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<校外展覧会絵画展(8):次なる手> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第132回
<校外展覧会絵画展(8):次なる手>


四つ切にプリントすると、4人でキャリーが練習している練習場へ行った。

相変わらず激しい練習をしている。空気に漂う緊張感にアロンが驚いた。
「こんなにぴりぴりとした状態がずっと?持つのかねえ」
リーダーもその雰囲気を感じ取った。
「すごいな。でもだからうちのバスケって強いんだろ?」
4人は脇で待っていた。

しばらくして休憩になった。キャリーが休憩のため引き上げてくるのをリーダーが迎えた。
「お疲れさん。迫力ある練習だね。これじゃあ今日もへとへとだな」
裕美子が気を利かせてスポーツドリンクのペットボトルを持ってきていた。
「よかったらこれどうぞ。冷えてますから」

キャリーは険しい顔をしていたが、4人を見て少し和らげた。
「ありがとう。絵の催促?ごめんね、やる暇がなくてさ」
「ポタ山まで行かなくてもいいように、キャリー担当のところの写真撮ってきたから。夜時間取れたらこれ見て描いて」
カーラが言った。
キャリーはもらったペットボトルをさっそくラッパ飲みしている。

「冷たくて生き返る~。なるほど、写真あれば行かなくてもいいもんね。でも夜も飯食って風呂はいるとばたんキューでさ。あんまり自信ないんだよね」
「そうでしょうね、この感じじゃ・・・。また様子聞くから。怪我には気をつけてね」
アロンが写真の入った袋を持って振った。
「写真どこに置けばいい?」
「マネージャー、これ受け取っといて。あたしのかばんに突っ込んどいてくれる?」
アロンはバスケ部の女性マネージャーに写真を渡した。
「他の人はどうしてんの?みんな描かなきゃいけないんだろ?」
アロンはキャリーに聞いた。
「ほとんど描けてないよ。あたしもほとんどバスケのことで頭一杯だから、バスケットボールくらいしか描けないかも」

練習が再開なりそうだった。カーラが最後に声をかけた。
「お邪魔様。がんばってね」
「おう!差し入れありがと」


練習場からの帰り道。
アロンは裕美子に声を掛けた。
「小泉、気が利くなあ。スポーツドリンク代、俺も出すよ」
「あ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
リーダーが裕美子の前に躍り出ると、手を大きく振りながら言った。
「いやいや、そうはいきませんよ。領収書ありますか?ドジ担任に出しましょう」
するとカーラも裕美子の肩に手を置くと言った。
「そうよ、経費はちゃんと清算しましょ。プリント代もでしょ?」
そこでバイクを走らせたアロンもすかさず手を挙げて便乗した。
「じゃ、俺のガソリン代も!」
「それは無理じゃないか?」リーダーにただちに却下された。
「ちぇっ」

もと来た道を戻る4人。さきほどの写真屋が向こうに見えてきた。アロンが再び口を開く。
「ところでキャリーだけど、あれじゃあたぶん描けないよ」
カーラもチャンも同感であった。
「そうよね。試合終わるまでバスケが頭から離れないわ。それに日々あの練習じゃ、夜絵なんて描けないよね」
「どうしよう。テーマが決まってるだけにかえって難しい絵になっちゃったかもな」

裕美子が頬に手を当てて首を傾げながら少し考えると
「正攻法で考えますか?顧問の先生に言って、描く時間作ってもらうように。バスケ部のみんなが描けてないなら、バスケ部全体で対策取った方がいいでしょうから」
「さすが裕美子さん。それ、お願いしましょう」チャンは同意した。
しかしアロンもカーラもちょっとくらい時間とったくらいで描けるとは思えなかった。
「それでもゆっくり描く時間はとれないんじゃないかな。風景画を落ち着いて描くほどの時間はさ」
「そうよね。この際だから走り描きでもしょうがないかもね」
裕美子もキャリーの言葉を思い出す。
「バスケットボールくらいしか描けないかもって言ってましたね」
「バスケットボールなら寝ていても描けるのかなあ。毎日見てるものだし」
リーダーがそう言うとカーラが
「ノートの端に落書きでバスケットボール描いてるの見たことあるから、描けるんじゃないかしら」

それを聞いてアロンはピンときた。
「それならいっそ、ボール描いてもらおうか。ただちょっと他の人が犠牲になるかもしれないけどな」
「どういうことだ?」チャンが聞く。
「360度景色の中で、でっかい丸い物体が一つだけあった」
「丸い物体?野外音楽堂のドーム?」
丸い物体は思い当たったが、話のつながらないカーラだった。しかし裕美子はアロンの考えを読み取ったようだ。
「あれをバスケットボールに見立てる・・というかそのまんまボールに挿げ替えるんですか?」
「しゃれだけどな。でもウォルトの極彩色の絵とか、勇夫の幼稚な絵とかもあるし、それっくらいの洒落もいいんじゃない?」
「えー?そんないい加減なの許されるか?」
真面目なリーダーである。しかし裕美子は
「面白い発想ですね」
とその案を肯定した。裕美子がOKするとチャンも考え直す。
「え?そ、そう・・ですね。アロン、や、やってみるか」
「じゃあリーダーは絵を描く時間の確保だ。顧問の先生にバスケ部員が絵を描く時間を取れるように交渉してよ。野外音楽堂の範囲を書いてたのは誰だっけ。キャリーと交換してもらうお願いをしなきゃ」
「確かダーニャよ。彼女絵すごくうまいのよね。せっかく書いた力作なのに、交換してくれるかしら・・」
「嫌がるかもなあ。一応当たってみよう。だめなら丸い物体が他にないか探しに行こうか。でもあったかなあ」
「そのときは今度は4人でポコ山行ったほうがいいですね。手分けして探しましょう」裕美子が言った。
「とにかくまずはダーニャの説得ね。私、事情説明してみるわ」
カーラが実行委員の責任者として覚悟を決めた。
「わたしも行きますよ」
裕美子がカーラに微笑む。
「ありがと、ユミちゃん」
「みんなで行こう。アロンも頼むよ」
「へいへい」


次回「校外展覧会絵画展(9):最後の1枚」へ続く!

前回のお話「校外展覧会絵画展(7):再びポタ山」
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コメント 1

TSO

HAtAさん、xml_xslさん、K-STYLEさん、niceありがとうございます。

by TSO (2010-10-11 14:07) 

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