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<第2部:第3章 オリエンテーリング(6):中間チェックポイント> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第259回
<第2部:第3章 オリエンテーリング(6):中間チェックポイント>


沢の水源は水の流れを辿っていくとあっけなく見つかった。次第に細くなっていった沢は小さな一筋の流れとなり、最後は斜面の途中の窪みに泉のように水が溜まっているところへ行き着いたのだ。その水の源は岩の間の穴から豊富に湧き出る湧水だった。手がかじかむほど冷たい。

「わあーい、見つかったね。すごーい!」

シャノンが子供のように喜んだ。本当に子供のようだ。

「勇夫、これなら飲んでもいいよね?!」
「わはは、でーじょぶだろ、すげーきれいだし。どれ」

そう言うと勇夫は手ですくって飲み始めた。

「冷てえ、うめえ!」
「あ、ちょっと私も!」

勇夫とハウルがゴクゴク飲んでるのを見たレソフィックはみんなに注意した。

「きれいだろうけど、一応溜まってる水じゃなくて、湧き出てるところで汲むようにした方がいいよ」
「てやんでえ。溜まってるたって、これだけ勢いよく湧いてるんだ。流水と変わんねえよ」
「お前は淀んだ水でも腹壊さねえからいいだろうけどよ」

裕美子は湧き出ている清らかな水の上を見上げた。ここから上はガレ場で、水は地表を流れてない。山頂に降った雨は地中で濾過されて、ここではじめて地表に出てきたのだ。裕美子は水筒の水を飲み干すと、湧き出たばかりの新鮮な水でそれを満たし直した。

『山登りってあまり経験なかったけど、こういおいしい水やおいしい空気、いい景色に出会えるって楽しい。アロン君と仲良くなれたら、こういうところに一緒に行ったりするのかな』

妙に意気投合しているハウルと勇夫を見て、アウトドアが趣味というアロンと自分をそれに置き換えて想像した。
仲良くなりたい・・。まだほとんど話もしたことのない人なのに、なぜこんなに気になるのだろう。

リーダーが急かすので、一行は水を汲み終わるとすぐ出発し、中間チェックポイントへの最後の急斜面を登っていった。





大きな岩を幾つも登っていく急斜面だったが、とうとう巨石が乗っかる尾根の頂きの中間チェックポイントにたどり着いた。
B班はまだ来てないようだった。

「よーし!B班より先に着いたぞ。これで目標の1個は達成だ!ハウルさん、連絡入れてくれ!」
「は~い」

ハウルはザックからお菓子を取り出しつつ、それを頬張りながら、お菓子に埋もれている衛星電話を出そうとしていた。

「ふう~」

と言ってシャノンがしゃがみ込んだ。さすがに疲れているふうだ。裕美子もその横に座って、ふくらはぎを揺すってほぐした。

「こいずみー、疲れたねー」
「え、ええ。・・最後の登りはきつかったです」
「あとは下ってくだけだよねー」

ここまで元気にみんなと合わせてやってきたシャノンだが、このコメントからすると、もしかしてもうこの先には登りがないつもりのペース配分で来たのではないだろうか。もしそうだとすると、その予想が外れたとき、シャノンの体力が保つのだろうか。裕美子は心配になった。
その向こうで、ようやくお菓子に埋もれていたサテライトフォンを取り出したハウルが中間チェックポイント到着の報告をしていた。

「ハウルで-す。中間チェックポイント着いたわよー」
--(早いな。そのペースなら初完走ねらえるんじゃないか?)--
「なに?初完走って」
--(い、いや、何でもない!)--
「もしかして他の組、完走したところないの?」
--(い、いやー何というか・・)--
「うそ!そしたらあたしら完走したら快挙?」
--(ま、まあそういうことかもな・・)--
「リーダーに知らせてくる!バイバイ!ガチャッ」

