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<過去との決別(5):自殺の真相> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!

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「片いなか・ハイスクール」連載第241回
<過去との決別(5):自殺の真相>


3年前。

中学1年の終わり頃、裕美子は同級の男子に呼ばれた。その子のことは隣の組の男子ということくらいしか知らなかった。

「えっと、どこまで行くの?」
「うん・・屋上」

『・・・これ、もしかして?』

何だか顔を赤らめて恥ずかしげにしている態度から、当たり障りない普通の用事という雰囲気ではない。
告白を受けようとしているのではと気付いた。
しかし特段興味を持っている子でもなかったし、このときの裕美子は恋愛にさほど興味をもっていなかった。憧れの人がいるわけでもなかったし、そもそもちゃんとした恋をするにはまだ未熟すぎた。

風のやや強い日だった。
屋上へ出ると、そこで予想通りの問いかけが行われた。

「君、付き合っている人いないよね。・・僕と、付き合ってくれないか?・・す・・好き・・なんだ」

中1の裕美子は自由闊達な普通の女の子で、頭もよくアクティブで白黒はっきりした方だったから、迷わずはっきり断わろうと思った。

「ごめんね。私、君のことあんまりよく知らないし、いま特に好意も・・・。それに恋愛より優先したいことがたくさんあるし、申し訳ないけど・・」

うつむいたまま答えた。

「遠慮する。ごめんね」

その男子はびっくりした顔をした。

「こ、断るのか?もしかしてレイとの関係を心配してる?」
「サクラギさん?あぁ、あの人の彼氏?」

レイとは、裕美子と同じクラスの女子「レイ・サクラギ」だった。歳よりも大人っぽく見え、どちらかと言うと派手目な方で美人でもあったから、男子の人気は高かった。

『サクラギさんと付き合っている人?そういえばレイを呼びに来る姿を何度か見たかもしれない。そんな人がなぜ私に興味を持ったのだろう』

「どうして?仲よさそうだったでしょ?」
「俺、ちゃんとあいつとの関係も整理してきたんだよ」
「ど、どうして?」
「君の方が好きだからじゃないか」

今まで何の接点もなかったのに、レイから乗り換えようというほどのきっかけは何だったのだろうか。
レイが彼氏との仲が悪くなったとの話も聞いたことない。前から慕われていたのだろうか?少なくとも小学校は違う学校だった。

「・・・ごめん。そうまでしたんだ・・。でもなぜ私を?どこかで会ったことあったっけ?」
「え、別に、今まで会って話したこととかもなかったけど・・・。でも君、頭いいっていうし、こないだの体育祭で人気もあって、男子の間でも一目置かれるようになったんだよ」

秋の終わりごろ行われた体育祭のことだ。実行委員の中に入って、1年生ながら進行係の一員となり、運動場を縦横走り回ってテキパキと指示を出していた裕美子はけっこう目立ったのだ。中でも一番注目が集まったのは、クラス全体リレーの審判を巡ってだった。
このリレーでほぼ同時にゴールした1組と2組だったが、生徒達の目には明らかに2組が速かった。しかし審判の先生は1組先着と間違った判定を下したのだ。選抜リレーと違って配点がさほど高くない競技だったので、先生はさっさと進めようと押し切ろうとしたが、そこまで僅差の1組と2組だったので、この先何かあれば生徒の方が収まりそうにないと見た裕美子は、その判定に食ってかかって、観戦客が撮っていたビデオシーンを使って判定を覆したのだ。
背が小さくて、メガネをかけ、くるくる巻いたような髪の毛の裕美子は、色気はなかったがよく見るとなかなか可愛い系で、それまで頭のいい人の印象が強かったところに活発な印象も加わり、男子の間で人気が出たのだ。

「君知ってる?男子の人気投票で君けっこう上位にいるんだぜ。俺と付き合ってくれたら、好きなアクセサリープレゼントしてあげるよ」

『あれ、本当なんだ』

人気投票の話は裕美子も漏れ聞いていた。
こないだ男子の間で秘密の女子人気投票があったのだ。その中で、体育祭で注目が集まった裕美子が上位に入ったらしいとの噂だった。

裕美子はなんとなく軽薄さを感じた。
『表面的な噂だけで決めたんだ』

「だからって、サクラギさんに悪いよ・・仲、悪くなったわけじゃないんでしょう?」
「そんなことないよ!それにあいつ、けっこう女王様気取りでいるし、少し目を覚ましてやった方がいいんだよ」

やっぱり裕美子はこの男子に興味をもてなかった。
このまま付き合ったらレイとの関係が険悪になるかもということを考える以前の問題だった。

「でも、ごめんなさい、さっきも言った通り私、そういうことまだしたくなくって。本当にごめんね」

裕美子はそこから去ろうとした。するとガッと肩をつかまれた。

「・・・なんだよ、俺がこんなに思っているのに。すごい強く意識してるのに!」

目線をそらし、やや下向きになって裕美子は申し訳なさそうに答えた。

「本当ごめん。私、君のことよく知らないし・・」
「今知らなくたってこれから付き合って知ればいいじゃんか。なにも全部断らなくたっていいだろ」
「でも私、恋愛に今興味ないし、他に時間を使いたい」

