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<第2部:第3章 オリエンテーリング(8):B班を迎えに> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第261回
<第2部:第3章 オリエンテーリング(8):B班を迎えに>


18時わずかにちょっと前、A班はB班のルート記録を追っかけて無事にゴールにたどり着くことができた。それでもみんなはヘッドライトを装着してのゴールになった。日の入りの時間はまだだったが、裕美子の予想した通りクスス山で陰になる東山麓の森の中はその時既に真っ暗になっていたのだ。ルートが分かっていなければ最後の山道には出られなかったことだろう。

無事先にゴールしたA班は、その後B班のゴール地点、すなわち自分達のスタート地点にドジ担任の車で駆け付けた。B班のゴールを迎えるためだ。

「懐かしいー。私達ここからスタートしたんだね」
「10時間前の話じゃないか。懐かしむほどまだ経ってないぞ」

ハウルとチャンを筆頭にどやどやと車から降りたA班は、ゴール地点に立つテントに歩いていった。
テントの下にいた先生の一人が立ち上がってドジ担任を呼び寄せた。

「ドジ君、君あっちにサテライトフォン置いてったろう。B班のカーラから連絡があったとさっき電話あったぞ」
「あ!しまった。す、すんません!それでなんと?」
「山道に出られたとのことだ」
「そうですか!」
「道に出たの?やったね!じゃあもう時間の問題だね」

先生達の話を聞いたキャリーが嬉しそうにみんなに向かって言った。

「ああ、一本道だからもう迷わずここに来れる」
「よーし、俺ちょっと手前で迎えてやろう!」

そう言って勇夫が、日が落ちて真っ暗になった山道に入っていった。

「勇夫、B班来ても手かして助けちゃだめだぞ!応援だけだからな!」

ドジ担任が注意する。

「わかったわかった。足下照らしてやるくらいならいいだろ」
「まあ、それくらいならいいか」
「俺も行くよ」

パウロも勇夫に付いて山道に入っていった。

他のA班メンバーはテントの周りに座り込んだ。テントの中にいた先生の一人がペットボトルの飲料を持ってみんなに配った。

「お疲れさん。完走おめでとう」

チャンは受け取りながら言った。

「”おめでとう”はB班がゴールできたときに取っておいて下さい。両方の班の協力がないとお互いゴールまでたどり着くことはなかったことです。そうですよね?」

チャンは最後のところを裕美子に向かって言った。圧倒的有利と言われたA班でさえB班の情報がなければ今ここにいることは絶対ない。日の落ちた中、山道に出る最後の工程でまだ森の中にいたに違いない。それをチャンに気付かせてくれたのが裕美子なのだ。
裕美子は話しかけられたことにびっくりした。疲れのせいで声を返すことができなかったが、笑ってコクリと返事した。残念ながらメガネもあって表情の乏しい今の裕美子は十分に微笑むことができず、頷いたのだけが伝わった。




裕美子の隣ではシャノンがうずくまって、もらったペットボトルも飲まずに寝入っていた。裕美子よりさらに5センチくらい小さいシャノンは、バリバリの体育会系が揃うA班にあってペース配分を間違ってしまったようだが、最後まで頑張ってついて行き、ゴールしたときには涙を流していた。早く帰って休みたいだろうに、可哀想にまだ体育会系の猛者たちに振り回されている。
裕美子はせめて何かかけてあげようと思って見渡すと、事務局のテントの中に毛布があるのを見つけた。立ち上がろうとしたその時、横からシュパッと現れたかと思うと、側転に飛び込み前転までして毛布に飛びついたのはなんとレソフィック。疲れを知らないのかこの人はと半ば呆れたところで、なんで毛布に飛びついたのか察しのついた裕美子はさらに呆れた。
毛布を持ってやってきたレソフィックがニヤリとして言った。

「これで最後の借りは返すぜ」

『・・やっぱり』

シャノンに「ふっふっふ」と笑いながら毛布を掛けるレソフィックに、裕美子は疲れた細い声でぼそりと言った。

「優しい男の人だったら当たり前にやってくれる程度のことなのに・・」

それを聞いたレソフィックは、うげーっという顔をした。

「すみません、わたしにもください・・・サービスで」

またまたウゲゲッという顔をしたレソフィックだったが、おとなしくもう1枚毛布を持ってくると裕美子の肩に掛けていった。

『ああ、一挙に疲れた・・』

レソフィックとのやり取りで消耗した裕美子は、両足を抱えて小さく縮こまった。そしてアロン達に思いを馳せた。

『スタートから道がなくなるところまでわたし達でせいぜい30分。でもA班はみんな負傷したりしてる』
もともと体力がなくて疲労困ぱいというウォルトとイザベル。転んで足を怪我したらしいダーニャに靴擦れで歩くのも苦痛なクリスティン。彼女達をフォローしながらでは、他の元気な人達も相当体力を消耗しているに違いない。

