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<第2部:第4章 クラス委員決め(8):本当のお願い> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第271回
<第2部:第4章 クラス委員決め(8):本当のお願い>


・・「1年C組の小泉さん、片いなか運送の方が来ています。駐車場までお願いします」・・

校内放送で裕美子は呼び出された。消耗品の補充が届いたのだ。

裕美子は体ごと横を向いた。

「すみませんアロン君。あの・・搬入の手伝い・・」
「あ、今の放送がそう?いいよ」
「すみません、お願いします」

アロンが立ち上がったのをレソフィックが気付いた

「おー、アロンどこ行くんだ?」

『よりによってレソフィックさん!?』

裕美子は心の中で手を合わせた。

『お願い!付いてくるとか、手伝うとか言わないで!』

アロンはさらっと答えた。

「委員の仕事でちょっと行ってくる」
「おー、そうか」

それっきりレソフィックは関心を示さなかった。
大丈夫、ついてこない。
裕美子はほっとした。





廊下を歩く二人。今日これで2回目。

2回も!わたし2回も二人っきりになった。

裕美子は自分が案内しなければと思って先頭に立とうと思ったが、アロンはすたすたと歩調を合わせ横に並んできた。行く場所は駐車場だと分かっているからだろうか。一緒にいられるのはすごくうれしいのだが・・

で、でも、並んで歩くのは目立ちすぎて、ちょっと困る・・。
それに、先に寄りたいところもあるんだけど・・・

すれ違う人の目線を気にしていたらアロンが口を開いた。

「運ぶのに台車とかいるんじゃないの?」
「あ、ハイ。台車は用務員室で借ります」
「そんじゃ俺借りてくるよ。小泉は駐車場先行って荷物受け取ってなよ」

『気が利くんだ』

並んで歩いていることなんか気にしてたことに恥ずかしくなった。アロン君はちゃんとお仕事のこと考えてたんだ。

『でも・・ずっと一緒にいたかったんだけどな・・』

断る方がおかしいので、提案通りにした。

「ハイ。ありがとうございます。それじゃ先行ってますので、台車お願いします」

本当は一緒に借りに行って、一緒に駐車場に行こうと思っていたのだ。ちょっつまんなそうに駐車場に向かった。





トラックから降ろされた荷物が注文通りか納品書と照らし合わせていると、アロンが台車を転がしてやってきた。

「はい。確かに揃ってるの確認しました」
「それじゃ受け取りのサインお願いします。・・毎度どうもー」
「ご苦労様でした」

トラックが去った横に、堆く積み上がったダンボールを見てアロンが言った。

「結構あるね。紐ももらっといてよかった」

そう言うとさっそく作業を開始し、ぽんぽんとダンボールを台車に載せると、紐で崩れないように縛った。

「手慣れてますね」
「バイクの荷台に荷物括り付けるのと同じ要領だね。あ、俺バイク乗るんだ」
「そうなんですか」

一緒にいるとやっぱりいろいろ知ることができる。うれしい。
わぁ、そうなんだ。バイク乗るのかあ。





アロンが一度にたくさん台車に載せるので、2往復ほどで荷物は備品倉庫前まで運び終えた。普通に運んだら2、3倍行き来しなければならなかったかもしれない。降ろしたダンボールを入口の前に並べてるアロンを見て、頼りになるなあと益々好きになっていった。

「次は?」

キッカ先輩からもらっていた作業説明書には、この後荷解きして、それぞれの置き場に置いて、台帳の在庫数を増やしてやることになっている。でも今日はみんながいないからそこまでやらなくてもよくて、倉庫の中にこの荷物を放り込んでおくだけでいい。
それにアロン君に頼んだのは荷物を運んでもらうところまで。これ以上は・・・

「しまう場所決まってんだろ?品物ごとにだいたい並べて置いたから、場所教えてよ。俺運び入れるから、小泉はチェックとかしなよ」
「え?やること分かるんですか?」
「道場でモノ買ったりすると似たような事するから何となく想像付く」
「でも・・お願いしてたのは運ぶところだけだったのに・・」
「やらなくていいならやらないけど。でも小泉一人でやるのは大変だろ。高いところの棚に積み上げたりすることもあるんだろうし」

それは別の日に生徒会の人とやればいいんだけど・・いいの?そしたらアロン君とまだ一緒にいられるんだよね。いい?

「それじゃもう少し、手伝ってもらえますか?」
「あいよー。それじゃ蛍光灯から」
「あ、ありがとうございます。・・・いい人ですね、アロン君。レソフィックさんと違って」
「レソフィック?あははは、あいつそうとう嫌がらせしたんだな。あいつもぜんぜん悪い奴じゃないから、大丈夫だよ怖がらなくても」

そうだよね。アロン君がずっと親友として付き合ってるんだもの。きっと思ってるほどひどい人じゃないんだよね。

「そうですか。そしたら少し警戒を解いてみます」
「あはは、そうそう、警戒警報解除。・・あれえ?蛍光灯5本しか補充されないのかよ。やっべえじゃん。こないだの2本ってけっこうでけえな」
「そうです。勇夫さんによく言っといて下さい」
「俺が?小泉、厳しいなー」

いけない。わたし、自分で悪い印象与えてる?