一方的に電話を切るとハウルは立ち上がった。

「リーダー、リーダー、今すごいこと聞いちゃった!」
「どうしたんだ?」
「他の組って、まだ完走した班ないんだって!あたしらいいペースらしいから、このままいったら初完走の快挙だって!」
「本当か?!」
「ドジ担任がうっかり口滑らした!」
「そうか。ようし!みんな、初完走狙うぞ!栄冠は僕らの班のものだ!」

パウロやミシェル、キャリーも目を輝かしてそれに応じた。

「マジで?」
「そりゃ狙うしかねえな!」
「よーし、そしたらあたしやっちゃうよ!」

さすが体力に自信のある体育会系チームだ。中間チェックポイントでもまだまだ元気一杯だ。リーダーがさらに続けた。

「よし!先進んでB班とも圧倒的差を付けて、B班にもプレッシャー与えてやろう!そうすれば精神的にも有利になって、僕らの勝利は決定的なものになるぞ」
「そうだな。中間チェック一番乗りは先にもらったし、いかにここから遠くでB班と出会うかでプレッシャーの度合いが違ってくるって訳だな」

パウロは屈伸運動をし始めながら言った。みんなアスリートなだけに勝負にもこだわりがある。本質的に一番になりたい人達なのだ。リーダー含め、ギアが一段さらに入ったようだった。

「・・・同じ組なのに、そこまでやる必要あるんですか?」

裕美子はキャリーに問いかけた。

「差があればあるほどいい気分になれるわよ」

さすが勝負師だ。だが体力的に劣る裕美子とシャノンは不安を募らせた。それを読みとったらしいレソフィックが裕美子に言った。

「お前ら、もしペースが上がったら付いていけるか不安なんじゃないか?ペース配分守るように進言してやってもいいよ」

裕美子はひょいっと顔を上げてレソフィックを見た。一見親切のようだが、腹黒い彼のことである。絶対裏の気持ちがあるに違いない。

「・・・見返りを求めてないですか?」
「水汲みの時も味方してやったし、それに加えてこれで3人分の貸しが返せるかなと思って」

『やっぱり!この人ずっとそれ考えてその隙を探ってたんだわ』

これは借りを返した後、今度は勝手に貸しを作って何かたかられるかもしれない。そう思うとまた素直には返せなかった。

「お、お水の件は、わたしというよりハウルさんの希望です。か、カウントから外して下さい」

またウゲッという顔をレソフィックはした。どう思われてるだろう。きっと嫌な女だと思われてるに違いない。

「で、でも、ペース配分は、言ってもらえると助かります・・」

レソフィックは一瞬ツンとすると頷いた。

「お前らにバテられたら班の完走どこじゃないからな。わかった、リーダーに言っとくよ」

そう言ってリーダーの方に行こうとしたとき、ふっと振り返って言った。

「残りはあと一人分だな?」

・・・これだ。
今後この人とはなるべく関わらないようにしないとだ。せっかく人生再出発なのに、もう避けねばならない人を作ってしまうとは。裕美子は酷く落ち込んでしまった。


次回「第2部:第3章 オリエンテーリング(7):B班との合流」へ続く!

前回のお話「第2部:第3章 オリエンテーリング(5):意見割れ」


対応する第1部のお話「第1部:第1章 オリエンテーリング(8)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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前半の話の、沢の源流の水が湧いているところ。対応する第1部のお話で、中間チェックの先で会ったB班のウォルトがもう水筒の水を飲み干しちゃっていて、シャノンが水汲んで行きなさいよと言ったところのことです。
後半の話の裕美子がレソフィックのことをあまりよく思ってないという第2部で新たに作った設定、けっこうよく引っ張られてますね。これどうやって幕引きしようかな。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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TSO

ぼちぼんぼちぼちさん、Lobyさん、翡翠さん、あいか5drrさん、「直chan」さん、toramanさん、(。・_・。)2kさん、RodorigesEXさん、bitさん、xml_xslさん、niceありがとうございます。
by TSO (2012-05-21 03:14) 

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