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<誰よりも前から(6):アロンの部屋で> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第159回
<誰よりも前から(6):アロンの部屋で>


部屋に入ると、アロンは部屋の温度を上げ、タオルを裕美子に渡した。

「ありがとう」

ドキドキが冷めやらぬ裕美子。

『考えてみれば一人暮らしの男の人の部屋に上がりこんでしまった。それも恋人宣言された直後に。ちょっと無防備すぎかしら?・・また、ここに来れたのね』

2度目のアロンの部屋である。前回は映画鑑賞の帰り、酔っぱらってカーラやリーダー達と上がり込んだのだった。あのときは皆と一緒だったとはいえ、アロンの家に上がれたことがうれしかった。
間取りは以前広報の集まりで来たレソフィックの部屋と同じである。しかしバイクのポスターがあったり、プラモデルが飾られてたり、隅にはマンガが積み上げてあったり、こっちの方が少年の部屋っぽい。でもレソフィックはみんなが来るから片付けてあったのかもしれない。そういうことでは急に来たにもかかわらず、アロンの部屋は片付いていた。

「何か飲む?コーヒーでもいい?」

やかんに水を注ぎながらアロンが聞いてきた。

「ありがとう。温いものならなんでも」



部屋がすこし温まったところで裕美子は上着を脱いだ。下のシャツまで染みていた。

「ずいぶん濡れたね。乾かさないと風邪引くよ。乾燥機は持ってないんで、ドライヤーでやろうか」

こく、っとうなずくと、裕美子はシャツのボタンに手をかけた。
何のためらいもなくボタンを外し始めたのでアロンはびっくりした。
しかし2つ外したところで手を止めると顔を仰いだ。

「これ脱いでる間、代わりのある?」
「お、俺のでよければ・・・俺のしかないけど、ここには。・・ちょっと今のは刺激が・・」

とうろたえながら奥のクローゼットへ行くアロン。


アロンは自分のシャツを取ってくると裕美子へ放った。

「洗濯してあるから大丈夫だよ」
「ありがとう。ちょっとカンゲキ・・」

裕美子はアロンの大きいシャツに着替えた。
努めて見ないようにしていたとはいえ、女の子は目の前であっても見えないように着替えるのが上手である。アロンにはいつの間にかするすると着替えたように見えた。


裕美子がドライヤーで服を乾かしているところへ、できたてのコーヒーを持ってアロンがやってきた。
アロンはテーブルの向かいに姿勢を正して座ると、少し頭を下げながら裕美子に言った。

「待たせてごめん」
「え?そんな待ってないですよ?すぐできたじゃないですか」
「いや、コーヒーじゃなくて・・・返事の方」
「あ、そ、そっちですね・・・。そんな誤ることないですよ。なんで?それに期限よりちょっと早く答えくれたし・・・」
「だって変だったろ?いつまでも態度はっきりしなくて・・」

裕美子は横目でアロンを捉えながら服を乾かす作業に専念する振りをした。

「吟味してたんでしょう?わたし、よくわかんない人だから・・・」
「ち、違うんだ。・・このずっと気になってた気持ちが、好きって気持ちだって判ってからも、言いだせなかったんだ」

裕美子は少し驚いたふうにアロンの方へ向いた。

「え?ど、どうしてですか?」

アロンはやや照れたように答えた。

「小泉が、すごすぎる人だから・・」
「ふわ?」

裕美子はよく飲み込めず、思わず変な声を出してしまった。

「その・・すごすぎて、俺なんかじゃよくないんじゃないかとか、俺では相手になんないんじゃないかとか、それならもう、美女なんか断るよりずっと強い気持ちで、断った方がいいんじゃないかとか、いろいろ巡って・・・でも、こんな人他にいないよなって思うと、断るなら俺じゃなくてその・・・」

裕美子はにっこりすると、アロンを止めた。

「それで考えた末に・・、わたし、合格?」

「うん」

裕美子はいっそう顔を赤らめると、再び服を乾かす作業に入った。

「いいんですか?わたしで」
「君でいいんだよ。・・・カーラには悪いけど、小泉に賭けてよかった」
「カーラさんはどうしてだめなんですか?あんなに仲よさそうだったのに・・」

アロンは少しうつむいて答えた。

「カーラは、いい子だし、好きだよ。・・・でも、カーラは本当の自分を俺に出せないでいると思う。意識してそうしてるわけじゃなくて、そうなっちゃうんだ。俺じゃカーラを窮屈にさせるかもしれない。・・・それより、小泉の方が、俺にとってはすごい人だから、・・魅力があるのは、小泉なんだ・・」

裕美子は顔のほてり具合から、自分でも真っ赤になっていくのがわかった。そこへアロンが追い討ちをかけた。
「耳まで赤くなってきた・・」

裕美子はアロンに背を向けてしまった。

「か、髪で耳は見えないんじゃないですか?」
「ちらっと見えた。小泉がそういう感情を見せるのは、ちょと新鮮だね」
「・・・」

アロンには表情が見えないが、背中の感じからするとちょっと膨れているのかもしれない。

「これからもっといろんな表情が見られるんだね」
「わたしのどこがよかったんですか?」
「・・でこぼこがうまく重なりそうだから」

裕美子は背を向けたまま、首だけ回して答えた。

「付き合ってみたら、やっぱり埋め合わないかもしれないですよ」
「考えらんない」

また裕美子は背中だけ向けてしまった。その背中へアロンが語りかける。

「それに・・・こんなにすごい人、他に渡したくない・・・と・思った」

裕美子は破裂しそうだった。まだ乾ききってないのにドライヤーを止めた。

「暑いです!」

ははは、とアロンが笑う。

「飲み物、冷たいのにしようか?」


次回「誰よりも前から(7):大好き!」へ続く!

前回のお話「<誰よりも前から(5):返事> 」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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TSO

takemoviesさん、xml_xslさん、F−USAさん、bitさん、niceありがとうございます。
おっ、ということはF-USAさん漫画がアップされたのかな。





by TSO (2010-12-16 22:28) 

バーバリー アウトレット

sujibuo
今日は~
^^またブログ覗かせていただきました。
よろしくお願いします。
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by バーバリー アウトレット (2010-12-18 13:03) 

TSO

bitさん、ぺるり提督さん、kuzeさん、ブラザーボブかきもとさん、。・_・。)2kさん、niceありがとうございます。

写真の綺麗な方、というかプロの方々からのご訪問が増えましたね。本家と違ってこちらには写真ないのですが、どういう経路でここにたどり着くのか不思議です。プロの方の写真にはいつも光と影の使い方に圧倒されます。

バーバリー アウトレットさん、ご訪問ありがとうございます。
えっと、お店?お仕事中の閲覧はお気をつけくださいね。(^^;
前回のも投稿時間間隔からして宣伝目的の機械投稿でしょうか。記事内容と無関係そうなので本記事以外のコメントは申し訳ありませんが後日削除させていただきます。m(_ _)m
by TSO (2010-12-18 19:05) 

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