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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第18話~ [スト魔女二次小説]

第18話「427航空隊」


事務的なことが終わると、天音は座学の教室のようなところに連れていかれた。
そこで待っていた士官が両腕を後ろ手にして天音の前に立った。

「私は霞ヶ浦航空隊司令、田所中佐だ。一崎天音君の扶桑皇国海軍への入隊を歓迎する」
「あ、ありがとうございます」

横須賀のときと違ってカチコチの硬い雰囲気に、天音は少々戸惑いを隠せなかった。

「君の階級はウィッチの原則に従い一等飛行兵曹だ。配属先は第427航空隊。所属は南西方面艦隊、南遣艦隊、特設水上機母艦『神川丸』である」
「は、はい・・。どこなのかさっぱり解りませんけど・・。航空隊ということは、わたしはここで飛ぶ訓練をするんですか?」
「いいや。君はこれから対潜水型ネウロイ駆逐部隊として、水中探査戦術研究を行ってもらう」
「??」

難しすぎて天音には何を言ってるのかさっぱり分らなかった。

「詳しくは横須賀教練隊の横川和美少佐から説明を受けるように」
「は、はい」

横川少佐が歩み出た。

「本来なら『軍隊とは』ってところから始めなきゃならないんだけど、そんな悠長なことやってる時間がないってことになって、今回はとても特殊なことになりました」

特殊なこと。
どうなってしまうんだろうと、天音は心配を胸にした。しかしそれは今に始まったことではない。自分の力が使われるときはいつも、回りでルールが勝手に決まってしまっている。よほど大人達は自分の力を都合よく使いたいらしい。
自分が入り込む余地のないのが癪だが、それでも今回は何度も横川少佐が事前に入隊の意志を確認してくれたじゃないか。この世界に飛び込むことを自分で決めたのだから、まずは素直に従おう。

「まず所属から説明し直すと、第427航空隊は水上機からなる飛行隊で、筑波優奈さんがいるところでもあります」
「優奈と一緒なんですか」
「ええ」

これはすごい安心感を呼んだ。顔見知りどころか、よく知った友人と一緒なんて、なんて心強いことだろう。

「ここには優奈さんの他にウィッチがもう一人と、通常の水上偵察機が1機、その搭乗員2名が所属しています。そしてこの航空隊を搭載する船が『神川丸』という水上機の運用を専門にしている軍艦になります」
「さすがに教官、説明が易しくてうまい」

田所司令が堅い表示のまま笑った。なかなか器用な事をする。

「恐れ入ります」
「それでは後は頼んだよ、横川少佐」
「はい」

田所司令は部屋を出て行った。
入れ替わってやってきたのは優奈と、若干年上かなという少女一人、そして女性が3人。そのうちの一人はなんと横須賀で会った葉山少尉そっくりだった。

「わたし達が第427航空隊だよ。いらっしゃい天音」

優奈が航空隊を代表して迎えた。

「こちらが飛行隊長の|卜部《うらべ》少尉と通信員の勝田飛曹長。いずれも元ウィッチで、あがりを迎えた後も水偵隊に残って、通常の水上機を飛ばしています」
「よろしく、一崎一飛曹。|卜部《うらべ》ともえだ」
「よろしく。勝田佳奈子だよ。天音って呼んでいい?」
「よろしくお願いします。そんな呼び方で、いいんですか?」
「私たち海軍だし、ウィッチ隊だしー。じゃ、天音で決定ー」

あがりを迎えたということは二十歳過ぎなんだろうが、勝田飛曹長はなかなか軽いノリの人のようだ。
続いて現役ウィッチの娘が挨拶した。

「わたしはウィッチの下妻千里上飛曹。機体は二式水上戦闘脚」

つっけんどんなあまり覇気のないしゃべり方の娘だった。背丈は天音より10cmくらい高いだろうか。

「そしてわたし筑波優奈。使用機体は零式水上偵察脚よ」
「みんな水上機なんですね。優菜も水上機だったんだ」
「航空歩兵になったけど、きっとみんなが思ってるのと違うよって、手紙に書いたでしょ」
「なるほどね~。そういうことか。ということは、わたしもいずれ水上機を?」
「任務からしたら水上機が一番適任だからね。水上機は面白いよ?」

