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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第21話~ [スト魔女二次小説]

第21話「第1次輸送作戦 その2」


HK01船団が香港を出航してから2日目。

2列縦隊の14隻の商船を、前後左右に配した扶桑とリベリオンの9隻の護衛艦隊が囲んでいる。
船団はそれまで沿岸部の基地航空隊の援護を受けられるよう大陸近海に航路を取っていた。しかしそれも|海南島《はいなんとう》まで。|海南島《はいなんとう》からインドシナのトゥーラン(現ダナン)までのトンキン湾口横断約400キロを、船団は沿岸航空隊の援護を受けられない状態で南下しなければならなかった。
しかも|海南島《はいなんとう》北部の|海口《はいこう》基地の九四式水上偵察機が昨日の航路哨戒で、船団の予定進路上にネウロイの姿を目撃していた。船団司令部で迂回航路を取るか、引き返すかが検討されたが、

「発見できるということは、対応もできるということだ。どのみちこれを越えなければ輸送作戦は成り立たん。船団は速度最大!各艦警戒を厳にせよ。トゥーランからの迎えの護衛機をなるべく早く飛ばしてもらうよう依頼するのだ」

船団は予定航路を突っ切ることになった。


そしてトンキン湾口へ入って100キロほどに船団が差し掛かった頃。
船団左翼先頭にいたリベリオンのラッデロウ級護衛駆逐艦マクナルティーが、リベリオン製のQBFソナーで水中に不審なものを見つけた。


「こちらマクナルティー。前方2時方向の水中に不審物を探知。これより接近、確認する」

・・(こちら護衛船団司令部、了解。|栃《とち》はマクナルティーを援護せよ)・・

指示を受け、マクナルティーと同じく船団前方で右翼を警戒していた|択捉《えとろふ》型海防艦|栃《とち》が速度を上げて戦列から離れる。代わって先頭に立った護衛艦隊旗艦の松型駆逐艦|八重櫻《やえざくら》が戦闘海域から逃れるように船団を左へ変針させた。
マクナルティーは探知付近に急行すると速度を落としてソナーの感度を上げ、アクティブソナーで探査を再開した。

「コンタクト!方位前方5度、距離1100ヤード」
「よし!詳細解析急げ!」

マクナルティーから探信音が範囲を狭めて発射される。

「目標深度195フィート。速度10ノット!」
「結構速いな。よし、ネウロイと判断し攻撃する!取り舵、敵の後方に回り込む。爆雷投射用意!|栃《とち》には右から回り込ませろ」

マクナルティーは左からぐるりと回ってネウロイの後方から接近した。

「まもなくネウロイ直上!」
「ソナー停止!爆雷投射始め!」

マクナルティーの両舷に4基ずつ並んだK砲と言われる爆雷投射機がボンボンと煙を上げ、斜め上に向かってドラム缶のような形をした爆雷を飛ばした。左右両舷に落下した爆雷は毎秒2mほどの速度で沈降していく。ネウロイより速い速度でその上を通過したマクナルティーの後方で、予定深度に到達した爆雷が爆発し、海上に水柱を上げた。
マクナルティーの後方からその後を追うようについて来た|栃《とち》は、三式水中探信儀で攻撃後のネウロイを探す。

「どうだ、やったか?」
「・・おかしいです、見当たりません。・・・いや、います!・・・・左、342度、深度80m、に感あり!」
「くそっ、左に旋回しつつ潜って逃げたってことか?」
「本艦が攻撃を引き継ぐ!進路342、爆雷投下用意!」

敵の真上を通過しながら爆雷を投下散布するこの攻撃法は、爆発からソナーを保護するため攻撃時にソナーを停止するので、肝心の攻撃中は敵を捉えていない。直前の探知情報を基に”この辺にいるはず”という辺りにばら撒くことになる。

