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<ばれた正体> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第134回
<ばれた正体>


「いやー、間に合ってよかった。実行委員の4人には感謝するよ」

痛く感激しているドジ担任だった。何しろほとんど関わってないのだ。

「後は今日運ぶだけだなあ」
「展示の仕方も決まったし、今日運んだとき、俺が業者にそれを伝えるんで、明日朝一で出来上がりを確認したら一仕事終わりだね。残るは片付けくらいなもんだ」
アロンも終わりが見えてきてほっとしたようだ。

一方チャンはドジ担任に文句を言った。
「先生ほとんど何もやってないじゃないか。バスケの顧問の先生に交渉に行ったのも俺らだし。経費の清算もまだだぞ。清算くらいはやってくださいよ」
「あはは、悪い悪い。経費の方は、学校から一定額の雑用費用が出るから、すぐ清算するよ。ちょっと余るんで、今日作品運んだら帰りにお茶でもしてこうか」

お茶と聞いてウォルトが素早く反応した。
「ず、ずるいぞ!実行委員だけでかよ!」
「で、でも実行委員はそれだけの働きをいろいろやってるからなぁ」ドジ担任は言った。
「そしたら大功労者のダーニャもじゃないですか?」
今回はテーマ選定からキャリーの絵まで、ダーニャにはいろいろ助けられただけに、カーラには実行委員だけを特別扱いしたくなかった。
するとウォルトが「わかった!今日、作品運ぶの俺手伝うよ!」と言い出した。
ただちにパウロが飛び上がるように反応する。
「きたねーぞ!おこぼれに預かろうなんて。じゃあ、俺も運ぶ!」
「やってること同じじゃん・・」
あさましいやりとりに美女は呆れていた。

そこへ追い打ちをかけるように勇夫も加わってきた。
「自分のは自分で運ぼう!で、帰りにみんなでお茶ご馳走になろう」
とうとう特別扱いどころかクラス全員平等にされてしまった。さすがにドジ担任も慌てる。
「え!クラスみんなにおごったら大赤字に・・」
「何もやってないんだから、それっくらい自腹切ってやってもいいんじゃない?」
ハウルがニヤつきながら痛いところをついてきた。
ウォルトが有無を言わさず「決まり決まり!」と話を進めたので、ドジ担任はさらに焦りまくった。
「ちょ、ちょっとお~」


放課後。
会場へ絵を運びにC組のみんながぞろぞろと玄関に向かって降りて行った。
ドジ担任は途中で教員室の方へ向き直って、
「俺はちょっと用事あるから、後であっちで会おう」
とみんなに告げた。
「先生、逃げるなよ」
ミシェルが疑いの目で見る。
「に、逃げるわけないじゃないか。ちったぁ先生を信用しろよな」



玄関に出ると空は灰色で、ぱらぱら雨が降り始めていた。予報にはなかった予想外の雨である
カーラが空を見上げた。
「あ、雨だわ。どうしよう、絵が濡れちゃう」
すると後ろで無言で勢いよく傘を開く音が。裕美子である。かばんにいつも入れている小さい折りたたみ傘であった。備えておいて当然という顔をしている。
それを見たアロン、
「用意いいなあ。でもこれは、みんなの絵を防水加工した箱かなんかにまとめて入れて運んだ方がいいぞ」
「そうね。大きいビニール袋と箱探してくるわ」
そう言うとカーラは校舎の中に戻って行った。その背中にウォルトが叫ぶ。
「その箱、俺も運ぶの手伝うからな!」
長身のジョンがウォルトを見おろしながら言った。
「お前、そんなにまでしてドジ担任におごってもらいたいのか?なんて奴だ」
「別にみんな来なくていいぞ。人数少なくなれば豪華なもの頼めるかもしれないし」
いつもならこれに加わってそうなアンザックだが、今回はあまりにもアホらしくってアンザックでさえウォルトに呆れていた。
「いつもながらけち臭い低次元な発想だなー。ついていけねぇ」


カーラが段ボール箱の中にビニール袋を入れて持ってきた。その中にみんなの作品を入れると、さらに段ボール箱をビニール袋で包んで念入りに縛った。

アロンは外をの様子を伺った。
「今ならまだ雨はパラパラ程度だ。たいしたことないうちに運んじゃおう」
アロンが箱をかつぎあげると、玄関で裕美子が傘を開いて待っていた。
「はい、どうぞ。でも傘小さいから、入れるのは箱だけでしょうけど」
「それだけでも十分ありがたいよ」
カーラを先頭に、アロンと裕美子、そしてC組みんながぞろぞろついていく。


途中でジョンが担ぎ手交代を申し出た。
「アロン、交代しよう。せっかく付いてきてるんだから少しは手伝うよ」
するとウォルトが焦ったように
「あ!確実におごってもらおうと思って実績作る気だな?」
と言い出した。
「アホ、お前じゃあるまいし。だいたいいつお前、手伝うつもりなんだ?」