その男子は掴んでいた裕美子の肩を乱暴に突き放した。




放課後、その男子は裕美子を待ち構えていた。

「どうしてくれんだよ。もうレイとの仲も今さら戻せないぞ」
「・・サクラギさんに好意が残ってるなら、縁り戻してくれるかもしれないよ」
「レイだけじゃない、みんな知ってるんだぞ!俺がお前のところ行くこと、みんなが!」
「でも、相手の気持ちもあることだから、うまくいかないことだってあるよ」
「なんでだよ、くっそー!」

そいつは強制的に裕美子を奪いにいった。

「いやだ、はなして!」

裕美子は引き裂くようにその手を振りほどいた。

「昼のときもそうだけど、思い通りにいかないからって暴力やめてよ!中身子供なんじゃない?!」
「なんだと!」

そいつは裕美子に覆いかぶさり、押し倒した。
馬乗りになり、胸元の服を掴んだ。小さな体の裕美子はほとんど抵抗のしようがなかった。

「俺と付き合うって言え!」
「いやだ!」

掴んでいた服を左右に引っ張った。ボタンが飛んだ。
ようやく成長を始めたばかりという程度の胸元がはだけた。

「きゃああああ!いやだ!」
「俺と付き合うって言え!そしたらやめてやる!」
「何言ってるの、あなた!変だよ!」
「なんだよ!ちきしょう、もっとひん剥いてやるぞ!」

乱暴に服を引っ張られたところで、裕美子が振り回した握りこぶしがそいつの頬骨の辺りに当たった。その衝撃で手が緩んだ隙に裕美子はそいつを引き剥がした。

「いってえ!くそ、あざになったぞ!こんなの皆になんて言えばいいんだ!」

上半身を起こして尻餅をついたような状態の裕美子に、そいつはもう一度覆い被さろうとした。
裕美子は足を出した。それはちょうどそいつの顔にカウンターとなって入った。かなりの勢いで裕美子に迫っただけにカウンターのダメージは大きかった。

「ぐえっ!!」

唇が切れて血が出ていた。片方の手でカウンターの当たった顔を押さえ、もう片方の手と膝でうつ伏せ立ちをしているそいつから、這うように後ずさりしながら息を荒げた裕美子が、そのときできる限りの怒りを込めて言い放った。

「はあ、はあ・・・分別もつかない、自制もできない、人の考えを理解しないで自分の考えだけ通そうとする。そもそもの性格に願い下げよ!!」
「くうぅ!!・・・わあああぁあ!!」

そいつは裕美子を見ることなく、叫びながらその場を走り去っていった。



その数時間後、そいつは自宅の自室でベルトを使って首を吊ったのだ。
遺書のようなのはなく、部屋は暴れた跡があり、衝動的に行ったと思われた。



そいつが裕美子のところへ行く直前、そいつは急にレイを遠ざけるような行動を仲間の男子達と取っていた。あからさまにレイを非難し、そして裕美子に告白しようとしているとクラスで宣言していた。だからそいつが裕美子のところへ行ったことは、そいつのクラスでは知れ渡っていた。

その結果が自殺。
そいつのクラス全員が裕美子を非難した。元カノのレイが先頭に立って扇動していた。
争点はそいつがアザを負うほどに顔を怪我していたことだ。それは裕美子が負わせたことを裕美子自身認めていた。しかしそれがそいつに襲われた自己防衛の結果だったということは聞き入れられなかった。
物理的、精神的ないじめも繰り返された。裕美子の家へそいつの家族からの攻撃もあった。裕美子の友達も避けるようになった。

裕美子は完全に孤立してしまった。

だが裕美子のクラスの女性担任は理解者だった。それが唯一の救いだった。



裕美子は中学2年を1学期の途中までなんとか通った。自由闊達でアクティブだった裕美子はすっかり潜め、目立つ行動を避け、人を避け、感情を見せることもない、そういう人間に変わった。人が信頼できなくなったのだ。


2年次の後半は通うことを完全にあきらめ、その中学を退学、通信課程の中学へ移った。

頭のいい裕美子は中3の1学期のうちに中3の単位を取得し終えてしまった。
卒業することはできた。式典に出ることを嫌った裕美子は、卒業証書授与を通信課程の中学の校長室で、校長と中1の時の女性担任と裕美子の家族という出席者の中、ひっそりと行ったのだった。


次回「過去との決別(6):捜索活動」へ続く!

前回のお話「過去との決別(4):事件との関係」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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コメント 1

TSO

あいか5drrさん、やまさん、翡翠さん、bitさん、xml_xslさん、niceありがとうございます。
by TSO (2011-12-10 20:00) 

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