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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第22話~ [スト魔女二次小説]

第22話「届いたのは重戦闘機」


シィーニーのいるシンガポールのセレター空軍基地に、ブリタニアからの輸送機編隊が着陸した。

次々と着陸する輸送機は、2発機がホイットリース・アルベマーレ輸送機。4発機はアベロ・ヨーク輸送機。
性能の良いヨーク輸送機は、最近植民地では滅多に見られることがなくなっていた虎の子輸送機だ。そんな虎の子を使ってでも本国から運んできたのは、新型のアスディック。つまりソナーだった。古ぼけたシンガポール駐在の艦船を、ソナーだけは一新するためだ。
でも、何でもう少し早く持ってきてくれなかったのか。SG01船団の護衛艦が、この新型アスディックを装備していれば、船団の被害はもっと少なくて済んだかもしれない。



SG01船団は、シンガポールを発って2日後、沿岸からの護衛機の援護が受けられなくなったシャムロ湾を航行中、潜水型ネウロイ複数の攻撃を受け、商船は3分の2が沈没。護衛艦隊も半数がやられるという大被害を受けたのだ。

この時も古いソナーしか備えていなかった扶桑の|占守《しむしゅ》型海防艦と、|樅《もみ》型2等駆逐艦がネウロイの接近を探知できず、扶桑の艦で固めていた右翼の船団が一方的に攻撃を受けてしまった。その後船団の内側に潜り込んできたネウロイを、ブリタニアのフラワー級コルベットのアスディックも捉えることができず、被害が拡大していったのだ。

しかし戦闘ではいくつかの収穫もあった。リベリオンから供与されていたラッデロウ級護衛駆逐艦2隻と、扶桑の松型駆逐艦|菫《すみれ》が奮闘し、爆雷攻撃でネウロイの1隻にかなりの被害を与えたのだ。
体が欠けるほどの被害を受けたネウロイは、浮上してその体を自己修復していた。どうやら水中では修復できないらしい。
他のネウロイの攻撃に邪魔されたこともあって損傷ネウロイを沈めることはできなかったが、水上に浮上したネウロイを3隻が艦砲で砲撃したとき、前寄りにあるコブのような膨らみのすぐ後ろが多数の命中弾を受けて深くえぐれると、一瞬だがコアが見えたという。


ブリタニアの輸送機が運んできたのはアスディックだけではなかった。あの調査団団長がシィーニー宛にストライカーユニットを、それも新品を届けてきたのだ。

「ほおー。確かにこれはお前の望みどおり、もっと早く、もっと遠くまで飛べる機体だな」

梱包を開いて中身を見たバーン大尉が珍しく感心した声をあげた。

「え?!も、もしかしてスピット?!」

夢が叶ったかと喜び勇んでシィーニーも梱包の箱に飛びつくと、中を覗き込んだ。

黒いぴかぴかの機体。
確かにこれは今までのように魔導エンジンを背中に背負う必要のない、宮藤理論を取り入れて作られた単葉のストライカーに間違いない。でも話に聞いていたスピットファイアのスマートさはなかった。ずんぐりとして巨大なそれは、なんというか、爆撃機?

「バーン大尉。これ、戦闘機なんですか?」
「ああ、間違いなく戦闘機だ」

しかし一緒に届いた付属品の入った別の箱を開けた整備兵が疑問を呈する。

「しかしバーン大尉。こっちに爆弾吊下装置がありますぜ」

一緒に箱に首を突っ込んでいたもう一人の整備兵がまたまた疑問を呈する。

「バーン大尉、これは魚雷の吊下装置ですぜ。いったいなんすか、このストライカー」

にやりとニヒルな笑いを浮かべるバーン大尉に、シィーニーも不安になる。

『これは絶対わたしの思い通りになってないに違いないわ』

バーン大尉は、大尉流の嬉しそうな顔になって説明した。

「これはブリタニア空軍の夜間戦闘機、ブリスター・ボーファイターだ」
「ボーファイター?」
「夜間戦闘機?」
「ああ。バリバリの現役の重戦闘機だぞ」

なんでしたっけ?夜間戦闘機って。

一瞬呆けたシィーニーは、再び箱の中の大きな黒い塊を見た。

「エンジンは1600馬力級、速度も500キロ以上出る。航続距離にいたっては3000キロ近く飛ぶぞ」
「ええー?」

それはすごい。スペックだけ聞けばグラディエーターの倍以上、速度以外は扶桑のゼロファイター以上でもある。
数値だけなら。
でもやっぱりそれは戦闘機というより、爆撃機なのでは・・・。だいいちなんで戦闘機に魚雷?

