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<過去との決別(10):もう逃げない!もう負けない!> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第246回
<過去との決別(10):もう逃げない!もう負けない!>


Cクラス全員が担任も含め1.5日欠席するという騒動が終わって翌日。裕美子は学校に復帰した。

A組の教室から外を眺めていたレイは、今日はC組が出てきていることに気付いていた。そして裕美子が登校してきたのを見つけた。

「しぶといわね。でも気を休める暇なんか渡さないからね」

レイはA組にできた彼女の親派の2人を誘った。

「小泉が登校してきたわ。あれだけ学校に迷惑かけて、どんな面して来たんだろうね。見に行ってみない?」

さっそく廊下で裕美子を待ち構えた。



やってきた裕美子をにやついた顔で迎えると、レイが憎ったらしく言った。

「私の彼を殺しておいて、自分はのうのうと恋愛をするつもり?!それどころか何?昨日は。クラスみんなに迷惑かけて。C組全員無断欠席よ。ダム先生の授業は自習になって1年全クラスが迷惑被るし。誰のせいか知ってる?」

裕美子は立ち止まると、レイをしっかりと見据えた。

「レイ。ここはもうあの中学じゃないのよ。わたしも周りもあの時とは違う。あなたはここで何をしようとしているの?」

レイは冷たい笑いを口元に見せて横目で見ながら言った。

「別に?。あんたがまた勝手に墜ちていく様をただ見ているだけよ」

無表情なままに少し間を開けると、裕美子が

「無駄よ」

と答えた。

「いい加減、絡むのやめて。かえって死んだ彼が浮かばれないわよ」

その毅然とした態度にレイはいささか驚きを隠せなかった。

「な、なに、ずいぶん強気じゃない。あんたいつからそんなこと言える身分になったの?」

これも裕美子は無表情なまま少し間を空け、もう2人の方もちらっと見た。その子たちはビクッとした。
裕美子はついっと向きを変えて、構わず教室へ向かった。





次の休み時間。レイは再びA組の子を誘ったが、今度はためらわれた。

「ご、ごめんなさい。そういえば小泉さんてハウルさんと仲よかったのよね。私ハウルさん苦手だから・・」
「ハウル?誰?その人」
「ごめん、私トイレ!」

逃げられてしまったので、レイはやむなく一人で行った。


廊下で待ち構えていると、裕美子は今度はアロンと一緒だった。
しかしレイはアロンがいることなんか構うことなく罵った。

「人殺しさん、次はその人がターゲット?」

アロンは相手が女子であることも忘れてつかみかかりそうになった。

「てんめぇ~!」

慌てて裕美子が止めに入った。

「構うのよそう、そんな人。怪我でもしたら割に合わないよ」

そう言ってそっけなく立ち去ろうとした。
裕美子のその態度に頭に来たレイはアロンに言ってやることにした。

「あんた知ってる?小泉が何者か!」

アロンがレイを見る。食いついてると見たレイは冷たい声でゆっくり切り出した。

「そいつはね、人を一人、死に追いやってるんだよ。容赦なく冷たい言葉で突き放して、人の心をズタズタにするような事を平気で言えるような奴なんだよ」

レイは冷たい笑い顔を作ってさらに続けた。

「精神的ダメージを受けた人にその人なにしたと思う?足蹴にして更に痛めつけたんだよ、血が出るほどに。・・立ち直れないほど身も心もボロボロにされた人がどうなると思う?」

一層レイは冷酷な薄笑いを浮かべて言った。

「その人、死んじゃったんだよ」

言ってることもともかく、その表情や言い方まであまりの冷酷さにアロンは我慢できなかった。

「どっちが人の心をズタズタにしてきたと思ってるんだ!」

また掴みかかりそうになるのを裕美子が必死に止めた。

「離せ、裕美子!一発言ってやらねえとこいつには分からねえ」

アロンが廊下で声を上げているのを聞いてC組から人がぞろぞろと教室から出てきた。そして3人を取り囲む。
ぐるりと取り巻くC組のみんなをレイが見回した。

「何、こいつら?!」
「あたしらは知ってるよ。裕美子の過去に何があったか。あんたのことも」

いつものようにハウルがけんかを買って出た。

「何を知ってるですって?」

ハウルはレイの前に一歩出てきた。

「あんたから裕美子に寝返ろうとした彼氏とやらが裕美子に振られて死んだんでしょう?」
「!!」

レイはひどく驚いて半歩引き下がった。

「しゃ、しゃべったの?知られたくないはずの過去を、こんな大勢に?」

裕美子は相変わらず無表情だった。

「何言ったかしらないけど、真に受けてるのみんな。どうせ、つ、都合のいい解釈した説明したんでしょ!」

裕美子は昔を思い出すようにちょっと遠くを見ながら言った。

「わたしはあの日しかあの人と話したことない。今思えば彼もわたしも弱かったわ」

アロンもその男への思いを言う。

「そいつは生をつなぎとめておく力が足りなかったんだ。たとえ自分の愚かな行動のせいで怪我を負うことになったとしても、その結果を受け入れる度量がなかったんだろう?もしその後誰かに相談すれば、いや、相談なんかでなくても、誰かに会って声をかけられただけでも、その不足を補って止められたかもしれない。でも一人で思い詰めて逝ってしまったんだろ?これはそいつの寿命だったんだ」

