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<第2部:第5章 俺の家は海賊(4):あるはずのない遺物> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第277回
<第2部:第5章 俺の家は海賊(4):あるはずのない遺物>


「よう、海賊」

今、この場でグッドタイミングなセリフを吐いたのは、海上保安庁の警部だというダグラスという人だった。

何の恨みを買ってしまったのか、アンザックのおじいさんは警部にいろいろ因縁をふっかけられていたが、それでも孫の友達がたくさん来ているからと遠慮して(とてもそうは見えなかったが)、途中からゆっくりと展示物を眺め始めた。みんなもさっきまでの華やいだ気持ちが消え失せて、なんだか気まずい雰囲気が漂っていた。警部はそんなことは意にも介さず、相変わらず偉そうに展示物を眺めながら年上のおじいさんに言い放した。

「おまえの縄張りはトラリス海峡らしいな」
「調査対象は世界中に散らばっておるぞ。トラリス海峡もよく行ったが特定の場所に固執しておらん。そもそもあそこで海賊騒ぎは起きておらんだろう。あそこでは、延縄漁船『第4神海丸』の沈没、貨物船『マラヤ』の座礁事故、政府チャーターの海洋機構調査船『レグラド・ラー号』の行方不明、フェリー『ネグロ・ビーナス』の火災沈没」
「さすが詳しいな」
「仕事場のは特にだ。フェリー『ネグロ・ビーナス』の火災では救助と沈没後の調査もやったぞ。海難事故なら他のところもいくらでも思い出せる。xx年マラッカ海峡のタンカー重油流出、xx年日本海不審船事件・・・」

警部は壁いっぱいに舵が飾ってあるところを熱心に見ていた。せっかくおじいさんが次々に挙げる海難事故などまるで聞き流しているようだ。しかし思い出したようにふっと振り返った。

「トラリス海峡では本当に海賊行為はなかったのか?」

裕美子は警部の高慢な姿勢のせいで二人のやり取りをあまり気持ちよく聞けないでいたが、警部のその言葉を聞いた時、頭の中に閃光が走ったようなのを感じた。それは一瞬で一つの結論までたどり着いた。

『さ、さっきの、あの鐘と羅針盤があったところに行かなきゃ!』




おじいさんの話の中に出てきた海洋調査機構。その組織名に裕美子は聞き覚えがあった。
そろそろと目立たないように壁を伝って、さっきの未整理品がある所へ向かった。歩きながら頭の中で閃いた結論に至った事柄をもう一度整理した。

『そうだ間違いない、カモメのマーク、あれは海洋調査機構のだ。お父さんがお仕事で来てもらっていたところのだ』

この角を曲がれば未整理品のところまですぐだ。気持ちが焦る。だけど、慌てて目立ってはいけない。

・・・あの鐘を着けていた船の名は、鐘に残っていたプレートから「ラー」という字が入っていたはずだ。そしてあの鐘と羅針盤はマークが示すように、その船は海洋調査機構のもの。でも、それはここにあってはいけない。だって、それは行方不明船なんだもの。でも、でも、間違いなく目の前にある、あってはいけないものが。
トラリス海峡で行方不明になった、海洋調査機構の「レグラド・ラー号」の遺物が!

『おじいさんはもしかして本当に海賊?!』

未整理品が見えるところに来ると、そこにはまたアロンが戻ってきていた。

どうしよう。
ダグラス警部は舵に興味があるみたいだった。あの鐘の横には確か大きい舵があったよね。アロン君は舵は違う船のだって言ってた。でもあそこに舵を置いたままじゃ、警部はきっとここまで見に来る。そうするとあの鐘も目に留まって、カモメマークに気付くかもしれない。

『逆に舵を遠ざければ、鐘に気付かれないですむわ』

裕美子は行方不明船の遺物を警部に知られたくないと思った。なぜそう思ったのかは判らない。でも、隠さなきゃと強く言うものが心の中にあった。そろそろとアロンの横まで来ると、顔は向けずに、口元に手をかざしてアロンに話しかけた。

「その舵、ちょっと場所変えませんか?」

途端にアロンがガタッと動いた。どうしたんだろうと思って、チラッと横目でアロンを見た。するとアロンは凄い驚いた顔をして裕美子を見ていた。それで裕美子もわかった。

『アロン君も・・・これが行方不明船のものって気付いていたんだ』

びっくりした顔で裕美子を見ていたアロンだが、すぐ裕美子に向かって頷くと、レソフィックと勇夫に小声で言った。

「レソフィック、勇夫、ちょっと警部の陰になるように立ってくれ」

さすがツーカーのこの2人、アロンの要望をすぐさま汲み取ると、すすっと動いてアロンの方に死角を作った。アロンはその死角を利用して静かに舵を動かし、反対側の壁まで移動させた。さすが昔からの付き合いと言うだけある3人の連携に裕美子も感心したが、それより何より、たった一言で裕美子の意図を察してくれたアロンへの驚きもあった。

『やっぱり、アロン君ちゃんと判ってる。備品入庫の時と同じ。わたしの言った意味がちゃんと伝わってる。・・それにしても、なんで行方不明の船のだってアロン君はわかったんだろう』

舵を動かした作戦は狙い通りで、ダグラス警部は舵を見つけるとまじまじと見ていったが、離れた所に置き直したおかげで時鐘や羅針盤には気付くこともなく、嫌な空気だけを残して帰っていった。


次回「第2部:第5章 俺の家は海賊(5):時計の針が再び動き出す」へ続く!

前回のお話「第2部:第5章 俺の家は海賊(3):カモメのマーク」


対応する第1部のお話「第1部:第8章 俺の家は海賊(3)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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コメント 2

F−USA

お久しぶりです
訪問&niceありがとうございます
ずっとブログ∩4こま続けておられてすごいです
尊敬!いまリハビリ中ですが、よければイラストのリクエストどうぞ(笑

by F−USA (2012-11-30 22:05) 

TSO

Lobyさん、ネオ・アッキーさん、F−USAさん、「直chan」さん、いっぷくさん、あいか5drrさん、つるぎうおさん、(。・_・。)2kさん、CROSTONさん、bitさん、yamさん、niceありがとうございます。

F−USAさん、コメントありがとうございます。お久しぶりですね。最近またアップされてるのを発見したのでお邪魔させていただきましたー。
そうですね~、アオイちゃんだけじゃなくて杏ちゃんとかも見たいな~。
by TSO (2012-12-02 23:35) 

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