『アロン君、無事だろうか・・』






B班が道に出たと言ってから1時間近く経つというのに、まだ姿が見えない。道は一本道で間違うはずはない。起伏もそれほどなかった。それでも来ないということは、それだけまともに動ける人がいないということなのか・・・。
裕美子は心配でならなかった。アロンが怪我してるとは思わないが、誰かが動けないのであれば、きっとその助けをアロンがやっている。どっちにしろ苦しんでいるのだ。

すると、テントの電話が鳴った。

「はい。ああ、そっちに定時連絡が?わかりました。ドジ君にかけさせます」

A班ゴール地点に置きっぱなしのドジ担任のサテライトフォンにB班カーラからの連絡があったのだ。

「ダム先生いるか?B班カーラからこっちに定時連絡があった。そっちの電話から折り返しかけてあげなさい」
「すんません、すんません」

ドジ担任はこっちのサテライトフォンを借りるとカーラに電話をかけた。ハウルやチャンも集まってきた。

「あー、おほん。カーラか?無事か?」
・・(みんな無事です。道は迷ってないと思いますが、でもどの辺かわかりません・・どの辺まで来たのか)・・
「周りに何か特徴ないか?」
・・(真っ暗であまり特徴らしきものは・・)・・

後ろからハウルが大きなバックノイズで

「懐中電灯振ってみてー」

と言った。
生徒達は電話に出ることができない。そこで後ろから大声でバックノイズとして声を届ける方法を裕美子が提案したのだ。ハウルの通る声はまさにうってつけだった。
ハウルは無線も持っていた。こっちは少し先の森の中にいる勇夫と交信するためのものだ。勇夫はそこで焚き火をして待っていた。

「そっち、何か見えない?よく探して」

裕美子も中腰になると森の方を見た。

・・(光った!今、一瞬、光った!)・・

無線から勇夫の声が飛び込んできた。
とたんにぶわあああっと焚き火の炎が大きくなった。

「なんだあれ、大丈夫か?」

ドジ担任が心配する横で、まだ繋がっているサテライトフォンにハウルがバックノイズで呼び掛ける。

「こっちで光が見えたみたい!勇夫がおっきい焚火してるよ!見える?!」

すると無線から切迫した声が届いた。

・・(こちら勇夫、応援頼む。増加照明用の薪をくべたら異常発火した。水、水!)・・
「バカか、あいつは!」

レソフィックがシャノンの体にかかっていた毛布を取り上げて森へ走った。
裕美子はその焚き火の危険度が最初わからなかったが、あのレソフィックが血相を変えて飛んでいったのでただ事でないと感じ取った。そしてチャンも。

「みんな、水!」

シャノンがボーっと起き上がった。

「ムニャムニャ・・どうしたの?」
「シャノンさんはここで待ってて」

裕美子も重い身体を起こしてみんなに続いた。


次回「第2部:第3章 オリエンテーリング(9):わたしもクラスの一員」へ続く!

前回のお話「第2部:第3章 オリエンテーリング(7):B班との合流」


対応する第1部のお話「第1部:第1章 オリエンテーリング(9)」「第1部:第1章 オリエンテーリング(13)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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いい気になって書いていたら長くなってしまったので、タイトルも変更して2話に分けることにしました。裕美子が持ってしまったレソフィックの悪印象も最後まで引きずったままで、どうやらまだ解消できないみたいです。(^^;
大丈夫だろうか、第1部とかけ離れてしまわなければいいけど。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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K-STYLE

お久しぶりです・・・「(・◇・`) かっぱです
ずいぶんご無沙汰してしまいました_(._.)_ふかぶか

いろいろ考えたすえ、このたび活動を再開することにしました

よろしかったら、また遊びに来てくださいにゃ~
(*ノωノ)

by K-STYLE (2012-06-13 00:07) 

TSO

(。・_・。)2kさん、xml_xslさん、あいか5drrさん、bitさん、「直chan」さん、toramanさん、K-STYLEさん、Lobyさん、niceありがとうございます。

かっぱちゃん、お久しぶりです~。よかった戻ってこられたんですね。作品楽しみにしてますので、お互い焦らずがんばりましょー。
by TSO (2012-06-17 02:15) 

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