「すぐ取り出して整備しろ。軍曹、明日午前には試験飛行するぞ。SG01船団の最後の残存艦の出迎えは、調整も兼ねてこれで飛んでもらおう」
「は、はい!」
「整備兵!軍曹に合わせた調整、しっかりやれよ。はっはっは」

珍しく陽気な大尉に、これは絶対どこかおかしいに違いないと思うシィーニーであった。



エンジンの調整でストライカーに足を通したシィーニーは、その馬力のある魔導エンジンに驚き、魔力を敏感に感じ取って機敏に反応するレスポンスの良さにも驚いていた。

これが夢にまで見た宮藤理論のストライカー、しかも新品の機体かあ。思えばグラディエーターもどれも中古だったしなあ。

正体の分からない機体と言えど、感激してジーンとくる。



翌日、地上テストを終えると、さっそく出迎え任務の前に初飛行。基地上空をぐるりと飛んでみた。
グオオオオーと重たいエンジン音ではあるが、空荷の事もありパワーを持て余している事がすぐに分る。
確かにこれだけ力があれば、重たい爆弾や魚雷を持っても全く問題なく飛べそうだ。だけど動きは鈍重。グラディエーターのような軽快な動きをしてくれない。
やっぱりこれ、爆撃機じゃないの?

「大尉~、これ本当に戦闘機なんですよね?」

・・(さっきも言ったろう。間違いなく夜間戦闘機だと)・・

「あの~、勉強不足で申し訳ないんですけど、夜間戦闘機って、どんな戦闘機なんですか?夜限定?」

・・(限定というわけではない。夜の任務に適しているとうことだ)・・

「具体的に、ブリタニア本国で使われている任務について教えてもらえもらえませんでしょうか?」

・・(・・ちっ)・・

「大尉!今、舌打ちしましたよねえ!バーン大尉!何隠してるんですか?!」

・・(ああ?何も隠してなどないぞ。ただもう教えてしまうのが惜しくてな)・・

「やっぱ隠してるじゃないですか!」

・・(知っているものには常識なことだ。夜間戦闘機ってのは、夜間に攻撃に向かうことが多い爆撃機の護衛か、その爆撃機の迎撃に使われる戦闘機のことだ。航続距離が長いのは爆撃機に付いて行けるようにだ)・・

「でも旋回性能も悪いし、軽快な感じがしません。これで空中戦できるんですか?」

・・(爆撃機の迎撃専門だからだ。爆撃機は激しい挙動などしないから、急激な旋回性能や上昇下降性能などは不要だ。その代わり重防御な爆撃機をやっつけるため、非常に重武装なのだ。爆撃機と並行して飛んで、その超火力で叩き落すのだ。本国ではあの巨大爆撃機ディオミディアの撃墜に活躍している)・・

「重武装って、爆弾や魚雷?」

・・(対艦攻撃ができるのはその機体が器用だからだ。戦闘機としての武装は20mm機関砲2門)・・

「20mm??!しかも2門?!」

・・(250ポンドの爆弾吊るして、20mm2門を両手で持って、それでも軽々飛べるはずだぞ)・・

「そ、それは凄いですが・・、でもそれで昼間飛んでいいんですか?」

・・(普通の戦闘機が飛び回るところではヤバイだろうな)・・

「やっぱり!大尉が嬉しそうなわけが分りました!うえーん」

・・(だが軍曹。あのスタッキングネウロイ相手なら、こんなにおいしい機体もないんじゃないか?)・・

た、確かに。あののろまだけどやたらと硬くて7.7mm機銃じゃ歯が立たなかったネウロイ。このボーファイターの武装ならうってつけな気がする。シールドも凄い強力なのが張れそうだし、上の奴のビームも防げるに違いない。

「言われてみると、確かにそうですね」

・・(分ったらさっさと戻って来い。これからは敵に合わせて機種を使い分けるからな。今まで以上に訓練してもらうぞ)・・

作戦の幅が広がる。活躍の場が広がる。わたしの価値も上がる!それはきっと、シンガポール周辺だけじゃなくて、もっと遠く、マレー半島全域を防衛させてもらえるようになるかもしれない!

シィーニーは嬉しくなった。その感情に呼応して魔力も強く注ぎ込まれる。ボーファイターのエンジンが力強く応えた。

「分りました!」

ゴオオォーと戦闘機らしからぬ重い音をなびかせて、シィーニーとボーファイターは旋回していった。



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両船団が複数のネウロイに襲われ、多大な被害を受けて撤退を余儀なくされたことは、扶桑、ブリタニアのみならず、欧州の軍部にとってもショックだった。本当に扶桑からの補給が途絶える事になるようだ。この日を境に矢のような催促が飛び込んでくるようになった。

しかしそこに舞い込んできたアフリカからの1通の電報には扶桑も困惑した。

--
発 :北アフリカ軍団総司令ロンメル元帥
宛 :扶桑陸海軍補給廠
内容:至急味噌を求む。在庫はあと1週間とマミ軍曹が言っている
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本物だろうかこれは。




続く


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たぶんのオリジナルのスト魔女には出てきてないであろう夜間戦闘機ボーファイターです。
夜間戦闘機、なんか謎めいた特殊な印象を感じます。現代でいうと、AC130ガンシップなんかがそうですかね~?

次回は久々に主人公の天音ちゃんの出番になります。



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