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<7月のホタル鑑賞(5):あなたも私を探して> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第83回
<7月のホタル鑑賞(5):あなたも私を探して>


ポコ山はこの街の北にある独立した低山である。
ポコ山の北東にクスス山から続く山塊の一番端がある。その丘陵地帯は低い尾根とその間に畑、まばらな人家という景色が続く。
その谷筋の一つにアロン達は入った。農作業で一服するのに使うらしい東屋があり、そこへみんな入って、買ってきたサンドイッチを食べながら夕暮れを待つ。

食べながらアロンが説明した。
「この辺の畑は放棄されちゃっていて、いったん農業で汚染された川の自然が徐々に回復してきてるんだと思う。一度いなくなったホタルも川づたいにここまで戻ってきたんじゃないかな」と自分の推測を語った。
「そうすると他の谷筋にもだんだん戻ってくるのかしら」カーラはちょっと期待を込めて言った。
「今のまま周りの自然が保たれて、条件がよければ戻るかもしれないよ。この隣近所の谷筋にはいないけど、3つくらい離れるとまたホタルがいるんだ。ここまで飛んできて卵生んだのかな」
みんな「へえー」っと感心する。
「もうシーズン終わりだろうから、そんなに数出ないと思うけど、あんまり飛ばなくてもがっかりしないでくれよ」
「ちょっとでも見られればいいよ」ハウルはにっこりしながら言う。
「食い終わったらもう少し奥へ行ってみようか」


日はだいぶ暮れ、辺りも暗くなってきた。
アロンが当たりを見回しながら言った。「そろそろ飛ぶよ」
「どの辺に出るの?」ハウルもきょろきょろしていた。すると川の方を見ていたレソフィックが
「川の方だろ。あ、あの川の横の薮の中光ってないか?」
クリスティンもそれを認めた。「・・・ほんとだ!緑色のが光ってる!」
「あ、飛んでますよ」裕美子も見つけた。
それを追った勇夫はさらに「もう一匹、つられて飛んできたよ」

ふわふわとまるで埃のように飛ぶ緑の淡い光り。でもそれは風にたなびいているのではなくて、光るもの同士が絡み合うように飛んでいる。

カーラはアロンのそばにいた。アロンはホタルが手に止まらないかと腕を高く上げながら、カーラに説明した。
「飛んで光ってるのはだいたいオス。下の草の方で光ってるメスを飛びながら探すんだって」
「じゃ、これほとんどオス?動物界ってだいたいオスが派手なかっこうして求愛するのよね・・・」
頭上を飛ぶホタルを見つめるカーラ。

「アロン君も探してくれればいいのに・・・」

「え?なんだって?」
「うううん、なんでも・・」
腕が少し触れる程度にしか寄る勇気のないカーラだった。


光りに連れられてホタルはあちこちに散らばり、多少川から離れたところでも飛び始めた。レソフィックがそれを捕まえたので、ハウルが手を差し出した。
「わあ、それあたしの手にも乗る?」
「食うなよ」
「食うわけないじゃん!」
ハウルはレソフィックと手を並べると、ホタルはよじよじと歩いてハウルの手に移った。
「くすぐったい。わあ、かわいい。手の上で光ってる」
カーラはそれを見ると
『ハウルはレソフィック君の手に触れてもなんとも思わないのかな。あたしもアロン君に捕ってもらおう』
と思ってアロンに頼んだ。
「アロン君、あたしものっけてみたい」
「うん?捕まるかな」
と、ちょうど一匹がアロンの肩に止まった。
「カーラ、俺のどっかにいったぞ。それ捕まえなよ」
「あ、肩の後ろ辺にいる。しゃがんで?」
「こう?」
「じっとしててね・・・おいでおいで」
ホタルはカーラの指先に乗った。
「見て、きれい」
「見事、オスホタルがメスをゲットしました」
「ちょっと、メスってわたし?」
「あ、飛んじゃった・・」
「わーん!」

そこへ裕美子がやってきた。
「カーラさん、か、髪の中にいるみたいなんです、捕ってくれません?」
「え?あはは、ユミちゃん、頭きれいよ」
アロンも裕美子の髪の中で光るホタルを見た。
「もわもわした髪を薮と間違えたんじゃねえの?それか出らんないか」
「捕って!もそもそして、なんかいやなんです」
「待ってね。おいでおいで」


向うでは勇夫が1本の木を指さしてる。「あそこの木に集まってきてるよ。10匹くらいいるかな」
その方向を見たクリスティンもちょっと驚いた。
「ほんとだ。みんなとまって光ってる。クリスマスツリーみたいね。LEDだからエコだし。・・・あれ?LEDじゃないよね?なんで光るんでしたっけ?」
「たしか化学反応だったぜ」珍しく勇夫が学のあることを言うとクリスティンがどんどん脱線していく。
「え?!化学反応?じゃ、ホタルって毒ですか?川にいっぱい落ちると汚染されちゃいます!来年ホタル来なくなっちゃうわよ・・・あれ?」

レソフィックもその木を見た。
「来年、ピークのときまた来ようぜ。もっとこれすごいと思うよ」
「ピークのとき?来よ来よ、絶対よー!いやーん、もう来年が待ち遠しいわあ」
今頭上にホタルが飛んでいる下で、もう来年に思いを巡らせるハウルだった。そして勇夫を指さし楽しげに問うた。
「私達だけの秘密だからね?あんた、秘密守れる?」
勇夫が即答する。

「そりゃ俺が一番おめーに言いたいよ!」

20100514_ホタル鑑賞s.jpg


期末試験前の秘密のホタル鑑賞、来年の開催も誓って、これにて無事終了。


次回「カーラの誕生日(1):ケーキ手に入らず」へ続く!

前回のお話「7月のホタル鑑賞(4):脈あるのかしら」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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コメント 2

TSO

xml_xslさん、shinさん、niceありがとうございます。

挿絵のバックで飛び交うホタルは、去年本家ブログに載せた本物の写真使ってます。これに本物を真似て手描きでも描き加えました。
真似て描いたのも色は本物からスポイトで取ったので、カクカク感はありますが自分としてはけっこう本物っぽく見えます。
ただ写真のサイズが小さくて、キャラの顔がきれいに描けなかったのが残念(特にカーラ)。キャラにはグレーの乗算レイヤも加えてるので、夜の感じは出たかなあと思ってます。


by TSO (2010-05-22 20:52) 

TSO

doraさん、HAtAさん、やまさん、Ainoさん、ヒロさん、ケンケン@さん、くうかさん、ルピナスさん、niceありがとうございます。いつの間にかこの記事にたくさんniceついててびっくりしました。
by TSO (2010-05-29 21:24) 

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