「俺たち、問題児?」
「そうですね」

いけない。わたし、どんどんだめな方にいってる!もうそういう聞き方やめようアロン君!

「俺って・・」
「あ、そ、そうだ。イザベルさんのクッキー」
「え?」

裕美子は急いで話を変えた。

「ど、どうだったんですか?」
「ああ、あれ?おもしろかったよ」
「え?お、おもしろい?」
「最初のはすっごく甘くて、次のはぜんぜん甘くなかった」
「え?甘くないクッキー?」
「砂糖入れ忘れたのかな。手作りって事だよね。すげぇよな。また作るんだろうか」
「また作ってきたら・・貰うんですか?」
「せっかく作ったんなら貰うと思うけど・・小泉も食ってみる?」
「・・いえ、いいです。イザベルさんに悪いですから・・・」
「ふうん、そうなの?」

『こういうところは男の人って鈍感なんだから・・・なんかまた胸がズキッとする。聞かなきゃよかった』

作業に戻るとイザベルのクッキーのことを思い出してる暇もなくなり、アロンと声を掛け合ってお仕事しているのがうれしく、楽しく、そして、どんどん心惹かれて行くのが分かった。





アロンの手際が良かったので、消耗品の在庫補充はすんなりと順調に終わった。

『キッカ先輩達とやる作業終わっちゃった。なんかすごく気持ちよく進んだわ。次こうしようっていうのがすっと伝わって、とってもすんなりと・・・』

倉庫のドアを閉め、鍵をかけながら、裕美子はまた勇気を絞り出す努力をしていた。

言わなきゃ、毎月絶対会うために、言わなきゃ・・・まだ、イザベルさんの彼氏に決まったわけじゃないんだから・・・

ガチャンと鍵の閉まった音がした。

「終わったね。お疲れー」
「あ、あの」
「・・ん?」
「今日は、ありがとうございました。アロン君すごく慣れてて、こんなにすんなりできるとは思いませんでした」
「別に慣れてはないけど、確かにスムーズに終わったね。勇夫やレソフィックと道場でやったときはもっとひどかったよ」
「そ、そうなんですか?・・・あの、それで、・・また搬入のときは手伝ってくれるとうれしいんですが・・・」
「次の?来月の搬入?」
「はい。あの、できたら来月だけじゃなくて、わたしが搬入やってるとき・・・すごく上手だから、安心できます」
「毎月1回だっけ」
「月最初の火曜です。あの、厚かましいですが・・・例のわたしからのお願いごととして、依頼したいです・・」

キャリー歓迎を代わってあげたことへのお返しとしてのお願い事。裕美子の切り札だ。

「うおー、ここでそれ持ってきたか!小泉、勝負師だな」
「・・え?だめ、ですか?」
「わかった、やるやる。恩人だかんな。そんな労働提供で済むんだったらお安い御用だよ」

・・・やった、・・・やった、・・やった!

これで毎月1回必ず、ぜったいアロン君と一緒になれるときが来る。それに加えて消耗品の受け渡しがあれば、搬入とは別に月に何回かわたしはオフィシャルにアロン君と一緒になっていい時間が来ることになる!

「どうした小泉?口半開きにして」
「あ?あわわ・・」

急いで口を手で隠した。く、口?いったいどんな顔してたんだろう。は、恥ずかしい。

どうやら思ってる感情と表情が一致してないらしいのでどんな表情だったのかわからないが、とにかく顔を隠す意味もあって裕美子は深々と頭を下げた。

「あ、ありがとうございます」


次回「第2部:第4章 クラス委員決め(9):ダーニャの相談所」へ続く!

前回のお話「第2部:第4章 クラス委員決め(7):初仕事」


対応する第1部のお話「第1部:第5章 クラス委員」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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無事本当のお願いを伝えることができましたね。不定期なものじゃなくて定期的に確実に会えるようにする、これが本当の狙いでした。
隣に座っていることから、クラスの委員の仕事まで、偶然そこにいたと思われた裕美子はすべて根回しされたものだったのです。
女の子の間では嫌われそうですね。
在庫追加の作業がすごくすんなりいったのは、お互い考えていることがたくさん説明しなくてもすっと分かり合えたからです。この2人は相性が抜群によいのです。第1部でまだカップルになる前(つまりまだ裕美子ノーマーク状態)のお話の中でも、ぴぴっと通じ合っちゃってるシーンが何ヶ所かあるはずです。探してみてね。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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やま

おはようございます
運動会の延期のため水曜日は会社を休みます。
今週も結構バタバタしそうかな・・・・・・・
でも6年生なので(娘は1年生) ここは・・・・・・やっぱり。
by やま (2012-09-24 07:12) 

TSO

ぼんぼちぼちぼちさん、bitさん、yamさん、あいか5drrさん、てるせさん、青竹さん、hetianソウソウさん、(。・_・。)2kさん、いっぷくさん、「直chan」さん、やまさん、くま・てーとくさん、ネオ・アッキーさん、niceありがとうございます。

やまさん、コメントありがとうございます。コメ返し遅くてごめんなさい。
運動会無事できてよかったですね。今日は台風のなかコンサート、がんばってください。(^^)/
by TSO (2012-09-30 13:07) 

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