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<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(1):在庫台帳上の黒板消し> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第281回
<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(1):在庫台帳上の黒板消し>


月曜日の放課後。生徒会はまだ集まりきってなかった。
裕美子は1年生の末席にちょこんと座り、静かに始まるのを待っていた。同じC組の生徒会委員チャンは、A組やB組の人に捉ってあの海賊事件のことを話している。
あれだけ根が深く、大事になった海賊事件である。しかも当局が追いつかないうちに、引退した海の男達と高校生だけで海賊達をとっ捕まえてしまったのだから、当局としてはあまり不甲斐なさの真相がばれないようにするのに躍起になっていた。そんなわけだからC組から直に話を聞ける分校では、リーダーのチャンなど引っ張りだこだ。

ふと、入り口の方でどこかで聞いたことのある声がした。

「・・・すけど、1Cの小泉はいますか?」

わたし・・?

すぐ2年のキッカ先輩がわたしを呼びに来た。

「小泉さん。安全委員のアロン君が呼んでますよ」

ア、アロン君?!

顔がかあっとなった。
でも、裕美子がこう感じても、メガネで隠された表情はほとんど変化が現れないことを、この数ヶ月の皆の反応から自覚していた。

だから慌てなくていい。おどおどしないように・・・。
アロン君が生徒会に、特に安全委員と名乗ってやって来たということは、消耗品関係のことだろうな・・。

慌てないようゆっくりと椅子から立ち上がり、入り口の方に歩いていった。なぜか向こうから残る2年の女子先輩2人もやってきた。



裕美子が入り口のドアのところにぽつりと現れたところで、アロンは裕美子を見た後、その後ろに目線を移して、口元に少し戸惑いの色を見せた。すぐ後ろにキッカ先輩をはじめとする2年生の生徒会女子3人が並んで一緒に様子を伺っていたからだ。言いにくいらしく、少し戸惑った後、アロンは裕美子に用件を言い始めた。

「消耗品のことで来たんだけど・・・、黒板消しって・・あるかな?」
「黒板消し?・・・ホワイトボード用のではなく、ですか?」
「うん。チョーク用の、黒板消し」

頭の後ろを掻きながら、何でだか少し照れたような顔をして・・・、アロン君、かわいい・・。でも、わたしにはちょっと覚えがない。

裕美子の後ろにいて話を聞いたキッカ先輩も
「黒板消しなんて出庫したことも、補充したこともないわ」
と言った。

「ちょっと台帳取ってきます」

裕美子は備品管理台帳を取りに生徒会室に戻っていった。兄弟校も設備を本校に合わせる方針から、分校でも一般の授業ではホワイトボードを使い、チョークを使う従来の黒板は、教室の後ろの連絡用や一部の教室などに限られていた。コストの高いホワイトボードなんかを導入したのは、本校が見栄っ張りだからだという。
2年の先輩達はその場に残り、なにやらアロンに質問をはじめた。こっちもあの海賊事件のことだ。

「ね、ね!アロン君、海賊と闘ったって、本当?」
「え?アハハ・・・、別に蹴ったり殴ったりして闘ったわけじゃないですよ」
「でも、捕まえて縛り上げたって」
「奇襲攻撃でタックルして倒したところを、2人がかりで動けないようにしただけで・・そんなだから相手もほとんど無抵抗で、闘ったってほどじゃ・・」
「すごおーい!!」
「タックルしたんだ!海賊にだよ?!」
「いざとなったらやり合う覚悟の上でしょ?普通じゃできないよね!」

レソフィックに声かけるのをやめ、アロンにアタックしてみようかなんて言ったキッカ先輩達である。裕美子はなんだか心配になった。
書棚から台帳を取り、ぱらぱらとページをめくりながら入り口に方に戻ると、ちょうどアロンの前に着いたころ、黒板消しが見つかった。

「ありました。3つ在庫があります。最終補充日は、12年前です」
「あるんだ」
「そりゃチョークの黒板だってまだ教室の後ろとかで現役だから、関係するものは一通りあるんでしょ」
「でも最終補充は12年前って、やっぱり使用頻度は少なくなって消耗もしなくなってるのね。最後に出したのはいつ?」
「9年前・・です」

裕美子は台帳から目を上げた。

「もうすぐ生徒会会議が始まっちゃうから、後で見つけて届けましょうか?」

裕美子がアロンに尋ねると、2年の先輩が

「へーきへーき。後から入ればいいから」

と一旦生徒会室に入って言付けすると、すぐ戻ってきた。

「オッケーよ」

と親指を立てた。

「ありがとうございます。それじゃ倉庫見に行ってみます。アロン君ここで待ってますか?」
「いや、俺も行くよ。さっきの話だと、どこにあるかもきっと分かんないんだろ?探すようなら俺も手伝うし」

来てくれるの?うれしい。

と思ったが、すぐ嫌な予感がして、それもすぐ当りだと判明した。

「アロン君、いこいこ」
と2年の先輩達3人とも付いてきたのだ。

「な、なんか親切すぎて変だと思った」

それも、2人はアロンと手を組んで。両手を取られたアロンはほとんど連行されているような状態だった。

わたしの好きな人といちゃいちゃと・・なんだか無性に悲しくなってきた。

「ちょっと、その前にアロン君・・」

アロンと両脇にいる2年先輩達は止まると、一緒に振り返った。

「黒板消しって、なくなるような消耗のしかたをするものじゃないですけど、どうしたんですか?」
「あ、ああ・・・壊れた」
「布のところが破けたとかですか?程度によってはわたしで直せるかもしれません」

アロンは戸惑っていた。

「いやあ・・」

そして、

「ちょっと失礼」

と両の手を組んでいた2人の先輩に断って腕を開放してもらうと、裕美子のところに戻ってきた。そして顔を、近付けてきた!

な、何を?!ち、近い!アロン君!!

逃げようかと思ったが、手を口にかざしてきたので、これは耳打ちするつもりだと察し、直立不動のまま口を一文字に結んでその場にこらえた。予想通りアロンは少し耳の近くに顔を寄せ、小さな声で言った。

「勇夫とハウルがこれでまた戦いみたいなことしてさ、布の部分は破れさって、手で持つところとだけが残ってる状態で、修理ってレベルじゃないと、思う」

また・・あの2人ですか。あの2人のおもちゃにされたのでは、きっと修理不能ってのは本当に違いない・・・。そんな理由だからアロン君、ためらってたのね。

「分かりました。交換品を探しに行きましょう」

再び倉庫に向かって歩みだすと、2年の先輩達は待ってましたと、戻ってきたアロンの両手をすぐさま奪い取ってしまった。


次回「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(2):黒板消しの実在庫」へ続く!

前回のお話「第2部:第5章 俺の家は海賊(7):エピローグ」


対応する第1部のお話「第1部:第9章 レソフィックの広報記事」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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新章突入です。第1部のお話に追いつくまでにはちょっとかかります。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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コメント 2

タッチおじさん

遅くなりましたが、
今年も宜しく<(_ _)>致します。
by タッチおじさん (2013-01-14 03:23) 

TSO

toramanさん、いっぷくさん、bitさん、yamさん、CROSTONさん、F−USAさん、ぼんぼちぼちぼちさん、Lobyさん、ネオ・アッキーさん、(。・_・。)2kさん、タッチおじさんさん、SORIさん、「直chan」さん、niceありがとうございます。
タッチおじさんさん、こちらこそよろしくお願い致します。
by TSO (2013-01-20 20:09) 

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