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<第2部:第5章 俺の家は海賊(5):時計の針が再び動き出す> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第278回
<第2部:第5章 俺の家は海賊(5):時計の針が再び動き出す>


アンザックも連れ出して、みんなは近くのお店へお昼ご飯を食べに行った。この人数なので、店はC組にほぼ占拠されたようなものだった。陣取った一同の輪の中心は、勿論レグラド・ラー号の遺物に気付いたアロンだ。アロンは船の科学館に通ったおかげで、たまたま海洋調査機構のマークを知っていて、裕美子と同じように時鐘に残っていた船名のプレートとおじいさんの話から、あれが行方不明船のレグラド・ラー号のものと感付いたそうだ。
せっかく目立たないように端に座った裕美子だったが、ハウルは裕美子を逃さなかった。

「裕美子も気付いたんだって?」
「メガネは気付いただけじゃなくて、それを警部の目に付かないようにする方法まで考えてくれたんだぜ」

みんなが裕美子の方を見た。

や、やめて・・見られるの慣れてないのに・・


「俺、あの半鐘とコンパスに何か被せて隠そうと思ったんだ。だけどそれやってたらきっと目立ってバレてたよね。だからメガネの機転には本当に助かったよ」
「あなた面白いわぁ。そのもわもわ頭の中どうなってるの?」

『アロン君、わたしのこと「メガネ」とか言うんだ。気にかけてくれるなら別にいいけど・・』

いつか名前で呼んでくれる日が来るんだろうか。

「それでそこにあった舵はおじいさんの船のなんだろ?」

アロンの質問にピザを引きちぎっていたアンザックが答えた。

「ワリルドノアって名前がはいってたんならそうだよ」
「おじいさんの船、今も使ってるんだよな?」
「もちろん。ひと月の半分近くは何らかのことで乗り回してるよ。海好きだからなあ」
「てことは、舵ついてるんだよな」
「そりゃそうだろ。じゃなきゃ操舵できないだろ」
「あっ!」

チャンが気付いた。

「アロンの言わんとしていることが分かったよ」
「??」

おおかたの人はまだ分からないようだった。右横にいたカーラが「どういうこと?」と近寄って裕美子に聞いた。左横のダーニャも裕美子に顔を寄せた。

『いやあ、なにを期待してるの、そんな寄らないで・・』

たとえ女の子でも、まだ触れられるようなコミュニケーションには強い抵抗があった。それなのにこの人達は、体温がわかるほど顔を近付けてくる。肩なんかもうぴったりくっついてるし・・
両側からのプレッシャーに体が強張って、ひっくり返りそうな声を絞り出した。

「き、きっと、行方不明船の、か、舵を、おじいさんの船が付けてると、言いたいんじゃないかと・・」
「ええー?!」

裕美子の周りで女の子達の驚きの声が上がった。遠い方にいるウォルトやパウロが「なんだって?」と聞く。カーラがびっくりした顔のままパウロの方に言った。

「おじいさんの船が付けてるって・・レグラド・ラー号の舵を・・」
「えっ!」

ミシェルやウォルトもびっくりすると、そのまま首を旋回して目線をアロンの方に向けた。

「さすがだね。俺もあそこにはもともとレグラド・ラー号の舵が、鐘やコンパスと一緒にあったんじゃないかと思う。舵だけ交換して、外したワリルドノアの舵が置いてあったんだ」
「まじ?!」
「ホントかよ!」
「行ってみれば分かる」
「そっか、それで飯食ったらおじいさんの船見に行こうって言ったのか」

ハウルが右手を上げて立ち上がった。

「はいはいはい!行く行く!」
「私も!」

カーラも手を上げた。そして

「裕美子ちゃんも、行こう」

と裕美子の手を取った。反対側ではダーニャも裕美子にニッと笑った後、美女の方へ向き直した。

「シャルロット、もうちょっと時間大丈夫だよね」
「うん、私も気になる。舵だけは本当に付いてるか見てこう」

アロンが言った。

「よーし、おじいさんの船に行くぞ。海賊疑惑をはっきりさせようじゃん」

朝の気持ちのままなら、乗り気でなかった裕美子はここで帰るところだったろう。でも、思いがけない探偵ごっこで興味が湧いてきたことに加え、みんなが自然と自分を誘ってくるのになんだか断り辛かった。

みんなはわたしがいることに違和感がないみたい。溶け込めないと思ってたのに・・そう思っていたのはわたしだけなのか・・

裕美子は、残ることにした。

『アロン君がいる間は、残ってみよう。アロン君ともう少しいたい。この何か通い合うものをもう少し感じたい。それに、舵の秘密も知りたい』

こうして31年間止まっていたレグラド・ラー号を巡る時計の針を、彼らは再び動かしたのだ。時の神は、C組のみんなが、アロンが、そして裕美子が揃うのを待っていたかのようだ。この子らがいなかったら、事件はあのようには解決しなかったかもしれない。そしてアロンと裕美子にとっても、必要欠く事のできないイベントだったと、今なら分かる。


次回「第2部:第5章 俺の家は海賊(6):ダイジェスト」へ続く!

前回のお話「第2部:第5章 俺の家は海賊(4):あるはずのない遺物」


対応する第1部のお話「第1部:第8章 俺の家は海賊(4)」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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トップ絵をクリスマスバージョンに変えました。2010年に描いた絵の再利用ですが・・・。
しばらく留守がちになりますので、更新は自動にしてご訪問も遅れますゆえご了承ください。
寒くなりましたので風邪など引きませんようお体に気を付けてください。

※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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nice!(9)  コメント(2) 
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コメント 2

F−USA

topがクリスマス使用ですね
カラーイラストを描けるのがうらやましいです、尊敬!

by F−USA (2012-12-05 23:37) 

TSO

CROSTONさん、toramanさん、くま・てーとくさん、yamさん、ふぢたしょうこさん、F−USAさん、ぼんぼちぼちぼちさん、bitさん、niceありがとうございます。
F−USAさん、コメントありがとうございます。リクエストにも応えていただいてありがとうございました。あんなかわいい美少女を描けるF−USAさんがうらやましいですよ~。
by TSO (2012-12-31 00:08) 

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