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<牛丼騒動(1):半額券> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!

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「片いなか・ハイスクール」連載第231回
<牛丼騒動(1):半額券>


ハウルの机の周りにはいつもの女の子達が集まっていた。
ふとハウルの机の中からはらりと紙が落ちた。裕美子が拾ってそれを見ると、『本日カフェテリアAメニューは牛丼テラ盛り』とあった。

「カフェに牛丼なんてありましたっけ」

ハウルはその紙をひったくると

「あはは、あるわけないじゃん。誰かのいたずらよ」

と言って紙をくしゃくしゃと丸めた。

「裕美子、いつでも帰れるよ」

後ろからアロンが声を掛けた。横にはレソフィックがいた。

「カーラ。こないだちょっと言った広報の手伝い、いい?」
「今日からだっけ。うん、いくわ。じゃ、あたしはこれでね」
「わたしもそしたら帰ります」
「は~い。また明日ね」
「じゃぁね、カーラ、ユミちゃん」


アロンと2人で廊下を歩く裕美子に、何やらひそひそしている女の子が目に入った。A組の女子のようである。が、この時は特段気にすることもなかった。

表立って見え始めたのはこの辺からだったかもしれない。この後の騒動は水面下でもう始まっていたのだった。


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その日の夕方、アロンの家の呼び鈴がなった。
ピピピピンポーン

「あ、勇夫君だ。わたし出ますね」
「えー、俺の家なのになんで裕美子が?」

裕美子はアロンの悪友2人の独特の呼び鈴パターンをもう覚えてしまっていた。アロンの幼馴染にすっかり気を許している裕美子は、同棲という高校生らしからぬ状況をすっかり忘れているようだ。ガチャっとドアを開けると、にこやかな顔で来客を迎えた。

「いらっしゃい、勇夫君」
「わ!びっくりした。小泉、あんまり出てくるとばれちゃうよ」
「勇夫君ってわかったから出たんです」
「いつも俺一人とは限らないし、気を付けたほうがいいよ」
「そうですね。ありがとう。あがる?」
「なんか奥さんみたいだね。うん。どうでもいい用事なんだけどさ」

奥さんみたいといわれたら、裕美子はメガネの下から見える頬を赤く染めた。

「よ、勇夫」

部屋に上がってきた勇夫は手に小さな紙片を何枚か持っていた。

「アロン、牛丼屋の半額チケットが手に入ったぞ。わけてやるよ」
「サンキュー!え、4枚もくれんの?すげーじゃん」
「小泉の分もって思ってさ」

お茶を持って裕美子がやってきた。お茶を配りながら裕美子が聞いた。

「アロン君、牛丼屋さんよく行くの?」

意外そうな顔をして湯飲みを受け取りながら勇夫が聞き返した。

「あれ?行ったことないの?俺らとは出かけたついでによく行ったよな」
「女の子とつるんで行くようなところじゃないだろ」

お茶を配り終えた裕美子も、そのまま一緒に座り込んで話の輪に加わった。

「ふうん。でも食べたことないから食べてみたいわ」
「えー?そう?」
「だっておいしいから何度もいったんでしょう?」
「いっぺん誰かと食いにってみたら?」

勇夫がお茶をすすりながら裕美子に言う。

「うん・・でも確かに女の子だけじゃ入りづらいわね」
「ハウルなら平気だよ、きっと」
「・・・そうね」

いかにも牛丼屋でかっ喰らっていそうなシーンが浮かんで、みんなははははと笑った。

「アロン、連れてってやりゃいいじゃん」
「でもデートの帰りに牛丼ってねえ・・」
「気心知れてる仲なら『おい、帰りに牛丼食って帰ろうぜ』なんて誘われてもへんじゃないだろ?」

勇夫は裕美子にいかにも誘ってるふうな仕草も加えて言った。

「べつに構いませんよ」
にこっとアロンに向かって笑って答える裕美子。

「あ・・っそう。じゃ、今度行ってみようか」
「じゃあ今夜の晩飯は牛丼でいい?」

勇夫が妙にうれしそうにして言った。

「もしかして晩飯当番を楽しようと?」
「たまにゃあいいじゃん!半額だし」

アロンは財布をごそごそと覗く。月末でだいぶさびしい状態ではあったが小銭はたくさんあった。横で裕美子も覗いている。

「半額なら・・いいか」
「奢ってあげましょうか?アロン君。連れてってくれるんだし」

というわけで、この日の夕食は牛丼に決まった。
この片田舎では、町外れの国道のバイパスまで行ったところに牛丼屋があった。場所柄車のドライバー目当ての店である。アロン、勇夫、レソフィックに裕美子は半額券を握り締めてバイクで牛丼屋へ行った。

「いっただっきまーす」
「すごい・・それがテラ盛り?」
「そうそう。食い盛りはこれでも足りんくらいだよ」

メガの百万倍のテラである。メガ盛りの百万倍というわけではないが、メタボアラームな人には絶対お勧めできない食い物だ。しかし若い男どもは恐れることなくばくばくと口に放り込んで勢いよく咀嚼している。
裕美子もぱくっと食べた。

「うん、おいしい」
「だろ?ホラやっぱ女の子でもうまいんだ」
「これどうやって作るのかしら。スキヤキとは味違いますよね」
「秘伝のタレなんだって。企業秘密だからどの店も明かさないんだってよ」
「男の人っていいですね、こういうお店に気兼ねなく入れて」
「でもハウルはやっぱり気兼ねなく入ってるみたいだよ」
「レソフィック、まさか聞いてみたのか?」
「だってあいつも半額券持ってたから。たぶん行ってるよ」
「わはは、やっぱり?」
「あいつらしいなあ」


次回「牛丼騒動(2):いやがらせ」へ続く!

前回のお話「<ダーニャの保健体育(2):裕美子の対策>」
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コメント 1

TSO

bitさん、xml_xslさん、あいか5drrさん、くま・てーとくさん、綾小路曽根斗麿さん、翡翠さん、toramanさん、niceありがとうございます。
by TSO (2011-09-14 23:04) 

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