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<第2部:第5章 俺の家は海賊(2):出かけ前の朝> [片いなか・ハイスクール]

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「片いなか・ハイスクール」連載第275回
<第2部:第5章 俺の家は海賊(2):出かけ前の朝>


その週の週末の朝。裕美子は一人ダイニングで朝食を取ろうとしていた。
オーブントースターで焼きあげたほくほくのパンの上には、今封を開けたばかりのバターがとろけている。手にはアカシアの蜂蜜の瓶。少々高価だが、このクセのない蜂蜜を使ったハニーバータートーストが裕美子は好きだった。
そこへ今しがた起きてきたお母さんが部屋に入ってきた。

「あら、裕美子。早いのね、今日は休みでしょう?」
「はい。ちょっと出かけてきます」
「まあ珍しい。お友達と?」
「はい」
「デートとか?」
「あり得ません。クラスメートのお家にみんなで行くんです。クラスのみんなが行くんで、行かないとその方が変なので」
「あらそう。帰るのは夕方?」
「そんなにかからないと思います」
「ふーん。せっかくだから最後まで遊んできなさい、遅くなってもいいから」
「・・・それが年頃の娘に言うこと?」

お母さんはニヤニヤとしていた。その顔に『できるもんならやってみなさい』って書いてある。絶対できないと自信たっぷりのようだ。
でも、確かにやれって言われても、最後まで皆といることはまだかしも、年頃の娘だからと心配させるようなことをするのは自分には無理だと思った。そんな勇気ないし、したいとも思わない。あるとすれば、せいぜい皆が帰る時間が本当に遅くなることくらいだ。
それだってきっとわたしには苦痛だ。何をしたらそんなに遅くなるまで過ごしていられるっていうのだろう。そもそもわたしは、あそこに溶け込める自信が、ない。

『アロン君も来るからアロン君に会えるのは嬉しいけど、みんなのいる前でお話する勇気ないし、アロン君だって用もないのに話しかけてなんてくれないだろうし・・』

女の子がみんな引き上げるか、アロン君が帰るって言ったら、それでわたしも帰ろう。

すると自分のケータイにメールの着信を告げる音がした。ハウルからだった。ハウルとはキャリーの歓迎準備をしたときにメルアドの交換をしていたのだ。
メールを開くと、短くメッセージが入っていた。

--(一緒に行こうよ。駅前で待ってるね)--

後ろからお母さんが覗き込んでいた。

「な、何見てるの」

お母さんは頬に手を当てて嬉しそうに大きく口を開けた。

「すごい!お誘いが来てるじゃないの!」
「お、お、女の子ですよ、クラスの」
「これが男の子だったら、お母さん今夜シャンパン開けちゃうわよー」

相手にするの止めようと思った。

「その子帰るまでずっと遊んでていいからね!」
「・・悪い人だったらどうするんですか」
「そんな人にメールアドレスなんて裕美子が教えるわけないでしょう」

なんかもうみんな見透かされている。
はあーっとため息をつくと、もくもくとパンを食べた。


次回「第2部:第5章 俺の家は海賊(3):カモメのマーク」へ続く!

前回のお話「第2部:第5章 俺の家は海賊(1):アンザック君ち行こう」


対応する第1部のお話「第1部:第8章 俺の家は海賊(1)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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前回「片いなか・ハイスクール」が真似してしまったんではと思うほど展開に類似があった漫画「鴨川ホルモー」について書きました。その後、原作の小説を入手して読んでるところです。
そして、ここでもまたTSOは強力に近似感を覚えてしまいました。またしても楠木ふみが、「片いなか・ハイスクール」の小泉裕美子にかぶってしまったのです。それは物語の内容というより、書き手側からの目線ででした。
楠木ふみは「鴨川ホルモー」において真のヒロインです。でも物語を完成させるためには、そのことを悟られないよう読者にも隠していかなければなりません。楠木ふみの恋心が明らかになるのは、マンガでは3分の2、小説では5分の4以上物語が進んでからです。でも目に触れないほど遠い存在にしてはならず、いやむしろある程度重要キャラとして目に付けさせ、でもマークを逃れ続けさせなければならないという絶妙な記述バランスが必要でした。
一方で「鴨川ホルモー」には読者に明らかに目に付くヒロインとして早良京子という女性が出てきます。主人公は早良京子に一目惚れするので、彼女についていろいろな描写やドラマがあり、読者の目を引き寄せます。片やもう片方の女性、楠木ふみは当初変な女として描かれます。でも、でもですよ。もしおかしな女で終始するにしてはその場その場の描写が丁寧すぎるし、字数もずいぶんたっぷり使ってませんか?でも文面からは必死にそれを否定しようとして読者から隠そうとしている。そんな風に見えました。これは小説でないと分からなかったことです。
そんな風に見えたのは、まさにTSOが「片いなか・ハイスクール」の話の前半で裕美子を書くときがそうだったからです。アロンと裕美子がくっつくのは規定事項。しかも入学式の時に見初めておきながらそれを悟られないよう、しかしきちんとつかず離れず登場させなければならない。でも愛着あるキャラだから、登場させるとどうしてもいっぱい書いちゃう。だからバランスを取るために、「鴨川ホルモー」の早良京子の位置に相当するカーラを目立たせるための物語を別途ずいぶん考えなえればならなかったものでした。もっとも「片いなか・ハイスクール」は主人公が攻められる側で、アロンにアタックする娘がたくさん出てきて本命(と思わせる)カーラに同情が集まるという構図でした。そのカーラも切り捨てられて、真のヒロイン小泉裕美子が残るということで、少しはオリジナリティを保てたでしょうか。
果たして本当に原作者の万城目学氏が、そういう気持ちで楠木ふみの出番のところを書いたかは判りませんが、似た展開の小説を書いてしまった者からは、筆が動いているときの葛藤がだぶって見えるようでした。
今「片いなか・ハイスクール」第2部は裕美子視点ですから、裕美子のストレートな想いをたっぷりぶつけられています。それをひた隠しにしようとした第1部の葛藤を、対応する第1部のお話から見つけてくれればと思います。

※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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by TSO (2012-11-20 23:44) 

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