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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第28話~ [スト魔女二次小説]

第28話「ワールドウィッチーズ扶桑食ブーム」


欧州軍部の上層部だけでなく各地の基地にも、扶桑・東南アジアからの輸送船団が護送船団方式を取っていたにもかかわらず壊滅的打撃を受けた、との話が届き始めた。
最初これを聞いて青ざめたのは基地司令と扶桑の隊員で、そのほかのウィッチ諸氏の反応は意外と冷めたものだった。

「ストライカーの部品こないかもなんだって?そしたらカールスラントの飛行脚貸してあげるよ。武器も性能いいのあるし、使っていいよ」
「リベリオンのもいいぞ。武器も弾薬も豊富にあるし、数には困らん」

だが数日にして多くの隊員の深刻な問題となっていた。扶桑食が食べられなくなった統合戦闘航空団の後方支援部隊を含む隊員諸氏が騒ぎ出したのだ。
結論から言おう。欧州の扶桑食ブームは、ひとえに料理上手の扶桑のウィッチが統合戦闘航空団の台所を握っていることが多いからなのであった。




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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第27話~ [スト魔女二次小説]

第27話「魔の黒江と魔改造」


霞ヶ浦航空隊の正門を3台の軍用トラックがくぐり抜けた。
先頭のトラックから首を出して許可証を見せているのは、横須賀のウィッチ教練隊教官横川少佐。その後ろから入ってきた2台は、なんと陸軍のトラックであった。

水偵格納庫の前に並んだトラックから横川少佐に続いて降りてきたのは、陸軍の深緑の制服を着て、背中に軍刀と釣竿を背負ったウィッチだった。そのウィッチは横川少佐をとっとと追い抜いてハンガーに入り込むと、中に向かって大きな声を張り上げた。

「陸軍航空審査部の黒江綾香だ。一崎天音はいるか?」



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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第26話~ [スト魔女二次小説]

第26話「芳佳、危機に気付く」


坂本と竹井の話が東南アジアの潜水型ネウロイ関連の話と分かると、ミーナも真剣な顔に変わって会話に聞き耳を立てた。

「水中探信が出来るウィッチのことだな?」

≪ええ。一崎天音一等飛行兵曹よ。彼女の魔導波の周期は、ナイトウィッチと真逆ですごく長い波長だそうよ≫

「やはりそうか。海軍の飛行脚だと僅かに反応するのに、陸軍の歩行脚がうんともすんとも言わないというのを聞いたとき、もしやそうではないかと思っていたんだ」

≪心当たりがあるの?≫

「宮藤博士と魔導波の検波装置を改良してるとき、私達も何人かのウィッチをサンプリングして魔導波の周期を調べたことがあってな。ナイトウィッチは周期が特に短くて波形を装置で視覚化すると櫛みたいになるから、櫛形なんて言ってた。扶桑はナイトウィッチが少ないから夜目の利く者を変わりに使うことが多いが、彼女らも周期が短くなる傾向があるんだ。
それに魔法力の出力の弱いウィッチやあがりの近いウィッチも、長周期の魔導波を出さないという傾向もある。
それで夜間偵察や夜間攻撃による奇襲、それにとにかく数を揃えたかった陸軍は、ストライカーの設定を短周期の方に大きく振ってそっちの精度を上げる代わりに、長周期の検波を切り捨てたんだ。その結果が今の歩行脚さ。陸軍の飛行脚もそういうセッティングにしてるから、その子は陸軍のストライカーユニットだと反応しないと思うぞ」

≪そんな開発秘話があったんだ≫

「宮藤博士はウィッチがそんなふうに常識化できるはずがないと言って、長周期の検波を切り捨てることに反対だったんだ。だから海軍のストライカーユニットは多少精度が落ちても広く検波出来るように幅を残してある。後から個別にチューニングすればいいと言ってな。例えば宮藤のような治癒魔法使いは、短い波長から普通のウィッチじゃ出さないような長い波長までとても広いレンジの魔導波を出す」

≪ふうん。でもその海軍のストライカーユニットをもってしても、その子はやっと反応するかどうかだそうよ≫

「予想以上に長周期なんだな。でも検波装置も新素材を取り入れたりして進化しているから、新型は感度も範囲も上がってると思うぞ。キモは魔導波の検波装置だ」

≪なるほどね。分かったわ、新型の検波装置でチューニングを試すのね≫

「けっこう難しいところだから、腕のいい技師がいるぞ」

≪ありがとう。横川教官に伝えておきます。ナイトウィッチ、考えといてね?≫

「だーめだ」

≪ケチ。じゃあね≫

「ああ、またな」

受話器をミーナに返すと、電話機の横に羊羹が一切れ乗った皿が置いてあった。

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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第25話~ [スト魔女二次小説]