卜部が楽しそうに言う。上がりを迎えてもまだそれに乗るくらいだから、よほど好きなんだろうな。

「以上4名に天音を加えた5名が427航空隊よ」
「あれ?もう一方は?なんか横須賀で会った葉山少尉によく似てらっしゃる・・」

紹介されなかった白い二種制服を着た士官がすいっと前に出た。

「その通り。私も葉山少尉だ。彼は双子の兄でね。私達は兄妹だ。私は今回新たに神川丸に配属になったんだ」
「ご兄妹だったんですか。どうりで」

でもしゃべり口調からすると性格は何となく男女逆さまのような感じが、するような、しないような。

「私は対潜水艦戦戦術士官として君達航空隊の指揮を執ることになった。とはいってもまだ闘い方が確立してないから、これから君達と訓練しつつ研究するというわけだ」
「え?」

横川少佐が補足した。

「艦の出撃準備が整うまでの間、実際の潜水艇を使ってこれを捜す方法を研究するのよ。この研究が一崎さんの軍事訓練より優先されちゃってね。この間は葉山少尉の指示に従ってください」
「横川さんが教えてくれるんじゃないんですか?」
「私は対潜水艦戦の専門家じゃないからね。その戦術訓練が終わったら一崎さん。3日間、私が特別メニューの新人軍事教練をします」
「たったの3日ですか」
「そう、筑波さん達が1ヶ月以上かけてやってきたことをたったの3日で。なんていっても、もちろんできるわけないから、最低限知っておいて欲しいことだけをやります」

そこに飛び込んできたのは優奈。

「ちょっと待ってください!3日とはいえ、横川少佐がつきっきりで教えるんですか?」
「そうよ」
「・・とうことは、天音は横川少佐の愛弟子・・に?」
「弟子ってほど教えてあげられるわけじゃないけど、まあ一応そうなるのかしら」
「天音が、あのリバウの魔王こと西沢義子飛曹長と同じ立ち位置に??」
「ま、魔王?誰ですかそれ?」
「何とぼけたこといってるの天音!リバウの三羽烏の一人よ、そろそろ覚えなさい!あんた三羽烏のもう一人のリバウの貴婦人 竹井醇子大尉に才能を見出されてたのよ。昔検査受けた話は聞いてたけど、それが竹井大尉だったとは海軍に入って初めて知ったわ。あんな有名人知らないにも程があるわ。かと思えば、横川和美-西沢義子-菅野直枝と受け継がれる扶桑海軍最強ファイター直系の中に、こんな温厚な天音が・・・。マジで?!なんてうらやましい!だいたい横川少佐にしたって、教官とは言っても、もう偉い人で、学校で言えば教頭先生みたいなもんよ?!」
「うひゃー!そ、そうなんですか?!」
「たいしたことないって。それに西沢、菅野の直系は危険が危ないから受け継がない方がいいわよ。まあ訓練も3日だけしかできないから。後は実戦の中で筑波さん達が教えていってあげてね」

天音は優奈の顔を見てすごい不安な顔をした。優奈は不満そうな顔のままである。

「うう、わかりました。それじゃあ天音はわたしの弟子ってことで」
「うそお!、それこそ不安だあ」
「おそらく一崎さんの軍事教練が終わったところでお正月。多分1日程度でしょうけど休暇が取れるでしょう。休養を取って、原隊に集合したらすぐ南方へ向けて出撃となるでしょう」

あと半月・・。
たったあと半月で、ネウロイとの戦いに・・・。

まだ現実味が湧かないが、緊張感だけはどんどんと膨れ上がってきた。

「さあ、さっそく訓練に入ってください。まずは教練服に着替えましょう」




続く


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天音ちゃんが海軍に入隊しました、
427航空隊の零式水偵の2人は下書きでは男性だったのですが、スト魔女の世界をよく吟味した結果から女性に変更しました。それも上がりを迎えた元ウィッチという設定。除隊しないで活躍の場を見つける人もいるだろうなと思ったんです。この方が後でいろいろと話を膨らませていけそうな気がして。

葉山少尉。下書きでは横須賀の天音の試験に立ち会った葉山少尉を神川丸に乗せるつもりだったんですが、女所帯に427航空隊をしたことから、こちらも女性に変更。新たな人をひねり出すより双子にして、横須賀で待つ方の葉山(兄)との縁も切らさずに残しておきました。

横川和美=西沢義子-菅野直枝の直感型最強ファイター師弟の師匠・・。ということはオリジナルの横川和美は相当な荒くれ者なのかもしれません。本作ではおしとやかな人にしていますが。温厚な天音ちゃんとは縁遠そうですが、奥底に(さすがは西沢・菅野の師匠たる)横川魂を引き継いでもらおうと思っています。



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