レイがだじろぐ。

『なに、こいつら。本当にあの事件を知ってるの?』

シャノンがレイに聞いた。

「それで振られた彼氏にあなた何してあげたの?こいずみが断った後、教室で会ってるんでしょ?」
「うっ!」

レイは言葉に詰まった。
すると裕美子は急に厳しい顔をすると、レイに向って言った。

「・・わたし、だれにも言ったことないけど、わたしは知っている。レイ!あなた彼がわたしに告白したときも、乱暴したときも、見ていたでしょう。影からこっそり覗いていたのでしょう?」
「!!!」

レイが無言で驚く。
恋愛教師ダーニャがやや息を飲むような声で震えながら言った。
「そ、それじゃあ、あなた声を掛けられた・・止められたかもしれない。そのコの生をつなぎとめられた唯一のカギだった」

それを聞いた美女は怒りを露わにしたて声を荒げた。

「そんな人が裕美子を何年も苦しめてきたの?文句言ってくる資格なんかあんたにないじゃない!」

レイは一歩下がり、慌て怯えるように裕美子に向って言った。

「な、なにを証拠にそんなこと?!」
「証拠なんてないわ。否定するならすればいい。でも真実はひとつ。あなたの心は真実を知っている」
「あたしは裕美子を信じるわ」
「私も」
「あたしも」

C組の女子達がレイに詰め寄る。そしてハウルが極めつけた。

「今さらどっちでもいい。そんなことより、誰かにぶっ刺されて死んだわけでもない、自分で命を絶った人のために、いつまでもあたしの友達に付きまとわないでくれる?!そんな思い出話、そいつの墓に行ってやってきなさい!」

カーラも追随した。

「あたし達は裕美子の友達。今も、これからも。・・・揺るがないわよ」
「冗談じゃないわ、何であたしが寄ってたかってそんなこと言われなきゃいけないの!」

レイは悔しそうな顔をしてみんなを睨み返したたが、それ以上は何も言わず退散した。


その後、レイは校長に呼ばれ、しばらくのち、レイの両親も呼ばれた。



その日の最後の授業はすこし早く終わり、入れ替わって校長がC組にやってきた。ドジ担任も一緒だ。

「みんな、昨日はご苦労だったね。行方不明の友達を探し、人の人生を、人の命を助けるという貴重な体験をしたんだって?。ドジ担任君の指導のもとの課外授業だ、出席扱いになってるから安心したまえ」
「別に出席日数や、単位に困ってませんがな」

と勇夫があっさりと言う。

「わしが困るんじゃ、ひとクラス行方不明とあっては。ドジ担任君に連絡は受けておったから行方不明ってわけではなかったがの。小泉君、この3日間、つらかったろうが、わかっただろう?人を傷つけるのも人だが、救うのも人。このクラスは本当にいい仲間じゃないか」

裕美子は立ち上がると

「ご迷惑おかけして、すみませんでした」

と頭を下げた。

「今度はまた君がみんなを助けてあげなさい」
「はい」
「レイはどうなったんですか?」

イザベルが聞いた。

「1週間自宅謹慎じゃ。復帰してくるかはわからん。だが彼女もまた大人から見れば救ってやらねばならん一人なのじゃ」


しかしレイは再び分校に来ることはなかった。退学し、行方はわからない。



裕美子の席の周りにみんなは集まっていた。レイが退学したことで、この事件も終わりを告げそうだ。
裕美子は席に座って手を組みながら静かに言った。

「結局レイも彼を止められなかったでしょう。たぶんあのときのレイは彼の心を奪ったわたしへの憎悪と、わたしが彼を振ったことで彼に対し『いい気味』という気持ちとで、もし彼に会ったとしてもやさしい言葉をかけ得たとは思えない。それに彼に会ったら道連れにされたかもしれない。わたしと別れたその後の彼の足跡では、彼はわたしの家に来ている。彼の所持品には刃物があったの。自殺道具の一つと鑑定されたけど、わたしを見つけて殺すつもりだったんだろうと思っている。それもわたしが人を避けたくなった心理の一つ」

アロンはいてもられなくなり裕美子を抱きしめた。

「苦しかったろうに。少しずつ癒そう、君の心を。俺がそばにいる」
「ありがとう。でも、わたしはC組のみんなに受け入れてもらえたことで、アロン君に彼女として認めてもらえたことで、今回みんなに助けてもらえたことで、十分癒されてます。だから安心してください」

裕美子は周りに集まったC組のみんなに顔を上げた。今日はなぜかメガネをしてなく、秘蔵のコンタクトだった。

「みんな、ありがとう」

みんなはにっこりと微笑んで答えた。

裕美子はアロンを引き寄せると、その胸深く顔を埋めて静かに言った。

「アロン君、ありがとう」


次回「過去との決別(11):新学期に向けて」へ続く!

前回のお話「過去との決別(9):かつての姿」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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コメント 1

TSO

翡翠さん、ケンケン@さん、kawasemiさん、たねさん、(。・_・。)2kさん、あいか5drrさん、xml_xslさん、niceありがとうございます。
by TSO (2012-01-09 23:10) 

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