第25話「名物主計中尉、帰国を決意する」


天音たちは翌日からも似たような訓練を演習海域を広げてやったり、停止潜行中の|蛟龍《こうりゅう》から次第に離れつつ見失う距離を測ったり、潜行深度による探査の違いを確かめたりと、天音は自分の能力把握に多忙であった。漁で使うのとは全く違う、はるかに多様な使い方を求められた。
だがもともとの潜在能力に加えて、微妙なさじ加減から、いろんな状況下におけるアイデアを豊富に持っていた天音は、まるで地上を見ているかのごとく水面下の様子を見通した。しかし代償として、能力開発中の天音は魔力消費が激しいようで、とうとう零式水偵で次の捜索海域へ移動する僅かな時間でさえも爆睡する術を身につけてしまった。

「移動中の海上監視も重要な偵察員の仕事なんだがなあ」
「それじゃ、わたしが代わりにやるよ~」

もっぱら機銃構えて警戒するばかりの勝田が請け負おうとするが、

≪移動の時は勝田さんが上空警戒。海上はわたしが見ますよ≫

優奈が割って入った。

「偵察任務は普通単機で行動するから、いつもこうやって編隊組むとは限らないぞ」

≪そこはわたし達、潜水型ネウロイを捜索するっていう新たな戦術を開発してるんですから、”編隊飛行でやる必要があります”って押し切っちゃいましょうよ≫

並走して飛ぶ優奈は親指を立ててウインクする。勢いのある性格は、海軍に入ってからもますます磨きがかかっていた。


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明日の天気 [マンガ(N)]

明日の天気
明日の天気

このところ週末は雨ばっかりですね。

2013年作品
copyright(c) TSO & NASA S. 2017



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<第2部:第14章 幼なじみの正体ばれる(5):幼なじみの正体> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第367回
<第2部:第14章 幼なじみの正体ばれる(5):幼なじみの正体>


今日は展示会場に絵を持って行く日。実行委員のわたし達4人が絵を持っていって、アロン君が業者に展示方法の指示をする。明日の昼には会場が出来上がるはずなので、出来具合を確認して、修正があるようならして、それで準備は完了。後は展示当日を迎えるだけ。

それなのに実行委員だけでなく、C組の全員が絵を持って学校の階段を下りて会場に向かおうとしているのは、運んだ後にドジ担任先生からお茶をご馳走してもらおうというウォルトさんの発言によっておかしな話が成立しちゃったからだ。
詳しくは第1部のお話を読んでね。




階段を下りて玄関を前にすると、外は灰色の空で雨が少しパラついている。予報では特に雨が降るとは言ってはなかったけど、昼過ぎから降ってもおかしくはない空模様だった。

やっぱり降ってきちゃいましたね。

わたしはいつも鞄の底に折り畳み傘を忍ばせているので、それを取り出した。パンっと開いたとたんに、空を見上げてあれこれ言っていたアロン君やカーラさんがわたしの方へ振り返る。

あれ、わたしだけ? 傘持っている人。

「用意いいなあ。でもこれは、みんなの絵を防水加工した箱かなんかにまとめて入れて運んだ方がいいぞ」
「そうね。大きいビニール袋と箱探してくるわ」

カーラさんは校舎の中に戻り、階段を駆け上がっていく。その背中にウォルトさんが叫んだ。

「その箱、俺も運ぶの手伝うからな!」

カーラさんに向かって叫んだウォルトさんに、ジョンさんとアンザックさんが呆れて首を振る。

「お前、そんなにまでしてドジ担任におごってもらいたいのか? なんて奴だ」
「別にみんな来なくていいぞ。人数少なくなれば豪華なもの頼めるかもしれないし」
「いつもながらけち臭い低次元な発想だなー。ついていけねぇ」

なぜけち臭いとアンザックさんが言ったのかというのを一応解説しときましょう。
ドジ先生が実行委員と会場まで行った帰りにお茶でもしてこうかと言ったのは、絵を会場まで運んでお疲れ様という事だからなんだけど、それなら自分のは自分で運べば皆お疲れ様になるという勇夫君の発想から、C組全員で絵を運んで全員お茶をご馳走になろう、しかもドジ先生のおごりで、ということに話が変わてしまった。それが皆がここにいる理由。
ところが雨が降ってきて、濡れないよう皆の絵を防水処置をした箱に入れて持ってくとなると、箱を運んだ人だけがご馳走してもらう対象になるのではと危惧したウォルトさんが、箱を運ぶのを何とかして関わろうとして、さっきのカーラさんへの声掛けとなるのです。

どう? けち臭い?

