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<第2部:第3章 オリエンテーリング(1):班分け> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第254回
<第2部:第3章 オリエンテーリング(1):班分け>


教壇ではドジ担任が仁王立ちして説明していた。

「来週はクスス山オリエンテーリングだ。とは言っても、クスス山でやるのは今年が初めてらしいし、そもそも俺自身がこの学校含めて初めてだから、何もアドバイスする事はできないんだが、とにかく大変らしいって事だけは聞いてる」
「先生は当日何してくれんの?」
「俺は定時連絡を受けるだけだ。何も手助けできない。何かあっても生徒みんなで解決するんだ」
「大怪我とかしたらどうすんだよ」
「そういうときはさすがに助けに行くよ。救急車とかちゃんと待機してるそうだし」

ザワザワとクラスがざわめいた。

「それで、今からこのクラスを9人ずつの2つの班に分ける。当日は俺らC組しか現地入りしないから、この2つの班で対抗する感じになる。早く完走した方が勝ちってことだな」
「勝ったら何くれるんだ?祝賀パーティー開いて食い放題とか?」

こういうみみっちい発想はウォルトの専売特許である。

「バカヤロウ、名誉だ名誉!」
「ちぇ、やる気でねえ」

ウォルトは机につっぷしてしまった。
ドジ担任は段ボール箱を取り出した。

「班はくじで決めよう」
「またくじかよ」
「今度はズルさせないからな」

ドジ担任がアロン達の方を見て言った。

「何のことだ?ズルなんかしてねーよ」
「そうだそうだ」

と勇夫も続く。
ドジ担任は段ボール箱を頭の上まで持ち上げてガサガサ振ると、前の方の席から順々に箱の中のカードを取らせた。

『アロン君と一緒の班になりたいな・・』

裕美子は心の中で祈った。先に引いたのは裕美子だ。A班と出た。続いて横のアロンが引いた。

「B班か」

アロンがカードを見て言った。裕美子はすごいがっかりした。

『ああ・・うまくいかない・・もっとこの人のこと知りたいのに・・・』

一方アロンの友人達は・・

「俺と勇夫はA班か。アロンだけ分かれちゃったな」
「いつも一緒なんだし、せいせいするわ」
「へ、困っても助けてやらねえぞ」

『えっ!あの人達と一緒の班?!』

裕美子はレソフィックを見てぎょっとした。この時裕美子は、真っ先に遠慮なく担任の先生を「ドジ担任」と呼び捨てたことからレソフィックにいい印象をもってなかったのだ。

『どうしよう・・もたついたらいじめられちゃうかも・・・』

「おーし、それじゃ班に分かれてくれ。係決めなきゃだから。A班は廊下側、B班は窓側に」

アロンは立ち上がると。勇夫やレソフィックとハイタッチして場所を入れ替わるように窓の方へ行った。裕美子はちょっとつまらなそうにそれを見届けると、廊下側の方に移動した。




A班のところにはハウルがいた。手を挙げてこっちこっちと呼んでいる。ハウルのところにはシャノンもいた。裕美子はちょっと気持ちが軽くなった。

『知ってる人がいる・・なんて心強いんだろう』

そこへ急にヌオッと大きな影で包まれたのでビックリした。見上げるとそれはクラス最高身長のキャリーだった。威圧感に裕美子は引いてしまったが、横では自分より小さいシャノンが首が折れそうなほど上を向いて留まっていた。

「あなた何月生まれ?」
「あたし?早生まれの3月」

・・・・・

みんなが同じ事を思ったに違いない。

「1年も早く生まれたのに、どうやったらこれだけ差がつくのかしら」

シャノンが不思議そうにキャリーの足や体を触った。もうこの差は1年どころかどうやっても縮まりそうにない。

「女子は君ら4人かい?」

中くらいの背丈のアジア系の男の人が声をかけてきた。

「僕はチャン・リーウェイ、よろしく。この後係決めなきゃみたいだから、みんな軽く自己紹介しようか。名前と、趣味とか得意なもの」

チャンという人が仕切ってA班は動き始めた。

「ミシェル・グレイスだ。テニスをやってる。部活でもテニス部に入るつもりだよ」
「天月勇夫。キャンプとかが趣味だ。あと武道をちょいとやってる」
「レソフィック・ルザルトだ。勇夫とは幼なじみでね、趣味のキャンプや武道やってるのはこいつと同じだよ。俺こんな子供じゃないけど。こいつ迷子にならないよう見張らないとだぜ」
「てめ!子供って誰のことだ!」

