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<バレンタイン(5):彼女は能面?> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!

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「片いなか・ハイスクール」連載第224回
<バレンタイン(5):彼女は能面?>


金曜日の学校。
放課後。


賑やかなハウルのグループのところにアロン達がやってきた。

「裕美子、俺もう帰ろうと思うんだけど」

ひょいと首を上げた裕美子。つっけんどんに答えた。

「どうぞ、先帰ってください」
「ええー?!」

周りのクリスティンやカーラが驚いて声を上げた。

「ユミちゃん、それはないんじゃない?」
「金曜は一緒に帰る日でしょ?」
「いくら本命彼女だからって、そんな無防備じゃ取られちゃうよ」

ハウルがにやにやしながらカーラに問いかけた。

「カーラ、再アタックしたら?」
「ほ、本当にやっちゃうから・・・」

しかし裕美子はまるで動じない。

「でも、明日の時間決めてないですよ。待ち合わせの場所とかも。・・・アロン君には夜にでも会えるから」
「よ、夜?」
「いや~ん、そうなの?」
「あ、ち、違う!電話、電話です。そんなわけでまだかかりそうだから、先帰っちゃってください。夜、電話します」
「わかった。そいじゃね」
「じゃーな。日曜楽しみにしてるよ」

レソフィックと勇夫も手を上げる。
4人の娘達はバイバイと手を振った。

「ほんとにいいの?追い返しちゃって」

ハウルとカーラが裕美子に振り返った。

「それを言うならハウルさん。勇夫君達だってグループ交際相手なんだから、引き止めてもいいんですよ」

ハウルはちらりと廊下の方を向いたが、もう3人の姿はない。

「日曜会うからいいよ」




夕方。
今日もレソフィックと勇夫が夕食当番である。アロンと裕美子は夕食の呼び出しがかかるのを待っていた。
そのとき、裕美子の携帯に電話がかかってきた。

「もしもし。あ、お父さん?」

裕美子の実家からだった。アロンがとたんに背筋を伸ばす。

「・・・・うん、裕美子は元気ですよ、うん・・」

アロンは緊張して聞き耳を立てていた。
なんだろう。なんだか裕美子の雰囲気が違うように感じる。それは父親からとわかってから、いつものテンションが落ちたような声ではなく、トーンも高くてかわいらしい声で受け答えしているからだ。

「はい、滞りなく・・・うん・・・あ、バレンタインのチョコほしい?・・・・今度作るから、あげるね・・・え?、そう?」

話している裕美子の語り口も普段とは違う。まるいというか、普通の女の子である。
裕美子がアロンの方を微笑しながら見た。

「アロン君も元気よ。・・・ええ、うまくやってますよ。安心して?・・」

しばらくして、アロンは呼ばれることもなく電話は終わった。肩の強張ったアロンに対し、裕美子は電話の後リラックスした雰囲気であった。

「俺も早く裕美子のお父さんなみに一日中気を許してもらえるようにならないとな」
「え?なんですか?それ」
「ちょっと嫉妬したりして」
「な、なんで?」
「だって雰囲気がぜんぜん違うよ。俺にはもっとこう、慎重っていうか身構えているような・・」

そのときアロンの電話が鳴った。2コールでそれは鳴り止んだ。

「レソフィックだ。飯できたみたいだよ。行こう」

アロンは立ち上がって先に廊下を玄関の方へ向かった。
玄関のところで、アロンは横に来た裕美子の肩に手を回そうとした。
すると裕美子はびくっとして肩を上げて緊張した。
ぱっと顔を上げてアロンを見た裕美子。

「あ、も、もしかして、こういうの・・?」
「・・・」
「ごめんなさい。慣れてなくって・・」
「・・・ん、それとは、また違うんだよね。そういう感情が見えるのはむしろよくって、普段のたんたんとしたっていうか・・」

裕美子は口を小さく半開きにしたままアロンを見上げた。この顔はたぶんちょっと困った感じだろうか。
そこへガチャッといきなりドアが開いた。開けたのは勇夫だった。

「飯でき・・おわっ!」

開けてすぐのところにアロンと裕美子が見詰め合って立ってたので勇夫はびっくりした。

「めめめ飯できたから。ああああアロン、カセットコンロのガスあったら、もも持ってきて」

アロンは部屋の中に引き返していった。裕美子はサンダルを履くと勇夫と外に出た。
裕美子は玄関のドアの辺りを見ている感じで勇夫に問いかけた。

「勇夫君。わたし、表情ないですか?」
「え?顔は付いてるぞ。目や鼻や口も」
「それ、使ってますか?」
「もの見えたり、匂い感じたりするんだろ?食べる時だって口使ってるし」
「・・・・・・・・」

裕美子は不思議な生き物を見るように勇夫の方へ顔を上げた。

「珍しいもの見えたり、匂い感じたりしたとき、わたしどんな顔してるんですか?」
「えー?その場にいなきゃわかんねぇよ。でも小泉は顔色変えないんじゃね?」
「・・・そういうことなんですね」
「何してんの?」

アロンがガスカートリッジを持って玄関に戻ってきた。

「あった?じゃ行こうぜ」

3人は勇夫の部屋へ向かった。
階段上がっているとき、勇夫は後ろの裕美子に言った。

「でもよ、小泉に睨まれるとすげー怖いもんがあるぜ」

ここではさすがにがっかりした様子で応答した裕美子だった。

「はぁ・・そうなんですか」


次回「バレンタイン(6):俺には見せる顔」へ続く!

前回のお話「バレンタイン(4):生殺しの儀式」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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コメント 1

TSO

xml_xslさん、bitさん、くぼたんさん、あいか5drrさん、niceありがとうございます。
by TSO (2011-07-31 19:52) 

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