「爆雷投下!」

|栃《とち》艦尾の爆雷投下軌条からごろごろと爆雷が転がって海に落ちていく。同時に左右に1基ずつあるK砲からも爆雷が投射された。敵が潜む付近一帯に爆雷をばら撒き、爆発による水圧で敵を葬るのだ。

ドラム缶型爆雷の沈降速度は毎秒約2m。深度80mに到達するまでには40秒かかることになる。この時間は敵から見れば回避行動によってその場から離れる時間を稼げることになるため、沈降速度は速ければ速いほどいい。しかしドラム缶型の爆雷はゆらゆらと揺れながら沈むため、必ずしも同じ速度では沈んでくれなかった。しかもソナーはスクリューが出す雑音のせいで艦の後方を聴音することができず、攻撃艦は敵直上通過後も後方にいるはずの敵の状態を知ることができなかった。こういうとき離れたところにいるマクナルティーが探知すればよいのだが、自艦が攻撃してから探知体制に入る前に|栃《とち》が攻撃を開始しており、結局各個に攻撃しているのと同じで、連携を取ったものではない。このあたりが対潜水艦戦のノウハウが全く無い緒戦らしい戦い方だった。

|栃《とち》の後方で爆雷の爆発による大きな水の盛り上がりがいくつもできる。

「どうだ」
「破片などの浮遊物もまだ確認できず、戦果不明」
「マクナルティーは?」
「ソナー探査開始するも、現在敵影ロストとのこと」
「くそっ!」



戦闘海域から離れ、マクナルティーと|栃《とち》が上げる爆雷の水柱を遠くに見ていた船団がその戦闘の様子を固唾を呑んで見守っていたとき、突如左翼を警戒していた扶桑の|樅《もみ》型2等駆逐艦|菊《きく》で水柱が上がった。続いて真っ赤な火柱が艦の中央で左右に広がるように吹き上がる。搭載していた魚雷が誘爆したのだ。|菊《きく》は艦首と艦尾を空に向けつつ真っ二つに折れていく。

魚雷攻撃だ!潜水型ネウロイの魚雷攻撃!

絶句しているのも束の間、|菊《きく》の内側に並んでいた左列の商船に、前の方の船から次々と魚雷命中による水柱が乱立していった。
|菊《きく》の後方に位置していた同じく|樅《もみ》型2等駆逐艦の|葵《あおい》が速度を上げ魚雷が来る方に割って入り、水中へ探信音波を発信した。しかし|樅《もみ》型が備える旧式の九三式水中探信儀・水中聴音機はネウロイを捉えられなかった。そんな|葵《あおい》をあざ笑うかのように、|葵《あおい》を通り越して前後にいる商船にまたも魚雷が命中した。
ものの10分ほどの間に左列の7隻の商船のうち5隻が黒煙を上げて停止、もしくは止まりそうなほどに速度を落としていた。停止した商船からは救命ボートが下ろされ、早くも乗組員が退船を始めている。
|葵《あおい》は宛も無く、威嚇のために周辺に爆雷をばら撒くことしかできなかった。



一方、最初に船団前方でネウロイを発見して攻撃に向かったマクナルティーと|栃《とち》は、攻撃直後からネウロイを見失っていた。右往左往している間に、いつしかそのネウロイは2隻の後方に回り込んでいた。
ネウロイは浮上すると、その2隻を確認する。ネウロイの体の前方上部にコブのように膨らんでいるところにある一つ目のようなものが、まるで獲物を捉えてほくそえんでいるように赤く輝いた。
その時、|栃《とち》の電探が後方に浮かんだネウロイを捉えた。

「本艦後方、170度、水上に感あり!距離、1600m!」

艦橋にいた者が一斉にその方向を見たとき、真っ先に目に入ったのは白い雷跡だった。その魚雷は|栃《とち》の右舷すぐそばを掠めていくと、その先にいるマクナルティーに吸い込まれていった。
ズドーンという命中音とともに破片が飛散し、|栃《とち》の近くの水面にも着水して小さな水柱がたくさん上がる。