『また人を誹謗中傷してる・・』

裕美子のレソフィック評価がまた下がった。

「パウロ・サンチェス。俺は小さい頃からサッカー一筋でやってきた。ここでもサッカー部に入るよ」

女子に順番が回った。

「はあい、あたしはハウル・レリコール。元気が取り柄でーす!」
「キャリー・バルモア。もうみんな知ってるとおりバスケ一直線よ」
「シャノン・レイベンよ。もうみんな知ってるとおり私が一番おねーさんだから」

・・・・

たぶんみんな同じ事を思ったと思う。
最後が裕美子になった。みんながこっちを見ているのに気付いて緊張した。

「わ、わ、わたしは・・小泉裕美子・・です。・・・・目が・・悪いです・・おいてかれないよう、頑張ります・・」

幸いレソフィックからも突っ込みはなかった。

「一回りした?みんなよろしく。運動部系が多いみたいだね。こりゃ僕たちの班、有利かな。よし、絶対勝とう!」

チャンという人は闘志に燃えているようだ。確かにみんなスポーツをやってる人達ばかり。シャノンと裕美子だけが例外で、しかも体格的にもハンデがあるように見える。体力がついていけるか心配だった。



オリエンテーリングのしおりが配られた。

「係り決めだけど、リーダー、副リーダー、通信、救護、記録、予備資材運搬ってのがある。君、ちょっと黒板に書いてくれる?」

裕美子が指されたのでびっくりした。そそくさと立つと、係りを書き連ねた。

「まずはリーダーだけど・・」
「さっきから仕切ってるけど、そのままお前やったら?」

パウロが言った。

「他にいなけりゃやるよ。構わないかい?」

特段誰も文句は言わなかった。

「じゃあやらせてもらうよ。よくやってるんだこういう事は」

なるほど、いかにも慣れてる感じだ。

「次は副リーダー。こんなオリエンテーリングとか野外活動になれてる人がいいな。天月君、アウトドア得意なんだっけ?」
「勇夫でいいよ。俺の知識を借りたいって?へへん」
「いやそりゃやばいよ。そいつは生き残れるかもしれないけど、他の人には無理なアドバイスしか出てこねえよ」

またまたレソフィックが勇夫にダメ出しを入れた。

『どうして人の悪口ばっかり言うのかしら』

ますます裕美子のレソフィック評価が下がっていく。

「なんで俺のアドバイスはみんなには無理なんだよ」
「お前の基準でしか見ないからだろ。女子もいるのに無理無理」
「ガルルルル!」
「まあまあ。レソフィック君もキャンプ好きだっけ?そしたら君ら両方からいろいろ聞くよ。名目状は勇夫君を副リーダーにしとくから」
「へん!そうこなくっちゃ」
「名目状だからな。肩書きだけって事忘れんなよ」
「小泉さん、副リーダーは勇夫君で」
「は、はい」

裕美子は黒板に名前を書き込んだ。

『この2人がアウトドア趣味ってことは、アロン君もそうなのかな・・・』

窓側の集団の方をちらっと見てそう思った。

「裕美子さん、字きれいだね。記録係やったら?」

キャリーが窮屈そうに椅子から身を捩らせながら言った。

「え、え?」
「ほんとだ。読みやすいし、いいんじゃないか?」
「そうだね。それじゃお願いします」

みんなに推されてしまった。

『どうせ何かに当たるんだし・・でもこれなら無理なくできるかな』

そう思って引き受けることにした。

「そ、それでは・・」

自分で自分の名前を書き込んだ。なんだか恥ずかしい。

「予備資材運搬ってなんだ?」

ミシェルが聞いた。
チャンがしおりをぱらぱらめくる。

「予備のサテライトフォン、それ用の予備電池、懐中電灯の予備電池、予備ロープ、発煙弾など順調なら使わずにすむ物を万が一の為に持っていく人だそうだ」
「使うことない重りを背負って修行する人か」

すると勇夫が胸を張って偉そうにニヤニヤして言った。

「早いとこ何かに立候補しないと、予備資材運搬係になるぞ」

もう副リーダーになってるもんだから安心しきっている。と、そこにハウルが

「副リーダーなんて何か持って歩くわけでもないし、身軽じゃん。予備資材て手分けして持ってもいいんでしょ?あんたも少し持ったら?」
「えっ?!」

勇夫が焦る。レソフィックがけたけたと笑った。

「ワハハその通りだ。勇夫、お前力持ちだから重たい予備電池でも持ってけ」
「な、なんだと!で、電池なら衛星電話使う通信係がそのまま持てばいいだろ!」
「だめだな。通信係が溺れたり転んだりして壊したらそれでいっぺんにパアになるから、リスク分散のために別の人が持つべきだ。思慮が足らんよ。副リーダー失格だな」
「ガルルルル!」