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<第2部:第14章 幼なじみの正体ばれる(4):アロン君がわたしの後ろに見ているもの> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第366回
<第2部:第14章 幼なじみの正体ばれる(4):アロン君がわたしの後ろに見ているもの>


ダーニャさんは意外なことにあっさりと場所を入れ替わる事を承諾した。それどころか元キャリーさんの担当だった所を描くだけでなく、キャリーさんがバスケットボールだけを描いて、その周りの景色まで手が回らないようなら、周りの景色は自分が描きたいという。もう描きたくて仕方ないって感じ。キャリーさんはその分バスケの再試合頑張ってだって。
美女さんのグループだから取っつきにくい人かと思ったけど、ツンとした美女さんとは雰囲気が全然違う人だった。そしてこの人も凄く自分の領域をしっかり持ってる。
わたしのダーニャさんへの好感度も少し上がった。




なかなか絵を描く時間を作ってくれなかったバスケ部だけど、リーダーと一緒にちまちまと先生方にプレッシャーかけて、やっとこ明日は早めに練習を切り上げて、夜に時間を作って貰える事になった。なかなか手間のかかる先生でしたね。
早目って何時なんですかって問い詰めて、日没前には絶対寮に帰ると口約束を得た。この季節、早くなってきたとはいえ日没は午後6時頃。この期に及んでそこまで引っ張られたのは失敗したな。理想はその日練習なしだったんだけど……。
その少ない時間でもキャリーさんが困らないよう、得意だというバスケットボールの絵だけ描けばいいようにしている。他の部員の人達はどうするんだろう。絶対まともな絵描けないと思う。
心配なのは、その約束の時間でさえも削られはしないかということ。練習本当に早めに切り上げてくれるかしら。練習の後の時間、本当に絵を描く時間に割り当ててくれるかしら。

バスケ部はこの強化練習の為に、分校が管理している臨時合宿所で共同生活していた。
わたしはバスケ部の顧問の先生を今ひとつ信用してなくて、様子を見に行く事にした。
バスケ部顧問の先生が約束した日、学校から戻ると、夜まで出掛けると家に告げて外出した。

「ちょっと探したい物があって、町の本屋まで行ってきます。少し遅くなるかもしれないです。お夕飯には間に合わないかも。その頃一度連絡するようにします」

お母さんは急に目を輝かせた。

「デートね! デートなのね! お泊まり? ゆ、許してもいいのよ?!」
「絶対違います! 少しは心配してください」
「だって、ずっと外に出られなかった人が、夜まで外出して帰らないなんて、凄い進歩なんだし。またお友達となんでしょ?」
「う……ん。まあそうです」

キャリーさんの様子見るんだものね。お友達といえなくもないよね。


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<第2部:第14章 幼なじみの正体ばれる(3):チャンスは2度もあげません> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第365回
<第2部:第14章 幼なじみの正体ばれる(3):チャンスは2度もあげません>


その後わたし達は、アロン君とカーラさんが撮ってきた写真を四つ切にプリントしてバレー部の練習場に持っていき、キャリーさんに手渡した。キャリーさんも行かずして描くという意図を理解してくれたのだけど、それでもキャリーさんの絵はいっこうにあがってこなかった。というかキャリーさんどころか、バスケ部のみんなが描けてなかった。練習に大半の時間をつぎ込んじゃって誰も絵を描く時間が取れないのだ。
そんなことが許されるのも、うちの学校は実績のある部活動は色々と優先優遇されていて、その中でもバスケ部はレベルがかなり高いからだけど、学校行事をすっぽかしていい訳ではない。

ということで事はキャリーさん個人の問題ではなく、バスケ部全体の問題だとわたしは認識した。そこでわたしは学校側から絵を描く時間を取ってもらうよう催促させることでバレー部顧問の先生を動かす提案をした。リーダー始めみんなもそれに賛同してくれたけど、アロン君とわたしはそれでも十分な時間は確保できないかもと思い、さらにキャリーさんの絵をもっと描きやすいものに変える事をみんなで話し合っていた。

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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第24話~ [スト魔女二次小説]

