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<第2部:第3章 オリエンテーリング(5):意見割れ> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第258回
<第2部:第3章 オリエンテーリング(5):意見割れ>


滝の上に登ったA班はそのまま川沿いに進んでいった。
しばらくすると林を抜け視界が広がった。中間チェックポイントの方を望むと、どうやらチェックポイントは主流の川ではなく、支流の沢の上にあるようだ。
そのときパウロの腹がグウウ~と豪快に鳴った。しかしリーダーは時計を見て無情にも言い放った。

「まだ12時20分だな」

パウロがお腹をさすって恥ずかしさと残念そうな顔を混ぜていると、ハウルが勇夫のリュックをひっつかんで座り込んだ。

「もうだめ、我慢の限界だわ!誰がなんと言おうとあたしはもうここで食べるわよ!」

勇夫ごと引き倒すと、リュックを開けて中を物色し始めた。

「なにするんだ!自分のは自分のバッグにあるだろが!」
「なあにこれ。あんたチョコバー何本持ってるのよ」
「いくつあったっていいだろ!10本くらいあるわ、文句あっか?!」
「そんなに食べたら鼻血出るわよ。あたしが半分食べてあげる!」
「ああー!勝手に封開けるな!せめて交換だ!」
「しょうがない・・カロリーバーと交換したげる」
「うお!、なんだそれ!お前だってカロリーバー10本くらい持ってるじゃねえか!」
「ひ、非常食なんだから」

取っ組み合って収拾着かない。リーダーも諦めた。

「君らは我慢ってもんができないのか?やれやれ。しかたない。ここで食べるか。昼食休憩を取る!」
「うおぅー、やっとだあ」
「あたし燃費悪んだあ」

ミシェルとキャリーも待ってましたとばかりにザックを下ろすと、もう頬張っていた。どうやら頑張って歩き続けたいのはリーダーだけだったようだ。

一行はその沢の分岐のところで昼食を取ることにした。





昼食後は支流の沢を遡って中間チェックポイントに向かった。

「沢の水の始まりってどんなところだろうね?」

シャノンが裕美子に訪ねた。そういえば川の始まりというのは見たことがない。いくつもの小さな流れを束ねて川になるのは分かるが、その小さな流れの始まりはどうなっているのだろう。草の葉から落ちる一滴が幾つも集まるとこんなふうになるのだろうか。しかし上を見上げると、沢のいく先は石や岩だらけの斜面で草木はなかった。

「どんなところでしょう・・・見てみたいです。見られるでしょうか」
「ハウルに言ってくるね。ハウル~!」

前の方にいたハウルが振り向いたのでシャノンはこっちこっちと呼んだ。

「どうしたの?」
「ねえ、この沢の水がどうやって始まってるのか見たいんだけど。源流探検しよーよ」
「それはねシャノンちゃん。この先にほこらがあって、その中に小便小僧が立っててね、その先っちょから注がれてる水が川の始まりなのよ」

シャノンの顔が引きつった。

「いくら何でもそりゃあねえだろ」

それを聞いてたパウロが苦笑する。

「でも俺も見てみたいな」

すかさずリーダーが横やりを入れた。

「寄り道はダメだぞ!」
「ケチンボ。寄り道なんてしなくても、この流れ追ってくんだから自然に着くわよ」

ハウルは口を尖らせてリーダーにそう言うとシャノンに顔を近付けて小声で言った。

「もし逸れちゃいそうでも勇夫とそれとなくそっちに向かうから」
「ありがと!」
「何をこそこそ言ってるんだ?寄り道はしないからな!小泉さんも言ってやってくれよ」
「は、はい・・・そうですね・・」

裕美子は迷った。確かに班対抗だし、勝つことを優先させるなら、寄り道になるような行為は避けるべきだろう。ただでさえミスコ-スで1時間よけいに時間を食っているのだ。とはいえ知的好奇心も満たしたい。どっちが重要だろうか。
リーダーとハウルの両方から睨まれてるのに気付いて、裕美子は焦ってパニクりそうになった。
裕美子が答えに詰まってるのでハウルは構わず続けた。

「ねえリーダー。あたし水筒の水なくなりそうなんだけど、水源見つけて汲んでいっていいでしょ?」
「水筒空になってもペットボトルの水も背負って持ってるだろ?それか目の前の沢で汲んでもいいじゃないか」
「だってリーダーもさっき沢の水で顔洗ってたし、この先で同じようなことしてるのがいるかもしれないじゃん」

リーダーは不機嫌な顔で受け答えた。

「見たところ僕ら以外にこの辺に人なんていないぞ」

そこにレソフィックと勇夫も口を挟んだ。

「水汲むんなら水源で汲んだ方が安全だよ。動物の死骸が転がってて汚染されてるってこともあり得なくはないからな」
「水補給できるならやって損はないぞ。この先どんなことになるか、何時間かかるか予想つかないからな」

自分がオロオロしている間に少し話が進んだので、裕美子もちょっと考えがまとまった。

「お水、汲んできましょう。皆さん手持ちの半分はなくなってるみたいだし・・たぶんルートのそばですよね、水源て・・・」

リーダーは相変わらず不機嫌そうに応えた。

「え?それは確実にそうとは言えないんじゃないか?誰か見た訳じゃないだろう?」

勝つことも大事かもしれないが、勇夫の言う通りこの先どうなるか分からない状況下で、必要物資の水がリセット状態になるのは意味が大きい。ルート直上でないにしても僅かに逸れるだけで手に入る可能性が高いのだから、優先度は高いと裕美子は判断した。

「お、お水、汲んだ方がいいです・・わたし達サバイバル状態にあるんですから・・」

か細い声でぼそぼそ言っていると、ハウルがいつもの大きな声で裕美子の声を上塗りした。

「なんならリーダー先行ってていいわよ。あたしら水汲んどくから。みんな汲んどけば、あとでリーダー足りなくなっても分けてあげるくらいできるでしょ」
「え?僕以外はみんな水汲みたいのか?」

みんなが頷いた。

「あの、リーダー。班の結束も大事ですよ・・」

裕美子は小さな声で諭した。チャンは一人意見が分かれておもしろくない風だったが、渋々多数意見に折れて妥協案を示した。

「・・・ルートからさほど逸れることないなら寄ることにする。いいなそれで。あまりにも離れるようなら寄らないぞ」


次回「第2部:第3章 オリエンテーリング(6):中間チェックポイント」へ続く!

前回のお話「第2部:第3章 オリエンテーリング(4):第2チェックポイント」


対応する第1部のお話「第1部:第1章 オリエンテーリング(7)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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どうもリーダーだけ突っ走っているようです。でも周りの意見もちゃんと聞いてるから偉いもんです。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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TSO

くま・てーとくさん、toramanさん、Lobyさん、RodorigesEXさん、翡翠さん、bitさん、あいか5drrさん、(。・_・。)2kさん、Mackさん、HAtAさん、ぼんぼちぼちぼちさん、xml_xslさん、niceありがとうございます。
by TSO (2012-05-21 03:12) 

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