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<誰よりも前から(4):家まで> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第157回
<誰よりも前から(4):家まで>


午後4時。
裕美子が生徒会から帰ってくると、アロンは既に教室にいた。

「も、もしかして・・待ってます?」
ちょっと焦る裕美子だった。

「慌てなくていいよ。帰るとき声掛けて」


ほどなくして裕美子も帰り支度が済んだ。
自分の席の脇に立って、ちらと隣のアロンを望む。

「あ・・・の、準備できましたけど・・」
「え!?もう?やばっ」

と急に帰り支度を始めるアロン。別に準備万端で待っていたようではないらしい。

「悪い、お待たせ」

アロンがリュックを背負って立ち上がると、二人そろって教室を出た。



外はそれなりの雨脚だった。
玄関のところで裕美子が傘を広げる。折り畳みではない普通の傘である。
今日も少し背伸びするように右手で傘を高くさすと、アロンを入れて外へ出た。



2人は傘の下で無言だった。が、最初口を開いたのは裕美子の配慮に気付いたアロンだった。
傘を少し左、裕美子の方へずらすと話しかけた。

「小泉、体濡れるよ。やっぱり折り畳み傘借りるよ」

アロンのいる右の方に傘を多めに傾けていたので、裕美子の左肩はびしょ濡れだった。

「平気です。ごめんなさい小さい傘で。でも私のわがままのせいでアロン君が濡れちゃう」
「昨日の驚きに比べればなんでもないよ。一緒の傘の下がいいんだろ?」

少し赤らめた顔をちょっと膨れっ面にして裕美子が返した。

「みえみえだったとはいえ、そう露骨に言われるとちょっと腹が立ちます」
「え?なんか気に障った?一緒の傘、ぜんぜん構わないよ」
「ほんと?よかった・・」



ほどなく2人は、それぞれの家への別れ道に着いた。

裕美子に首を向けるアロン。しかし今度先に声を出したのは裕美子だった。

「家まで送ります」
「大丈夫だよ。ここで折りたたみ傘借りるよ」
「一緒の傘、いやじゃないんでしょ?」

昨日と同じく、またここで裕美子はアロンの正面に回ると、空いている左手でアロンの右手を握った。
また傘を渡されて走って逃げるのではと思ったアロンはその手を握り返した。

「今日は傘だけ置いていくのなしだよ」

握り返してきた意味がわかった裕美子はちょっと笑った。

「じゃあアロン君の家まで送る」

そうして今度はアロンの右側に回ると、傘を持った右手をさらに伸ばしてアロンの上にかざし、2人はアロンの家の方に向かって歩き出した。
そして裕美子はもうひとつ注文をつける。

「手、このままがいいです・・」

裕美子の左手はまだアロンに握られたままだった。


次回「誰よりも前から(5):返事」へ続く!

前回のお話「誰よりも前から(3):今日もわたしの傘で」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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コメント 2

TSO

xml_xslさん、bitさん、kuzeさん、りたーむさん、HAtAさん、(。・_・。)2kさん、K-STYLEさん、無人くん運転の中いつもniceありがとうございます。
by TSO (2010-12-12 17:19) 

TSO

やまさん、タッチおじさんさん、niceありがとうございます。
by TSO (2010-12-16 22:04) 

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