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<牛丼騒動(4):ハウル反撃> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!

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「片いなか・ハイスクール」連載第234回
<牛丼騒動(4):ハウル反撃>


狭いベッドで一晩一緒に寝たアロンと裕美子。だというのにこれほどドキドキのない添い寝も今までなかった。
ずっと触れていた。気付いてはなでたりしていた。いつもなら悶々とした気持ちを抑えるのに大変だというのに、この晩はこれっぽっちもなかった。それほどまでに何かにかじりついてでも不安の暗闇に引きずり込まれないようとしている裕美子を助けようとしていた。確かに、裕美子はどこかに落ちそうだったのだ。俺が、捉まえていないと。


目覚ましのアラームで起きた裕美子は、寝起きの腫れぼったい顔を見られないよう気を配るゆとりはあった。でもそれは、アロンの胸に顔を押し付けて、まるで涙を見せないようにするかのようだった。

「一晩、ありがとう。おかげでよく眠れました」

『いや、寝てないだろう?しょっちゅう目を覚ましていただろ』

「でも、アロン君、寝れなかったね。わたしのせいで」
「今夜は寝られるさ。・・心配事、解決させてな」

一際ぎゅうっとしがみついてきた。そして何度か深く息をすると、走るようにベッドを飛び出していった。



いつもは時間をずらして別々に登校するのだが、今日は家を出るときから一緒に裕美子と学校へ行った。

「ハウルさん・・・心配です・・」
「まずは裕美子が悪気があってあんな話したんじゃないことを伝えようよ。俺も一緒にいくから」
「ありがとう。でもアロン君の前ではハウルさんのことだから『もうなんとも思ってないわよ』とか言うでしょう。だけど心の中では許してくれないかも・・」
「そんな表と裏の顔使い分けるかあ?」
「女ってそういうところがあるから・・」
「それじゃなんて言われても信用できないじゃん。けどそれなら大丈夫、ハウルは女じゃないから」

ずっと道路ばかり見て歩いていた裕美子が、ひょこっと顔を上げた。

「そんなこと目の前で言ったらハウルさんにひっぱたかれますよ」

それにはにやりとした顔を返してやった。

「へへ。いい意味でハウルはそういうところが男っぽいのさ。きっとさばさばしてるよ」



一方のハウルは学校の玄関に着いたところだった。それに気付いたA組の女子が2人。

「あ、牛丼女王だよ。ね、ぶつかってやろうか」
「やっちゃえ、やっちゃえ」


面白そうにくすくす笑って廊下で待ち構えると、一人がすれ違うふりをしてぶつかりに行った。
ぶつけるべく腕を少し外へ出したところ、その子は腕どころか肩までぶつかったあげく、壁まで跳ね返されて尻もちをつくように倒れた。

「??!」

何があったのかわからない。

「あ~ら、ごめんなさい。大丈夫?」

倒れた子にハウルが手を差し伸べた。

「す、すみません」

その子がハウルの手を取ると、ものすごい勢いでぐいっと引っ張られた。そして引っ張られて立ち上がるどころか、今度は廊下の反対側まで飛ばされて壁にぶつかってしまった。

「ごめんねー、今力余っちゃってんの」

A組の2人は背筋が凍りついた。
『わざとやってる!』
『気付いてる!』

そこにぱたぱたと慌てたような足音が近付いてきた。昨日は休んでいたクリスティンだ。

「ハウル~、待ってってば~。足速すぎるわよ~。病み上がりなんだから労わってよ~」

倒れている一人を助けに来たもう一人が手を取り合って固まっているところに着くと、にこやかな顔で声を掛けた。

「おはようございます。・・ハウル何かしました?なんか今日機嫌悪そうだから、気を付けてくださいね」

そしてぱたぱたと追いかけていった。




A組の教室では一人の女子を中心に輪ができているところがあった。

「昨日、C組のイザベルさんが救急車で運ばれたでしょ。あれハウルに蹴っ飛ばされたせいで脳に障害がおきて、植物人間になっちゃったんだって!」
「な、なにそれ。なんで蹴られたの?」
「私達の牛丼の話聞いて、教室戻ったらそれでからかったんだって。そしたら恐竜のように怒り出して、それで助走つけて蹴ってきたんだって」
「え!黙ってる奴じゃないとは思ったけど、本当に暴力ふるうの?あの人。それも女の子にもそんな力いっぱいに・・」