第24話「特殊潜航艇を探知せよ! その2」


今日はいよいよ沖合いに出ての演習。天音の能力を把握するため、特潜隊から派遣された特殊潜行艇”|蛟龍《こうりゅう》”を使っての探知訓練だ。

陸に引き上げられていた零式水偵の中央の偵察員席に天音は乗り込んだ。卜部が合図すると、零式水偵を乗せた台車をトラックが押し、スリップ(海上へ水上機を下ろすスロープ)から湖上へ下ろした。金星4型エンジンが回転をあげ、零式水偵を霞ヶ浦の水上滑走路へ向け軽々と移動させる。
発進ユニットに登ってストライカーを装着した優奈と千里も準備完了を合図すると、発進ユニットごとスリップから水上へと下ろされた。優菜の零式水偵脚と千里の二式水戦脚のフロート部が動いて水上に浮かぶと、魔法力が大きく注ぎ込まれてエンジン回転が上がった。ぱあっと魔方陣が広がる。

「キョクアジサシ、出撃します!」
「カツオドリ、出撃」

発進ユニットの拘束装置が外れ、2機は水上へ元気に飛び出していった。


3機が水上滑走で巻き上げる水煙を朝日が照らし、各機はきらきらとした光の航跡を引く。天音は後ろを振り向いた。
優菜は7.7ミリ機銃と、なぜかメガホンを首から下げている。
千里は20ミリ機関砲に加え、黄色く塗られた3番(30Kg)2号(対潜爆弾)模擬弾をベルトで吊るしていた。

3機は水偵基地の前のブイで誘導された水上滑走路に入ると、次々と空へ舞い上がった。
上空を旋回しつつ編隊を組むと、鹿島灘へ進路を取る。ものの数分で海岸線に着いてしまった。海へ出たところで千里は護衛を解き霞ヶ浦へ引き返す。敬礼しつつ編隊から離れていった。

「捜索海域の陸側の端まで飛ぶぞ」

卜部機と優菜は高度を400mに取り、沖の演習海域へ向かった。



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スト魔女二次小説:水音の乙女 ~第23話~ [スト魔女二次小説]

第23話「特殊潜航艇を探知せよ! その1」


第1次輸送船団の戦闘詳報は、軍令部経由で霞ヶ浦航空隊にも送られてきていた。執務室でそれに目を通していた葉山少尉は険しい表情を崩せなかった。

戦闘詳報によれば、南下船団も北上船団も半数がやられるという一方的な戦いを強いられている。

「攻撃直後に見失うケースが多い。よほど機動性が高いのだろうか。それに船の被害も左列か右列に偏って受けている。陣形に問題があるのかもしれない・・」

人類が水中の敵に対して戦術的にぜんぜん未熟なことがよく分かる。終始敵に振り回されっぱなしだ。やはり経験不足なのだ。
そしてそこはこれから我々が向かう戦場でもある。

『勝ち目はあるのだろうか。私達なら船団を守れるのだろうか』

深刻な面持ちで机に目を落としている葉山少尉に、基地司令の田所中佐が話しかけた。

「随分こっぴどくやられたものだな。どうした、怖じ気付いたか?まあ無理もない、古い艦が多かったが、商船護衛や潜水艦戦の訓練が豊富な部隊で編成された護衛艦隊がこの有り様だ。そこへ未経験の君らが行こうというのだからな」

机から顔を上げた葉山。強張った表情を無理にほぐした。

「いえ、決して怖じ気付いてなどは。それに私達はウィッチ隊です。過酷な戦場に赴くのは覚悟の上です」
「そうは言ってもウィッチと言えど万能という訳じゃないからな。何でもかんでもウィッチに丸投げして解決できるというものでもない。だがこの戦況だ。藁にもすがりたいところだろう。投入される方はたまったもんじゃないがな」
「大丈夫です。それに私達はこの為に一崎一飛曹を迎え入れたのですから。必ずや一矢報いて見せます」

田所中佐は窓辺に寄って、駐機場に並べられている水偵をちらりと見下ろすと、葉山の方に振り向いて言った。

「一崎か・・・。あの|娘《むすめ》の能力は確かに高いかもしれないが、それは漁業や平時でのことだ」
「田所司令は疑っておるのですか?横川少佐や竹井大尉も認めた力ですよ」
「実際の戦場でその力を100%出せるかどうかが問題だ。実戦というのは、計画の値や試験場で試した通りにはいかないのが常だからな。こちらの想定通りには動いてくれない実際の敵、戦場の緊張感、恐怖心、生死を分けるひっ迫した状況の連続、そういったものが想定を狂わす」
「そ、それは・・・。そ、その為の訓練です」
「その通りだ。しかしたった半月しかない。無茶もいいところだ」
「・・・」