しかし背の高いジョンが箱を持つと、背の低い裕美子では傘の高さが合わない。傘を持つ手を不自然に高く伸ばしてようやくジョンの頭の上である。
「ジョンさん、ごめんなさい。入ってる?」
するとイザベルがすっとやってきて、裕美子の傘を持った。
「裕美子じゃジョンと背が釣り合わないよ。私が傘持つ」
そこへ美女も割り込んできた。
「あたしの方が背高いよ。あたしが傘持つ」
「わ、私が先よ」
「なによ。あんたじゃ背以外もジョンとじゃ釣り合わないわよ」
「ひどっ!スレンダーさなら私も負けないからね!」
「あんたやせ過ぎだって」

レソフィックがその後ろから2人に声をかけた。
「何もめてんだよ。どっちでもいいから早く運ぼうぜ」
「じゃんけんで決めたら?」
勇夫も言ってみるが、2人は取り合わない。
「背の高さでわたしでいいでしょ。次ミシェルあたりに交代したときにでも傘持ちなよ」
「私が先に傘交代するって言ったんだから、私が先!ミシェルのとき美女が傘持ちなよ」
「次が俺って誰が決めたんだ?」
急に名前が出てきてミシェルが言った。

思いがけず傘の争奪戦になった。
と思ったら、雨が急に激しく降り出した。そしてそれは土砂降りになった。

頭に手をやってパウロが叫ぶ。
「うわ、こりゃひでえ!」

パウロが走って近くのちょっとした軒下に逃げ込むと、ハウルとクリスティンもそこに逃げ込んだ。
遅れてシャノンがハウルの横に入ろうとする。
「いやー、私も入れてー」
「ここもう満員。シャノンなら入れるかな」
少し押し出されたクリスティンがハウルにのしかかってきた。
「わああ、肩がはみ出る~」

みんな雨宿り場所を探してパニックである。
イザベルは傘を持って疾走していった。それを見てジョンが声をあげた。
「わあ!荷物守ってくれよー」

みんなはさらに先の倉庫の張り出しの下へ逃げ込んだ。

「傘の奪い合いなんかしてるからだぞ。とっとと行けばもう少しで展示会場なのに」
勇夫が顔から水をしたたらせながら口を尖がらかせている。
ミシェルが雨宿りしてる顔ぶれを見回した。
「その肝心の傘がいねえぞ。イザベル、どこまで行ったんだ?こんなときには体力あるんだな」
「うわあ、びしょびしょ。ジョン、作品大丈夫?」
カーラが心配する。
「箱はかなり濡れたけど、中は多分大丈夫だよ」
防水加工をしたアロンが請け負った。
「念入りに包んだから大丈夫だと思うよ。しかし、せっかく傘持ってたのに、持ち主の小泉も濡れちゃったね。あ!・・」

裕美子を見たアロンは固まった。全身ずぶ濡れの女の子。それは一瞬見知らぬ人に見えた。

みんながそれに気付いた。確かこの背格好は裕美子だ。だが、首から上、特に髪は見慣れたもわっとした頭ではない。雨に濡れてくせ毛が真っ直ぐになってまるで別人である。

「・・・・ちょっとあんた・・」

おそるおそるめがねに手をかける美女。

抵抗できない裕美子。

めがねが外されると、そこにはあのときの幼なじみの顔があった。


次回「学内ライブ(1):あの後」へ続く!

前回のお話「校外展覧会絵画展(9):最後の1枚」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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TSO

長らく無人運転が続いておりまして、niceやコメントへのお礼、皆様のサイトへのご訪問ができてなく申し訳ありません。
時間が取れるようになったら必ずお礼に参りますので、それまで気長にお待ちください。この間、無人君状態のこのサイトもお見捨てにならないようおねがいします。
皆様のnice、コメント、また表面には見えないですがアクセス数など、大変な励ましをもらっています。引き続きRight-Worldをよろしくお願いします。

さて本編の方は、比較的まじめな内容だったスケッチ大会が終わり、作品を持っていこうというところで、またもや大きな山場を迎えた感じ。
しばらく緊迫した状態が続きそうです。

by TSO (2010-10-10 12:44) 

ケンケン@

こんばんは~
裕美子、とうとうばれちゃったんですね!
皆がどんなリアクションするのか楽しみです(≧∇≦)

by ケンケン@ (2010-10-11 18:38) 

TSO

HAtAさん、xml_xslさん、ほちゃさん、ヒロさん、ケンケン@さん、くうかさん、PENGUINGさん、あすぱいさん、やまさん、「直chan」さん、Ainoさん、K-STYLEさん、niceありがとうございます。

ケンケン@さん、コメントありがとうございます。
ここまで秘密事項にしていましたが、とうとうばれちゃいました。
男の子の反応は期待できますが・・・女の子は根に持つんですよね~。
by TSO (2010-10-16 01:09) 

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