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オリエンテーリング (8) [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第8回
<オリエンテーリング (8)>

女子同士も盛んに話をしていたところ、A班リーダーのチャンが急いで出発を告げた。
「おい、A班そろそろ出発するぞ!みんな敵に情報渡しすぎるなよ」
A班リーダーにむっとする勇夫。
「なんでだよ!渡して何が悪い」
勇夫が言い返えしたたとたん、意外なところから援護射撃がきた。メガネの小泉が言い返してきたのだ。
「もっと情報をあげて、こっちも情報をもらうべきだと思います」
「なに?」
「リーダーは何を優先するんです?」
「な、何って、完走に決まってるじゃないか」
「リーダー、B班の人の話、少しは聞きました?この先の道、今までとは地形も様子も違いますよ。完走したいならもっと情報聞くべきです」
おとなしいキャラと思った小泉だが、よっぽど思うものがあるのか、リーダーに食ってかかっている。
「でも、ただじゃ情報くれないだろう?」
勇夫も参戦した。「こっちの情報渡して何が悪いんだ?」
「だって勝ちたいだろう?情報渡したら、それだけ不利になるんだ」
アロンも馬鹿らしくなって加わった。「30分以上に相当する距離の差をつけられて、その上こっちはゆっくりペースでしか動けないのがいるのに、勝負もなにもあるかよ。その前にクラスメイトって考えないのかよ」
小泉はあくまで正論でチャンに挑む。このメガネはかなり頭がいい。
「B班はここまで5時間以上かかって来てます。私達が体力に任せて進んでも4時間かかれば18時過ぎますよ。オリエンテーリングエリアはクスス山の東側、太陽はクスス山に隠れて日が暮れるのがきっと早いわ。森の中はあっという間に真っ暗になります。日のあるうちに抜けるためにも道を教えてもらった方がいいです。でないと完走も危ないと思います」
チャンが黙りこくった。
それまで両手を胸の前に合わせて様子を聞いていたハウルが、小泉の頭を勢いよくパーンと引っぱたいた。
「裕美子、よく言ってくれた!リーダー、ちょっとあなた今まで自論を通しすぎ。あのさ、B班は知らないかもしれないけど、定時連絡のときドジ担任が口滑っちゃって、まだAクラスもBクラスも完走した班がないんだってことがわかったの。それ知ったらもうリーダー目の色変えちゃってさ。俺の班がやるんだ、俺の班がって」
「小泉さん、すごいわ。日が暮れてからのことまで考えが及ばなかった。私達、ペースが遅いのに日が落ちたら、もう抜けられないわよ」カーラが危機感に襲われた。
アンザックはそれを越えて恐怖感に襲われている。「俺、暗いとこやなんだよー。冗談じゃねえよ」肝っ玉の小さい奴だ。
B班リーダーのジョンがチャンに話しかける。
「このオリエンテーリングの目的はクラス内競争より、クラスの団結なんだろう?力貸してくれよ」
「俺・・・なんかみみっちいな」チャンが力なく言う。
それを聞いてハウルが発破をかける。「リーダー、そう思うなら目標変更!いつまでもくよくよしてないで、ほら」
小泉がもう一度同じ問いをかけた。「リーダー、何を優先しますか?」
チャンはすっくと立ち上がった。気持ちの切り替わりが早いのも彼のいいところだ。
「わかった・・他のクラスが果たせなかった完走。・・それもクラス全員の完走だ!」
わあ!っと歓声が上がった。
「よく言った、チャン!」アロンや勇夫がチャンの背中を叩く。

暗闇に身の危険を感じるアンザックが、すぐさま行動に移った。「ウォルト、お前早くルート記録したノート出せ。A班記録係誰だ?見せっこしようぜ」
記録係は小泉だった。「わたしです」
ウォルトがノートを振りかざして、「記録係だけじゃ写すのに時間かかるよ。みんな手伝って」
アロンが口を挟んだ。「ノート交換しちゃえよ。いらないだろ、今まで通ったところのことなんて」
「名案です」と小泉も賛同した。
そこへレソフィックが意見した。「その代わり、両方の情報で地図を完成させないか?もらってる地図は位置関係はわかるけど地形がわからない。大雑把でも地形と道が書き足せればだいぶ違うと思うんだけど」
わらわらと集まってお互いの地図に書き込みが始まった。地形と道が書き足され、クスス山周辺のオリエンテーリング会場の全体像が浮かんできた。

B班からもらったノートに目を通していた小泉がウォルトに声をかけた。
「これ・・面白いですね。水の消費量が書いてありますけど、もう使い切っちゃったんですか?」
するとシャノンがうれしい情報をくれた。
「この尾根の向こうに水源があるわよ。浴びるほど沸いてるから汲んでいきなさいよ」
「ほんと?クスス山のおいしい水?やった、おみやげにしよう」
「降りるまでに飲み干さなきゃな」現実をさらりと言ってのけるシャルロットだった。

次回「オリエンテーリング (9)」へ続く!

前回のお話「オリエンテーリング (7)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆


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TSO

オリエンテーリング中盤のハイライトでした。ここから後半へ突入です。

18人のキャラは、すべてがこの物語のために作られたわけではありません。
主人公としているアロンをはじめ幾人かは、私の中では非常に古い、思い入れのあるキャラです。
学園モノを書こうと決めたとき、別の物語のキャラである彼らを使って学園モノを書いたら・・・というのが、引き出された発端です。誰がそうなのかは今時点では明かせませんが。

by TSO (2010-01-14 00:17) 

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