『あ、結構とまともな見識の人なんだ』

レソフィックの正当な意見に裕美子はまた少し気持ちが変わった。

「衛星電話なんか使うんだな」

パウロがしおりに載っている使い方の図解を見ながら言った。なかなかごっつい感じの機械である。勇夫もそれを覗き込んだ。

「普通のケータイじゃ電波が届かないような所だからだろ。防水防塵型のいいやつみたいだな」
「衛星電話の話してるから通信係決めちゃおうか。どんな人がいいと思う?」

チャンが裕美子に意見を求めた。

「え?そ、そうですね・・声が通って声の大きい人が・・良さそうだと思います・・・」

それを聞いてみんなが一斉にハウルを見た。声の大きさといい、高いトーンでよく響く声といい、裕美子のいう条件にぴったりである。

「ハウルさん、どうだい?」
「あたし?いいわよ。うふふ、オペレーター・ハウルちゃんて呼んで」
「ははは・・・オッケイ、それじゃあ通信係はハウルさんで決定。・・それじゃ次は救護だ」
「怪我人の手当とかするんだな?擦り傷切り傷、挫傷、出血・・」

ミシェルが言うとキャリーが青ざめた。

「出血?私ムリムリムリ。血を見るの嫌なんだ」

するとレソフィックが

「怪我だけとは限らないよ。途中で体調崩す人もいるかもしれないし。勇夫なんかこの間藪の中入って変な虫が服の中入って大変だったよな」
「ああ、アレ?服脱いで追い出したけど、背中刺されまくってボツボツになって気持ち悪かったなあ」
「服を脱ぐ?!」

妙なところにパウロが反応した。

「お、俺が・・」

とパウロが言い掛けたところで裕美子が急いで遮った。

「お、女の子にしましょう、救護係は・・」

女性群が疑いの眼差しをパウロに浴びせる。パウロがひひっとひきつった笑いをして引っ込んだ。

「じゃ、私ね。キャリーができないとなると私しかいないし。安心して、アンタ達ガキの青いお尻見たって興味わかないからも何とも思わないし」

シャノンが男子どもを見回して言った。

「はあ、そうですか・・・」

とあきれ気味の男子一同。



その後リーダーとなったチャンのてきぱきとした進行で荷物の分担なども決め、B班より一足先にA班は解散した。
B班の係りも発表され、アロンはB班の副リーダーだと分かった。やっぱりアウトドアが趣味で、その知識を期待されての事のようだった。やっぱりこの3人は古い付き合いらしく趣味も同じなのだ。
そのとき、アロンもA班の副リーダーが勇夫だと聞いたら驚いて心配していた。
「どういう経緯で決まったのか知らないけど、権限は与えない方がいいぞ。レソフィック、なんかあったら止めろよ」
「わかってるって」

アロンの心配する様子に裕美子もちょっと不安になった。

『アロン君も同じ事言ってるってことは、レソフィックさんは悪口言ってた訳じゃないのかしら。勇夫さんの行動は注意した方がいいのかな・・』

一方、アロンやレソフィックが勇夫を心配するのと同様に、女子の方でも心配している人が一人。

「ハウルと班分かれちゃったけど、大丈夫かしら・・・中学ではぜったいこんなこと頼んでもできなかったのに・・」

そのことが気になってB班の話し合いはほとんど右から左に通過するだけだったクリスティンだった。そうなのだ、中学ではハウルの暴走を阻止するためクリスティンは必ずハウルとセットになるようにたえず配慮されてきたのだった。学校側でさえ率先してそうしてきた。うーん、恐ろしい。

「大丈夫よ~。あたしだっていつかは独り立ちしなきゃだもん。今回はいい機会じゃない。大人になるには多少の犠牲は付きモンだし」
「ハ、ハウル!犠牲は出しちゃダメよ!いい?出力50%よ、何事も思ってることの半分やったら一旦止めて様子見てね!」
「50%?あっそう。絶えずチャージ120%状態だから、50%だとうっぷん溜まっちゃいそう・・」
「それを抑える訓練だからね!ああ、心配だわ・・校長先生に直訴した方がいのかしら・・」


次回「第2部:第3章 オリエンテーリング(2):体育会系の猛者たち」へ続く!

前回のお話「第2部:第2章 初登校日(3):歓迎準備」

対応する第1部のお話「第1部:第1章 オリエンテーリング」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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忙しくてぜんぜん更新できませんでした。
一応生きてますので、たまに更新されているか見てくださいね。
裕美子目線のオリエンテーリングもこんなに書き込むつもりはなかったのですが、勢い書いてしまいました。ポイントは当日アロンたちB班と出会うところなのですが、この際なので第1部にはなかったA班の行動をもっと書いてみようと思います。
「ハリケーン・ハウルちゃん」は用意できなかったので、次回はマンガだけアップしようかな。

※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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