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<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(4):黒板消しの予約在庫> [片いなか・ハイスクール]

東日本大震災被災地がんばれ!


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「片いなか・ハイスクール」連載第284回
<第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(4):黒板消しの予約在庫>


「アロン君ー、いますかー?」

女の子の声に、何事だろうと裕美子はひょいっと顔を上げて教室の入り口を見た。
1年C組にどやっとやってきたのは、キッカ先輩を筆頭とした2年の女子生徒会の人達だった。

「うわ・・」
「なんだアロン。知り合いか?」

レソフィックがアロンに聞いた。

「2年の生徒会の人達だ。こないだの黒板消し事件のことで目付けられちゃったみたいだ」
「もてるねえ」

勇夫が言うと、

「どこが!おめーのアホ事件のせいじゃねえか」

その首にチョップを入れた。入れたついでに立ち上がってしまったので、渋々席を立って教室の入り口の方へ歩いて行った。レソフィックも面白そうとばかりににやにやして後をついてくる。


レソフィックを見たキッカ先輩は顔を真っ赤にした。そう、キッカはダーニャの恋愛相談所を介してレソフィックにアタックしようとしてたことがあったからだ。

「あ、あれ?レソフィック君も黒板消し調査手伝うの?」
「ん?俺のこと知ってるんすか?」

初対面のはずのレソフィックは、どっかで会ったっけとキッカをまじまじと見た。

「え、え?あはははは、小泉さんから聞いててねえ・・・」
「うえ!小泉?」

オリエンテーリングでの貸し借りのやり取りで苦手意識を持ったらしいレソフィックは、げっという顔をして裕美子の方を振り返った。
裕美子は知りませんよとかぶりを振る。

「アロン君、黒板消し調査いつやるんだっけ?」

別の先輩が聞いた。

「何で知ってるんですか。生徒会には筒抜け?こ、今度の木曜日ですけど」
「うふふーん、手伝おっか?」

色目を使って言ってきたのを見てアロンは慌てて断った。

「いや、いいです!自分らでできますから!俺らのことだし」
「遠慮しなくていいいのよー。人数いた方が早く終わるしぃ、レソフィック君も手伝っちゃう?」
「え?俺?」
「キッカをエスコートしてくれるとありがたいん・・」

キッカが言い終わる前にへらへら笑いながらその先輩を突き飛ばした。

「これ壊した当事者への罰則ですから、大丈夫です。勇夫とハウルにしっかりやらせますから。じゃないと意味ないし。あ!次の授業の先生来ますよ」

アロンは急いでキッカ先輩達を追い返してしまった。
ため息をつきながら席に戻るアロンの背中にレソフィックが言った。

「なんだよもったいねえ。あれお前目当てっぽかったぞ。年上は嫌いか?」
「何言ってんだ、いいよ。なんか波長合いそうにないし。どうせいじられるだけだ」
「相変わらず相性こだわりか?選り好み激しい奴だな。それか単なるヘタレか」
「うっせい!」

レソフィックを蹴り上げた。





次の日もキッカ先輩達はC組の外に来ていた。開いたドアから教室の中をを覗いているのを見てハウルが声かけた。

「誰かお探しですかー?」
「え?ああ、えっと、アロン君・・いる?」
「うーん、見えないわねえ。何か用なら言付かっときましょうか?」
「ああ、いいのいいの。どもね」

3人が去っていくのを見てハウルはカーラに言った。

「ここんとこあの先輩達よく来るわね」
「うん・・生徒会の人達らしいんだけど」
「生徒会?アロン、何やらかしたの?」
「こないだ壊した黒板消しの代替え品を探すのを、アロン君と一緒にやった先輩達らしいんだけど・・・」
「ああ、アレね」

黒板消しを壊して、替えが必要になった原因を作った張本人のくせに、他人ごとを決め込むハウルである。

「そりゃアロン君ちょっとかっこいいから近付きたくなるのも分かるけどさ、だからって毎日遠い2年生の教育から通ってくるっていうのも節操ないっていうか、肉食系でやあよねぇ・・」

