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<第2部:第4章 クラス委員決め(3):イザベルのお礼アタック> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第266回
<第2部:第4章 クラス委員決め(3):イザベルのお礼アタック>


委員会初会合があった翌日。

裕美子がいつもの時間に登校すると、イザベルとダーニャとが一緒に裕美子の席の辺りにいた。登校前に自分の席の周りに人がいるというのは、最も最近ではいたずらのためという場合しかなかったので、裕美子はいやな感じがした。しかしイザベルもダーニャもほとんど裕美子に関心がないような様子で、目が合って初めて声を交わした。

「あ、小泉さん、おはよう」
「おはようございます」

2人は横にずれただけで、再び小声で会話を始めた。こそこそしてる感じがなんだか引っかかったが、自分の机を確かめても別に異常はなく、何かいたずらをされたようでもない。

『なにかしら。』

鞄の中から筆記用具などを出していると、時たま会話が聞こえてくる。

「どうせ座りゃしないわよ」
「そしたら通るときでいいじゃない」
「ダ、ダーニャ呼び止めてよ
「何言ってんの、自分でしなきゃ」
「でも通るときだと勇夫君とレソフィック君もぜったいいるよ?」
「そんなのぜんぜん構わないと思う」

何の話をしているのかぜんぜん分からない。とりあえず自分のことではなさそうなので、気にしないことにした。



しばらくして人がだんだん増えてきても2人はそこにいた。

「やっぱりアロン君窓の方にいくと思う。あ、あっちに行こう?」

『アロン君?』

小声っだったにもかかわらず、イザベルの言葉に反応して裕美子はばっと顔を上げた。それまで聞き流していたが、急に全神経がそっちに向いた。

「もし行かなかったらチャンス逃すから。ここなら絶対でしょ!」

『アロン君に用事があるの?』

ちょうどアロン達が教室に入ってきた。いつものように賑やかにレソフィックらと教室を横断してくると、珍しくアロンは真っ先に自分の席に来た。隣の勇夫も席に座って、今日はレソフィックがそこの場にとどまって立ち話するようだ。
ダーニャはイザベルの背中に合図をし、少し躊躇した後ゆっくりイザベルがアロンに向かっていった。何か手に持ってる。そして席に座ってちょうど前を向いていたアロンに話し掛けた。




「アロン君、このあいだはいろいろ助けてくれてありがとう。これ食べてね」

ぽすっと机に紙袋を置くと、イザベルはさっと去っていった。

『なんだろう、あれ。このあいだはって・・・何かのお礼?』

アロンもきょとんとしていた。レソフィックと勇夫もなんだそれはと一緒にのぞき込んでいる。紙袋を開けたアロン達は

「あ、クッキーだ」
「ナニ?それ。うまそうじゃん、ちょっと食わせろよ」
「え?食う?いいけど・・・いいのかな」

と中身をつつき始めた。

『こないだは助けてくれてって・・・きっとオリエンテーリングのことだよね。イザベルさん、アロン君と同じ班だったし、ゴールの時もアロン君ずっと肩貸してたから・・・』

きっとあそこにたどり着く前からずっとああやって助けていたんだろう。
あの場面を見たとき、自分がすごい嫉妬したことを思い出した。近付いたら必死の形相で、それどころじゃないとわかったけど、やぱりイザベルさんは心の中でアロン君を意識しちゃってたんだ。

『・・・いいなあ、やっぱり一緒じゃないときっかけなんてできないもの』

胸の中がズキッ、ズキッと痛くなった。すごい嫌な痛み。これは拒絶の反応。
同じ班になれなかったことを恨んだ。

『・・アロン君、イザベルさんとくっついちゃうの?・・』

裕美子は急に悲しい気持ちで覆われた。いくら拒絶しても、自分の届かないところで進んでいく止められない流れ。
昨日まで、わたしはいったい何をうきうきしていたのだろう。





翌日、ホームルームの後にアロンのところへやってきたのはダーニャだった。イザベルが来たりダーニャが来たり、裕美子はメガネのおかげで端からは見えなかったが、メガネの奥に不安をにじませながら横目で様子を伺っていた。
ダーニャはいつもの楽しそうに何かを観察するような顔をしてアロンに話しかけた。

「アロン、イザベルのクッキー食べた?」
「え?なんで知ってんの?食べたよ。結局半分近く勇夫とレソフィックに食われたけど」
「え?なんでそんな連中に食べさせるのよ!これイザベルのあなたへの気持ちよ。だめじゃない!」

つまんだ本人のレソフィックに本当は他人にあげたらよくないぞと言われてただけに、アロンはたじたじであった。その向こうで共犯の2人も注意を向けているのが見える。

「わかってるよ。でも隙を見てかすみ取られてさ・・」
「そんなことする人たちとはもう絶交しなさい。それでどうだった?」
「別に腹壊してないよ」
「あたりまえでしょ。感想聞いてるの!」
「うまかったよ。でも甘すぎかなあ。あまりくどくない方が好みなんだよね」
「ふーん。はっきり言うのね。イザベルに感想伝えといてあげる」
「なんでダーニャが連絡員になってんの?」
「乙女心がわからないのねえ。はずかしくてこれないんじゃない」
「はあ?」

『そうか。ダーニャさんは昨日もイザベルさんに付き添ってたし、手伝ってあげてるのか・・・』

横で聞き耳をたてて様子を伺っていた裕美子は、ようやくダーニャが動き回っている理由がわかった。アロンは理解できたんだろうか?

『やっぱりアタックしている本命はイザベルさんか。ますます行く末が気になる・・』

アロンの座席の列の一番前に座るイザベルをじいっと見た。次はいったいどうやってアロン君のところに来るつもりかしら。

しかし当人のイザベルはその日アロンのところに来ることもなく、それどころかとうとう後ろを振り向くこともなく下校時間をむかえた。何も起こらないというのもそれはそれで気になりすぎる。気になりすぎて寝られないんではないだろうかというくらい裕美子は気持ち悪い思いをしていた。横をちらりと見ると、そこにはいつも通りに楽しそうに勇夫やレソフィックと遊んでいるアロンがいた。

『今日は、もうだめだ。帰ろう・・』

アロン君へのお願い事、「心配させないでください」って本気で頼みたくなった。


次回「第2部:第4章 クラス委員決め(4):年間行事」へ続く!

前回のお話「第2部:第4章 クラス委員決め(2):備品入出庫係」


対応する第1部のお話「第1部:第6章 イザベルのお礼アタック」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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第1部第6章「イザベルのお礼アタック」と同じ場面の裕美子視点でした。クッキー渡す前の待ち構えているところは裕美子視点で追加されたところ。このとき裕美子がやきもきしていたであろうことを、第1部28章のスキー旅行中にイザベルとカーラが夜の語らいのネタにしてたわけですね。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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TSO

ほちゃさん、ぼんぼちぼちぼちさん、macinuさん、「直chan」さん、青竹さん、こさぴーさん、あいか5drrさん、(。・_・。)2kさん、yamさん、bitさん、Lobyさん、xml_xslさん、U3さん、niceありがとうございます。
by TSO (2012-08-26 10:13) 

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