「2番砲、3番砲、奴を砲撃しろ!25ミリ機銃も射撃せよ!」

艦長が冷静に反撃を指示する。
|栃《とち》の備砲のうち後方に向いている2基の12センチ単装砲がぐるぐると旋回すると、即座に発砲を開始した。対空用の25ミリ連装機銃も水平に砲身を下ろすと、金切り声を上げて射撃を始めた。瞬く間に浮上していたネウロイの周辺に着弾した砲弾の水柱があがり、ネウロイを包み込んだ。
反撃を受けたネウロイはすぐに水中へと姿を没したが、まだ浅いうちに砲弾が着弾し損傷を与えたらしく、白い金属片が飛び散るのが見えた。

「やったぞ!」
「続いて爆雷戦用意!ソナー、奴を捉えろ。取り舵!」

しかし四式水中聴音機が真っ先に捉えたのは、|栃《とち》に向かってくる魚雷の高速推進機音だった。

「魚雷!本艦に向かって来ます!!」

ネウロイを追撃しようと|栃《とち》は旋回を始めたところだった。奇しくも魚雷に横腹を見せてしまった|栃《とち》は、それを艦首で受けることになった。顔の前で張り手を受けたような衝撃を受け、激しい爆発と、旋回を途中で無理やり止められたため、船体が歪む様な嫌な音を立て、艦内にいた全員が壁に叩きつけられた。艦首の爆炎が去った後に見えたのは、1番砲から先がささくれ立った艦の前部と、その少し先で傾きながら起用に浮いている引きちぎられた艦首の姿だった。



「左翼駆逐艦|菊《きく》轟沈!生存者不明!」
「マクナルティー、|栃《とち》、ともに大破!」
「船団左列貨物船3隻沈没、2隻大破停止!海防艦|福江《ふかえ》が救助に当たる!」

旗艦の|八重櫻《やえざくら》に被害状況が次々に届く。

「ネウロイは?!」
「|葵《あおい》より『捕捉できず』と返答。他の艦も捉えておりません」
「・・・」

船団の商船は右列の7隻のみとなっていた。その右側にリベリオンのエドサル級護衛駆逐艦2隻、船団の後方に扶桑の若竹型2等駆逐艦が1隻。左側にいた残りの貨物船と護衛艦は全て後方に置いていかれ、残存船団の左側はまったくのがら空きである。確認されたネウロイは2隻だが、いずれも沈められていない。マクナルティーと|栃《とち》の追撃を振り切った奴がこちらに来る確率は高い。しかもまだ他にもいるという可能性も大いにあった。

「被害が拡大する前に撤退した方が・・」

苦渋の決断が下された。

「やむを得ん・・・。|海南島《はいなんとう》水偵基地に護衛機の支援依頼を。船団、反転する」



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複数の潜水型ネウロイに待ち伏せのような襲撃を受けたのは、HK01船団だけではなかった。SG01船団もほぼ同じような状況で、同じような大損害を受けたのだ。

SG01船団の最初の直掩につき、元気に進んでいくところを見届けたシィーニーは、シンガポール海峡にぼろぼろになって帰ってきた船を迎えにいくという、心痛む任務をこなしてきたところだった。
しょんぼりと滑走路に降り立ったシィーニーと迎えの整備兵達に、あまり落胆もしていなければ覇気に溢れる様子もない、いつも通りのバーン大尉がやってきた。

「明日、一番損害のひどい扶桑の海防艦と旗艦が戻ってくる。明日1400、軍曹はこれの護衛のため出撃するように」
「はーい・・」

元気なく返事をした。
そこに

「着陸機あります。滑走路空けてください」

と声がかかった。
見上げると、かなりの機数の大型機が着陸進路についているのが見えた。




続く


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対潜水艦戦のノウハウを持ってない人達の闘いというのを想像してみました。
この船団の特によくなかったところは、連係プレーがないことと、陣形、で考えてます。

次回は、前に予告しておりました、シィーニーちゃんに届けられるというまたまた新しいストライカーが登場します。




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