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<誰よりも前から(3):今日もわたしの傘で> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第156回
<誰よりも前から(3):今日もわたしの傘で>


翌日、いつもより早くアロンは登校した。
まだ教室は人まばらだった。

裕美子も登校済みである。既に席に座って、鞄から筆記用具などを取り出してるところだった。
アロンは自分の席に着いた。


「昨日はありがと。傘返すよ」

アロンは畳んである折りたたみ傘を裕美子に差し出した。




「風邪引かなかった?帰ったらすぐちゃんとシャワーあびた?」
「ああ。ハイ、大丈夫です。ごめんなさい、変な行動とって」

傘を受け取りながらの裕美子の答えは意外と平静であった。
アロンとしてはもうちょっと反応を伺いたかった。裕美子の方を向いて座り直すと続けた。

「いやあ、昨日はびっくりしたよ。いくつびっくりすることがあったと思う?」

まだこの話題を突付かれそうとわかると、裕美子はちょっと困ったように机に目線を落とした。

「一番驚いたのは、やっぱ小泉がそこに座っていることかな」

昨日の行動を思い出して恥ずかしくなったか、裕美子がほのかに色付いていくのがわかった。



この日の空もどんよりした日だった。
予報では午後雨が降る確立は五分五分だったが、5限が始まった頃からとうとう冷たい雨が降り出した。

5限が終わってみんなクラブへ行ったり帰ったり。
勇夫とレソフィックがアロンを帰宅へ誘った。

「アロン帰ろうぜー」
「あっ俺、科学のレポートの発表準備で図書館で調べものしてくから。先帰っていいよ」
「そう?そんじゃ夕飯の献立はこっちで勝手に決めちゃうからな」
「おー、任せた・・。あ、麺類以外な。このところ続いてるから」
「わーった」

いつもつるんでいる仲間とも別れると、教室の人口は半分ほどに減っていた。

図書館へ向かうべくルーズリーフのバインダーを抱えて立ち上がると、ふと窓の外を見てアロンは
「あ!」
と声を上げた。
廊下の方へ振り向くが、もうレソフィック達はいない。
目線を下に落とすと、横では裕美子が生徒会の分科会に行く準備をしていた。

アロンは裕美子の方に向かって椅子に座り直すと、声をかけた。

「あのー・・・、また傘借りていいかな?せっかく返したばっかりなんだけど」

裕美子がアロンの方に首を向けて答えた。

「え?自分の傘持ってこなかったんですか?雨降る確立高かったのに」
「天気予報見忘れた」
「そうですか・・・」

裕美子はかばんを開いて、底の方にある傘を見た。取り出そうかと思ったが、しかし気が変わった。

「じゃ、今日も傘入れてあげます」
「??。小泉傘持ってきてるんだろ?今日返した予備傘貸してくれればいいんだけど」

裕美子はちょっと傾げた首をアロンの方に向けて静かに言った。

「わたしの傘で送ります」

どうやらどうしてもひとつ傘の下がいいらしい。

「小泉、何時ごろ帰る?」
「たぶん4時ごろ」
「調べものするとちょうど似たような時間かぁ。・・もしまだ俺いなかったら待っててくれる?」

ちょっと口元に笑みを浮かべて裕美子が返事をした。

「はい」


次回「誰よりも前から(4):家まで」へ続く!

前回のお話「誰よりも前から(2):誰よりも前から」
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コメント 1

TSO

xml_xslさん、takemoviesさん、bitさん、kuzeさん、HAtAさん、りたーむさん、niceありがとうございます。
by TSO (2010-12-05 21:36) 

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