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<第2部:第3章 オリエンテーリング(2):体育会系の猛者たち> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第255回
<第2部:第3章 オリエンテーリング(2):体育会系の猛者たち>


「それじゃ行ってきまーす」
「気をつけてな」

見送りの先生に手を振られ、A班は張り切って出発した。
一行はどこへ向かうのかわからない獣道へ分け入っていった。


出だしの道は平坦だったとは言え、体育会系チームは恐れていた通り歩くペースが速かった。ましてや小さいシャノンの歩幅は、どう見ても最も長身のキャリーの半分である。歩数計があったらきっとシャノンはキャリーの倍の歩数になるに違いない。
心配した裕美子は言おうか言うまいか悩んだ。

『シャノンさん別に根を上げてるわけじゃないし、言ったらよけいなお世話かも・・でもわたしもこのペースだときつくなりそうだし・・でもわたし一人ペース乱したらみんなに迷惑だし・・そうは言っても、もしわたしが疲れて動けなくなったら、その方がもっと迷惑だし・・・』

迷ったあげく裕美子はシャノンのそばに寄った。

「あ、あの、みんな歩くの速くないですか?シャノンさん大丈夫?」
「私おねーさんだもん、平気なんだから」

とは言っているが、ちょっと呼吸が荒いと思った。この人は無理しちゃう人かもしれない。
とにかく自分も心配だったので今言うことにした。裕美子はリーダーのチャンのそばに行った。

「リーダー、あ、あの、すみません・・。小柄なわたし達にはちょっとペース速いと思います。あれ見て下さい」

裕美子はキャリーとシャノンを差した。大股でずんずんと歩くキャリーの後ろを、ちょろちょろちょこまかとせわしなく動くシャノンは、再生速度の違う動画が2つ並んでいるようだった。

「ああ、きつい?・・でも早く見通しのいいところに出たいしな。少しでも有利な状況に持って行かないと・・」

リーダーは勝つことで頭いっぱいである。チャンは少し考えて先頭を行く勇夫を呼んだ。先頭の勇夫が歩みを緩め、リーダー達が追いつくと歩きながら話し始めた。

「勇夫君、ペースが速すぎるって人がいるんだけど、どうしょう。見晴らしのきくところに早く出たいって言ってたよな。そこまでは頑張って、そこで長めに休憩する?」
「偵察は任せてくれ。なんなら俺はもっとペース上げて先を見てくるから、道は心配しなくていいぞ」

するとレソフィックも寄ってきた。

「勇夫、先行するのはいいけど、分岐とかではちゃんと待ってくれよ。どっち行ったか分からなくなったら迷子だぞ。リーダー、ペースは落とそう。まだ始まったばかりだし、ここで無理したら後が続かんよ」
「そうか・・わかった。じゃあ勇夫君は先行偵察頼むよ」
「ラジャー!」

勇夫はすっ飛んでいった。裕美子はレソフィックがペースを落とすことを進言してくれたの聞いて、また揺れ動いた。

『あれ?この人は意外とちゃんとしてるのかな?わたし何か思い違いしてたかしら・・・』

レソフィックと目があったのでビクッとした。するとレソフィックが

「これでこの間の貸しは返したぜ。高くつくとか言われてたけど、これならその値打ちあるよな?」

挑戦的な感じで言ってきた。貸しとは初登校日の日にキャリーの歓迎準備をアロン、レソフィック、勇夫と代わってあげたことだ。あの時はうまく話せなくて変なこと言っちゃったっけ。あれを根に持っているんだ。

『や、やっぱりこの人はもう一つ腹黒いっていうか、ただじゃすませないんだから・・・助けてもらったのになんかすっきりしないわ』

そう思ったからか、また余計なことを言ってしまった。

「あ、あれは3人助けたんだから、まだ2人分残ってます」

それを聞いたレソフィックがウゲッという顔をした。

『また何言ってるのわたし・・』

裕美子は自分にもがっかりした。

『これじゃレソフィックさんのこと言えない・・アロン君にもレソフィックさんからわたしの変な印象言われちゃうかもしれない・・』

人付き合いをどうにかしたいと裕美子は切に思った。





道は川に当たったところで唐突になくなり、この先へ進む山道はどこにも見当たらなかった。みんなで周辺を調べたが、道は確かにスタート地点からここまでの、今歩いてきた道しかなかった。
リーダーが少しいらついていた。

「どういうことだ?ここ行き止まりって事だよな。道間違えたのか?」
「おかしいなあ、途中に分かれ道なんてあったか?」

パウロがみんなに聞いた。ミシェルもレソフィックも首を横に振った。

「道がないなんてあり得るのか?」

リーダーは動揺していた。

「困難は生徒達で解決しろってドジ担任言ってたよな。分校のオリエンテーリングは名物みたいだし、もしかしてあり得るんじゃないか?」
「うん。学校側の意図が見え隠れするぜ」

ミシェルとレソフィックはこういう状況に置かれることで試されていると感じ取ったようだ。裕美子も何となくそう思うようになっていた。

『極端な非現実性。みんなの知恵と協力がないと先へ進めない、チームの結束を強める・・・確かに先生達の言っていたキーワードをいやがうえでも実行せざる得ない環境になってきてる』

すると向こうからハウルが走ってきた。

「裕美子ー、チェックポイントの資料貸してー」
裕美子は記録係が持ってる荷物の中からチェックポイントについて書かれた資料を手渡した。受け取ったハウルは河原に降りていくと、そこにいた勇夫と一緒に巨石ゴロゴロの河原の中に消えていった。

「くそ、どうすりゃいいんだ!こうしてる間にも時間は過ぎていくというのに」

リーダーに焦りが見える。確かに普通の人ならどうすればいいのか迷うだろう。レソフィックは意外と冷静で、チャンをなだめた。

「まあまあリーダー、まず冷静になろうぜ。考えられることは2つだ。道があると信じて来た道を戻って分岐を探すか、道はないと覚悟して先へ進むかだ」
「本当に道はないってことあるのか?」

さすがのリーダーも決断に迷っていた。
するとシャノンが水を飲んでぷはっとすると

「道なんてないんじゃない?戻るのもったいないから先進もうよ」

と言った。

「でも進むったってどっちへ・・・」

そう言ったところでハウルの声が遠くから聞こえてきた。おーいと言っている。
みんなで声のする河原の方へ行くと、とある巨石のてっぺんに勇夫と乗っかっているハウルがいた。まずミシェルが驚いた。

「あの2人、どうやってあんなところ登ったんだ?」

レソフィックはハウルに驚いた。

「え?!勇夫ならわかるけど、あのハウルってのついて行ったのか?すげーな」

ハウルの通る声が河原から聞こえてきた。

「チェックポイントここから見えるよー」



こうして現在位置とチェックポイントの位置関係を把握したA班は、自ら道を切り開いて進んで行くことに決めたのだった。



次回「第2部:第3章 オリエンテーリング(3):ミスコース」へ続く!

前回のお話「第2部:第3章 オリエンテーリング(1):班分け」

対応する第1部のお話「第1部:第1章 オリエンテーリング」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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4コマの「ハリケーン・ハウルちゃん」をようやくアップできたので、久々に文章の方を進めます。でも今度は4コマのネタが思いつかない・・。

※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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コメント 1

TSO

xml_xslさん、bitさん、toramanさん、タッチおじさんさん、(。・_・。)2kさん、たねさん、あいか5drrさん、Lobyさん、ほちゃさん、niceありがとうございます。
by TSO (2012-05-02 23:37) 

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