輪になってるみんなが蒼白になりはじめた。

「だ、だからハウルは危ないからって言ったのよ」
「あんたが牛丼ネタもってきたんじゃない!」
「だって何かつけ入るもの見つけたら教えろってみんなに言ったのはそっちじゃ・・」
「わ、私はそんなふうには言ってないわよ。面白いことあったらっていったのよ」

そこにガラララっばっしゃーんと勢いよすぎにドアが開いた。

「おおぅっと、クラス間違えちゃった!」

A組の女子ならずそこにいた男子一同も振り向いた。
ちょっと遠くからぱたぱたという足音とともに気の抜けた声が近づいてくる。

「ちょっと、しらじらしいわよ~、ハウル~」

輪になってる女子の顔が群青色にまで青くなった。その集団にハウルのビーム砲のような視線が突き刺さる。

「あら?あなたこないだ見かけなかったっけ?・・たしか牛丼屋の駐車場で」

女の子の一人が「ひいっ!」と声を出して引きつった。さっきのネタを持ってきたという子だ。
そしてハウルはにやりとすると

「実は、あたな食べにきてたんじゃない?それか持ち帰りのお弁当?」

女の子の輪がわあっと散り散りになった。取り残された真ん中で椅子に座っていた子が、慌てて気付いたように机の上の紙を掴んだ。ダッシュしてきたハウルがその紙を奪取する。
その紙は予想通り「本日カフェテリア・・」のいたずらチラシの新バージョン。

「これどうせあたしにくれるものでしょうから、配る手間かかんないよう今もらっといてあげる」

口元に笑みを浮かべ、目も笑っているが、そのこめかみにぷちぷち音を立てて切れつつある血管を浮かび上がらせた顔をその子に近付けた。と、そこに

「ハウル!だめえぇぇ!!」

後ろからクリスティンが走ってきて、両の手を突き出してハウルを思いっきり突き飛ばした。
椅子に座っていた子を前かがみになって腰を折って睨みつけていただけに、つんのめるように突き飛ばされたハウルは額の方から地面へ落下し、2,3回床でバウンドすると黒板の下の壁に頭を下にして引っかかるように止まった。
クリスティンがぺこぺこといつものように謝り始めた。

「ごめんなさい、脅かして本当にごめんなさい。今日はハウルだいぶ虫の居所が悪いみたいで、本気で止めないとなんか血飛沫が飛びそうっていうか、ブレーキが壊れたトレーラーが坂道を下ってて急カーブに差し掛かってるみたいっていうか、燃料がポタポタたれてる飛行機で山火事のところを低空飛行しているみたいっていうか、とにかく危ないので関わんないように気を付けて下さい!」

そう言ってひっ転がっているハウルの襟首を掴むと、ずるずるとA組教室から引きずり出して行った。ただ出る直前、ドア付近で唖然として硬直しているA組女子の集団に、

「でもハウル、何もないところで暴れるのは滅多にないから、もし何か心当たりがあるようでしたら、もうやめておいた方がいいですよ?私いないときは止められませんので」

と何の邪念も見られないにっこりした顔で言った。
A組女子に恐怖が走る。
『ハウルを一発で止めた萌えのクリスティンってのも、もしかして危険人物?』


次回「牛丼騒動(5):ワンダーウーマン」へ続く!

前回のお話「牛丼騒動(3):精神ダメージ」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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TSO

xml_xslさん、(。・_・。)2kさん、あいか5drrさん、 綾小路曽根斗麿さん、??さん、toramanさん、ぼんぼちぼちぼちさん、niceありがとうございます。
by TSO (2011-09-23 23:41) 

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