葉山は何も返せなかった。
普通の女学生を半月でいきなり、職業軍人が束になってもかなわぬ敵のいるところに連れていき、戦えというのだ。それをやってのけた規格外な人が、ウィッチなら前例が無いわけではないが、尋常でないことには違いない。

「ふん。そこは新人教育に長けた横川君に任せるしかない。しかしまあ、第1次輸送作戦で扶桑のソナーはネウロイを捕らえたのだ。爆雷もネウロイに危害を加えられると分かった。あとはブリタニアの新型ソナーと爆雷投射機が揃えば、既存護衛艦隊でも倒せるのではないか?」
「そう願いたいですが・・。撃破した実績が上がってくるまでは何とも言えません」
「ブリタニアの新型ソナーは扶桑の三式や四式探信儀より高性能なのだろう?案外向こうの方が先に戦果を挙げるかも知れんぞ」
「それならそれで喜ばしいことです。ですがだからと言ってウィッチ隊が不要になるわけでもありません」
「それは君達次第だ。既存護衛艦隊は現有の戦力で、わずかだが抵抗できた実績を作ったのだ。しかしウィッチの実績はまだない」
「私達が戦果を上げられなければ、ウィッチは不要という話が出てくるとでも?」

葉山少尉は不信感を露にした。しかし田所中佐は淡々と続ける。

「結果次第ではな。だいたいウィッチでもない君をウィッチ隊の指揮官にした人事も少し変わっている。ああ、君達兄妹が士官学校で水雷を専攻し、その中で対潜戦闘も詳しく学んでいることは承知している。だから一見おかしくはないように見えるが、それでもウィッチ隊はウィッチ出身者を隊長に添えるのが今までの慣例だった」
「どこかでウィッチの活躍を阻害しようとする意図的なものが働いているというのですか?」
「わからん。だが今回神川丸の徴用解除が取り消しになって、南方への出撃に際し増設された航空隊は、ウィッチではない水偵隊だ。特設水上機母艦が作戦の要として浮上したとき、活躍の場として画策したとしてもおかしくはない。ここで任務を果たせば、海のネウロイに対してはウィッチがいなくともやれると大体的に宣伝できるしな」
「それをいっそう進めやすくするために、私の様な未熟者を隊長に添えたというのですか!」

葉山は怒りをこらえて言った。強く握られた右手が血の気を引いて白くなってゆく。

「いったい誰が!艦長とかですか?」

田所中佐は首を横に振った。

「それはない。有間艦長や南遣艦隊の|結《ゆい》提督は、筑波一飛曹の進言を受けて一崎一飛曹を海軍へ引き込むことに一役買っているからだ。水偵隊だけを活躍させたいなら、一崎のことは無視したかっただろうからな。一崎一飛曹が現れたのはイレギュラーだ。あの|娘《むすめ》によってウィッチ隊にもこの任務で力を発揮する可能性が出てきてしまったのだ。一崎が現れなければ、ウィッチがこうも期待されることはなかった。水偵隊で戦果を独占できるはずだったのだ」

葉山の怒りは別のものに変わった。

私はウィッチではないが、そんな狭い了見は持ち合わせていない。この潜水型ネウロイによって扶桑が、世界が危機に瀕しているんだぞ!

葉山の心中を察した田所中佐が、得意の硬い面持ちのままで笑いを浮かべて言った。

「我が海軍でも扶桑海事変の時や、ブリタニアのトレバー・マロニー空軍大将が失脚した事件の例もある。ウィッチの一方的活躍をよく思っていない連中は、予想以上に多いのだ」

だからと言って葉山は納得いかなかった。

手加減したらそれに合わせてくれる様な相手ではないのだぞ!ウィッチも一般将兵も全力で力を合わせなくして倒せるわけがない。

「言いたいことはなんとなく分かる。だがまずは自分達を鍛えることだ。今のままでは水偵隊を喜ばせるだけだぞ」

確かにその通りだ。対潜水艦戦のノウハウも練度も、一崎一飛曹の能力把握も、全てが始まったばかりなのだ。

「今日は沖に出るのか?」
「はい。特潜隊から応援を受けることになっていますので」

ちょうどそこに伝令がやってきた。

「葉山少尉、|蛟龍《こうりゅう》8号艇より連絡。『我、間もなく潜伏海域』とのことです」
「了解した。予定通り演習開始すると伝えてくれ」

葉山少尉は書類をバインダーに畳んで立ち上がると、田所司令を仰いだ。

「恨まれるくらいに活躍してやります!」


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