・」
「あ、持ってきますよ。ストーリーは今日映画でほとんどやってましたけどね」
「楽しみです。それでは、おやすみなさい」
「気を付けて」

リーダーに手を振られ、わたし達は別れた。


思いがけずアロン君の家に上がれたのは嬉しかったな。一緒にいられた時間もあったし・・。リーダーと映画に行った日なのに、そっちが霞んじゃった。ごめんね、リーダー。
カーラさん、あれでいいのかしら。
アロン君の横、空けちゃってていいの?

あのままにされたらわたし・・・

「彼のこと、奪っちゃいそうですよ・・・」


次回「第2部:第13章 アロン君の誕生日(1):残暑の倉庫作業」へ続く!

前回のお話「第2部:第12章 女の子たちのグループ交際反省会(9):ペアペア映画鑑賞」


対応する第1部のお話「第1部:第16章 改めてカップルで(3):片いなか映画館」「第1部:第16章 改めてカップルで(4):3人に効き目バッチリ」「第1部:第16章 改めてカップルで(5):そしてみんな合流」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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リーダーが所謂デートに誘ったはずの映画鑑賞でしたが、色々あってアロン君の家に転がり込むことになって、裕美子ちゃんとしては映画鑑賞のことよりアロン君の家に上がれたことで頭が占められてしまいました。リーダー可哀想に。
カーラちゃんはアロン君独占権があるのに、何をしているのか・・。裕美子ちゃんも気を使ってはいますが、いつまでも味方ではないですよ。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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タッチおじさん

お元気の事と思います
遅れましたが 今年も宜しく!
by タッチおじさん (2016-02-05 12:08) 

TSO

タッチおじさんさん、いつもご訪問ありがとうございます。
同じ小説仲間として、今年もご活躍をお祈りしています。

by TSO (2016-02-07 21:06) 

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