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<俺の家は海賊(3)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第32回
<俺の家は海賊(3)>

「よう、海賊」

一斉に皆の視線が背広の男に向かう。

「何の用だ、挨拶もなく入り込みおって。公僕らしからぬことをする奴だ」
「だ・・誰です、この人」とパウロが聞く。
「海上保安庁のダグラス警部だ。どうもこいつとは馬が合わない」
迷惑そうなじいさんである。

「なんだ今日は。学校の社会科見学か?確かに面白そうなものが沢山ここにはあるが、本当の持ち主はそいつじゃないかもしれないぞ」
「失礼なことを子供達の前で言うもんじゃない。この男は何度かわしに妙な罪を被せようとするが、成功したことがない」
「ふん、しらを切れるのも今のうちだ」
「で、何しに来た。また新しいいちゃもんネタを考えついたのか?」
「今日は子供達がせっかく来ているようだから、コレクションの見学だけで、また次回来るとしよう」
こう言うと入り口近くの方から飾ってあるものを見始めた。

なんか場が悪くなる皆。


地図が貼ってある前で立ち止まった警部がまた話し始めた。
「おまえの縄張りはトラリス海峡らしいな」
「調査対象は世界中に散らばっておるぞ。トラリス海峡もよく行ったが特定の場所に固執しておらん。そもそもあそこで海賊騒ぎは起きておらんだろう。あそこでは、延縄漁船『第4神海丸』の沈没、貨物船『マラヤ』の座礁事故、政府チャーターの海洋機構調査船『レグラド・ラー号』の行方不明、フェリー『ネグロ・ビーナス』の火災沈没」
「さすが詳しいな」
「仕事場のは特にだ。フェリー『ネグロ・ビーナス』の火災では救助と沈没後の調査もやったぞ。海難事故なら他のところもいくらでも思い出せる。xx年マラッカ海峡のタンカー重油流出、xx年日本海不審船事件・・・」
「トラリス海峡では本当に海賊行為はなかったのか?」
警部はほとんど壁にかかっているものを見回していた。立ち止まって長々と見渡し始めたのが、舵がたくさん掛けて飾ってあるところだ。大小の舵が20くらいあるというすごい壁だ。


このやり取りの間、アロンはさっきの未整理品のところに戻っていた。そしてそわそわしていた。
勇夫が小声で「どうした?」と聞く。
「この半鐘とコンパス、隠せないかな」
「は?」

警部とじいさんのやり取りの間に、また裕美子が未整理品の近くまで戻ってきていた。
壁伝いにアロンの側まで来ると、顔はアロンとは違う方に向けたまま、手は口にかざしてアロンの方へ向け、小声で
「その舵、ちょっと場所変えませんか?」と言った。
アロンはびっくりして裕美子を見た。

このメガネも同じことに気付いた?!

その顔を覗くが、メガネのせいかほとんど無表情のように見える。
アロンは意を決すると2人に向って小声で言った。
「レソフィック、勇夫、ちょっと警部の陰になるように立ってくれ」
2人はそれに答えてすすっと動くと、2人を死角にしてアロンは静かに舵を持ち上げ、反対側の壁に舵を寄りかからせた。


舵がたくさんかかっている壁の前にいた警部が
「ほう、フェリー『ネグロ・ビーナス』の舵だ」と言った。
おじいさんが答える。
「沈没後の調査したと言ったろう。その時引き揚げたものだ。新しい船にしちゃ珍しく木製の立派な舵を着けてたんでな」
「ふーん」と言いながら警部はまた歩き出した。

そのうちアロン達のいる例の未整理品のところまで来ると、その反対側に舵を見つけてまじまじと眺めだした。
しばらくして、
「ふん」
と言うとその場を離れていった。
アロンはちょっと安堵する。


警部は帰っていった。

C組の面々も、最初の華やいだ気持ちがしぼんでしまい、引き揚げることにした。

アンザックは皆を見送ろうとしたが、勇夫に
「まだ早いだろう。昼飯食いに行こうぜ。午後も暇ならもうちょっと遊んでいこう」
と外に連れ出された。

みんなが出ていった後、壁に立てかけられた舵に気付いて、その前に立つおじいさんの姿があった。


次回「俺の家は海賊(4)」へ続く!

前回のお話「俺の家は海賊(2)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆


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