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<第2部:第5章 俺の家は海賊(3):カモメのマーク> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第276回
<第2部:第5章 俺の家は海賊(3):カモメのマーク>


アンザックの家はまるで南国のリゾートのようだった。あちこちに飾られている民芸品や観葉植物、珊瑚や貝。一目でコレクションの主は世界中の海を渡り歩いた人だと分かるものだった。しかしコレクションで目を引くのはやはりいろいろな船具だ。舵ばかりが飾られている壁や時鐘がずらっと並んだ棚、コンパスや天測器具、庭には錨やスクリューもあった。
みんながその珍しい陳列物に目を見張り、あちこちに散らばっては「すげー、すげー」と感嘆の声を上げていた。

裕美子もまた、いろいろなものに目を奪われていた。

『本当に海から引き上げたものなんだ。沈没船の宝探しって、本当にやってたんじゃないの?』

だからと言って海賊というのは短絡的すぎる気がするが、金銭的なだけでなくいろんな面で価値ありそうなものも沢山ありそうだった。
飾られているものはきれいにクリーニングされているうえにピカピカに磨かれている。引き上げたばっかりはどんななんだろう。こんなに綺麗なわけないから、その手間を考えるとアンザックのおじいさんは随分まめな人だ。
展示前のものが置いてありそうな一角を見つけ、裕美子はそっちに行ってみた。
するとそこにはアロン達がいた。

『うわ、アロン君だ』
アロン達も未整理品に興味を持って、こっちに来たようだ。

「レソフィック、このきれいにしたやつ、1872年ってあるぞ」
「こっちのは1700年代だ。へー。なんだ、古いのも結構あるんじゃないか。アンザックのやつ、自分家のものくらいよく見ろっての」

近くにやって来た裕美子に気付いてアロン達は振り向いた。そこまで行って引き返すのも変に思われると思ったので、裕美子は自分の興味に従ってそこにあるものを見てみることにした。
そこには沢山の時鐘が置いてあった。汚れ方は様々だが、いろんな過程のがあって、クリーニングされていく様子が分かる。やっぱり大変な作業だ。たぶんこれ、一人でやっているのではない。行程ごとに手分けして何人かでやっているみたいだ。おじいさんにはお友達がたくさんいるらしい。

『この緑青もついてずいぶんくすんでいるのでどれくらい古いものなんだろう』

そう思って他のと1つだけ少し離れたところにあった、大きく凹んでいる時鐘を屈んで観察した。
その時鐘は何か大きな衝撃を受けたようだ。欠けたプレートがかろうじてくっついている。そこには船の名前の一部だろうか「ラー」と書いてあった。年代は分からない。向きを変えると、海の付着物の隙間からカモメのマークが彫ってあるのが見えた。

『あれ?このマーク、どこかで見たことある。・・・たしかお父さんがお仕事で乗せてもらった船だ。わたしがまだ小さい時で、わたしも乗せてもらって、カモメに餌をあげて遊んだからよく覚えてる。ということは今もある会社か組織のだ。思ったより新しいものかもしれない』

そのすぐ横に転がっていたガラスの割れた羅針盤も見ると、同じカモメのマークがあった。同じ船のもののようだ。手にとって眺めてみると、羅針盤には製造年のプレートが着いていた。1960年。やっぱりそれほど古いものではなかった。
後ろから視線を感じてチラッと見たら、自分の様子をアロン達がじっと見守っていた。

『うわ、見られてる』

そんなにわたしは注意を引くほどおかしな事してただろうか。

何か期待するように見ているので、今分ったことを言ってみた。

「この鐘は大分汚れてるけど、きっと比較的新しいものですね」

アロンが応えた。

「そうなの?なんで?」
「この羅針盤と同じカモメのマークが彫ってあります。羅針盤は1960年製ってありますから」
「なるほどねー。同じ船のものか。舵もその船のものなのかな?」

『舵?』

時鐘の横には確かに舵が置いてあった。大きな木製のだった。アロンがこっちにやってきたので裕美子は体が強張った。アロンは舵を見た後裕美子の真横にしゃがんだので、裕美子は心臓が止まるかと思った。

『ち、近い!アロン君、近い!』

その時、裕美子は抵抗できないと思った。彼を想う気持ち、好きだという気持ちに・・・。

決して付き合うことはできない。だけど、彼を遠ざけられない・・・。
わたし、どうしようもないほどこの人に惹かれてしまっている。

そんなこと思っているのが横にいるとはつゆ知らず、アロンは熱心に時鐘を観察して、欠けたプレートを指でなぞると、

「船は違うかなあ」

と言ってまた立ち上がった。そのままアロンはレソフィックや勇夫と話しながらゆっくり移動していった。
まだ胸のどきどきが収まらなかった裕美子は、何回も深呼吸してなんとか落ち着きを取り戻すと、アロンが言っていた舵をよく見た。舵には「ワリルドノア」と船名と思われるプレートが着いていた。

『ほんとだ。この舵は、鐘と羅針盤の船とは別のものだ』

向こうではアンザックのおじいさんが部屋に来たようで、皆がおじいさんを質問責めにして賑やかである。
裕美子もそこを離れると、おじいさんの話がよく聞こえる方に移動していった。
そんな時、家の入り口の方から太い声が聞こえてきた。

「よう、海賊」

みんながその言葉に固まった。


次回「第2部:第5章 俺の家は海賊(4):あるはずのない遺物」へ続く!

前回のお話「第2部:第5章 俺の家は海賊(2):出かけ前の朝」


対応する第1部のお話「第1部:第8章 俺の家は海賊(2)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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TSO

いっぷくさん、あいか5drrさん、ネオ・アッキーさん、Lobyさん、bee-15さん、くま・てーとくさん、つるぎうおさん、bitさん、ふぢたしょうこさん、ぼんぼちぼちぼちさん、CROSTONさん、niceありがとうございます。
by TSO (2012-12-02 23:28) 

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