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<誰よりも前から(5):返事> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第158回
<誰よりも前から(5):返事>


2人は手をつないだまま無言で歩いていた。少し濡れた手はお互いに冷えて外側は冷たい。が、いつもより大きい胸の鼓動で血行のいい2人の手のひらは温かかった。

アロンの手に比べれば小さくてきゃしゃな感じの裕美子の手だが、握られているのではなくて、しっかり自分から掴んでいる。控えめな態度を取ってはいるが、一皮剥いたその中は強い意思の持ち主なのだ。

武道をやっているだけあって、組手などでアロンは人と組んだだけである程度相手を見る訓練ができている。そういう観点からも裕美子は、見かけで惑わされてはいけない人だと感じ取れた。


つないだ手から感じ取れる裕美子にいろいろ思いを馳せていると、結局何も話すことなくアロンの家の前まで来てしまった。


「俺ン家、ここ」
「え?、あ、着いちゃったんですか?!」

驚いた拍子に裕美子はぱっと手を離し、つられてアロンも手を離した。

「つまんなくなかった?なんか俺、黙りこくっちゃって・・」
「いいえ、わたしぜんぜん時間が経ったことがわかりませんでした」


アパートの玄関の軒先の下に2人は入った。
裕美子は軒下に入っても傘をさしたまま立っていた。

くるっとアロンは半分体を裕美子の方に回すと、ちょっと真剣な顔になった。

「あのさ、小泉、俺・・」
「はい?」

「・・俺、小泉が一番好きだ」

「・・・はい?」

「いや、本当は今じゃなくて、もう少し前にわかってたんだ」
「なにを?」

「俺は君を彼女にしたい」


開いたままの傘を背負っていた裕美子は、一瞬無の状態になったが、何を言われたかわかるとカーッとなった。

「あ・・」


「俺も、ずっと小泉が好きだったんだ。・・・心の奥底でずっともやもやと・・この気持ちは、好きってことだったんだ」


『と、とうとう言わせてしまった!言ってもらっちゃった!』
裕美子はアロンに答えようとしたとき、雨に濡れた半身のせいで「くしゅん」とくしゃみをした。

「だ、大丈夫?冷えたんじゃない?」

顔を下に向けて、ぐすっと鼻をすする裕美子。

『か、かっこ悪!アロン君への答えがくしゃみなんて・・ばかばか』
うれしさで火照った顔に恥ずかしさが加わって、頭がのぼせそうになってきた。裕美子は次に何をしていいのかわからなくなってしまった。


「あがって休んでいくだろ?」

『え・・?』


赤い顔を持ち上げた裕美子。
思い掛けぬ提案に声にならず、しかし体は勝手にうなずいてしまった。
アロンはニコッとすると、裕美子の手を引いた。
裕美子は引かれるがままに歩き始めた。

「傘ありがとう。もう大丈夫だよ」

裕美子は慌てて傘を畳んだ。
2人はアパートの部屋へ向かった。


次回「誰よりも前から(6):アロンの部屋で」へ続く!

前回のお話「誰よりも前から(4):家まで」
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コメント 2

TSO

xml_xslさん、bitさん、りたーむさん、takemoviesさん、HAtAさん、kuzeさん、ポコちゃん♪さん、無人くん運転の中いつもniceありがとうございます。
by TSO (2010-12-12 17:26) 

TSO

ヒロさん、釣られクマさん、タッチおじさんさん、ケンケン@さん、niceありがとうございます。



by TSO (2010-12-16 22:15) 

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