カーラの言に、ハウルとクリスティンが見やってニヤアっとした。

「確かに、おしとやかな乙女のやる事じゃないよねぇ」
「がっついてるみたいよね。ところでかっこいい?」
「ホラ、武道やってるから守ってくれそうだしぃ」
「そっか、アウトドアの知識もあるし」
「遊んだら面白そうだもんねぇ」

クリスティンとハウルがカーラの方に向かって言った。その流れに乗せられてカーラも口が滑らかになる。

「そう、だからわかるわよ、仲良くなりたいって思うのも。・・だけどあんな露骨に・・」

ますますクリスティンとハウルはニヤニヤしてカーラの前に顔を近付けた。

「気になるよねぇ~」
「そりゃあ気になるわよ」

ここでカーラもはっとして2人がニコニコ顔で詰め寄っているのに気付いた。が、もう遅かった。

「カーラ、あなた」
「アロン君のこと」
「気にかけてるんだ~」

カーラが真っ赤っかになった。

「な、な、何言ってるの!」

クリスティンが両手をハウルの肩に乗せて、嬉しそうに寄りかかりながら言った。

「それじゃあ先輩達お邪魔なわけよぉ、アロン君の周りにウロウロ」

ハウルはそれはもう面白そうに応えた。

「わかった!今度来たら追い返しちゃお!」
「な、なんで?!」




始業時間が近くなってアロン達が戻ってきた。そこへハウルがやってくると、ニコニコで話しかけてきた。毎度表情と仕草だけは可愛げである。

「また来てたわよ~、2年の先輩達」
「まじ?逃げといてよかった」
「なあに、逃げてたの?」
「黒板消し調査終わるまで気が抜けないな」
「黒板消し調査?・・ふーん」

ハウルは少し考えると、ぱっと思い出したように言った。

「さっきね、海上保安庁のお偉いさんが来てて、例の海賊事件のお礼って言って校長先生にお菓子置いてったのよ。結構な量だから生徒に配るんだと思うのよね」
「??」

そこに居合わせたみんなが何言ってんのか話が噛み合わなかった。

「勇夫、お菓子食べたいよね?」
「おう。もしかして独り占めする方法見つけたのか?」
「ハウル、ダメよぉ!、悪いことしちゃ~」

速攻でクリスティンが注意に入るのはさすがだ。

「独り占めなんてしないわよ。でも少し多めにもらえると思うのよね。勇夫!黒板消し調査、今日やっちゃうよ!」
「え?そ、それとお菓子に何の関係が?」
「私に任せなさーい。カーラ、これで終わらせちゃえば先輩達も来る用事なくなるから」
「ええ?!ななな、何のこと?!」

カーラが真っ赤になって慌てた。
アロンの横の席で、裕美子はいつものようにワイワイやってるアロンとハウル達の様子を、まるで関心がないかのように横耳で聞いているだけだった。が、心の中は決して無関心な訳ではなかった。

『アロン君、ハウルさん達とは仲いいんだな。キッカ先輩達からは逃げてる風なのに・・アロン君、人当たりいいけど結構好みははっきりしてるんだ』

つまり、逃げる態度を取ったときは、そんな好きではない人ってことだ。逆に言えば逃げない人は好きって事。
ハウルさん達は気に入られてるんだ。

『・・・あそこに、わたしも混ざりたいな・・』





次の休み時間。裕美子の前をずかずかと横切っていったハウルは、戻るとき勇夫の襟首を掴んで引きずって行った。
その次の休み時間からはアロンも連れて走って飛び出ていった。

キッカ先輩達がやってきたが、裕美子を見つけてアイコンタクトでアロンの所在を聞いて、首を横に振って答えると、首を傾げながら帰っていった。


午後の最初の休み時間が終わったとき、ハウルが紙袋を手に教室に戻ってきた。

「はーい、C組のみなさーん、海上保安庁からご褒美のお菓子ですよー」

そう言うと、勇夫と端から練り歩いて高級パウンドケーキを配り歩いた。

「いらない人は言ってね。甘いのだめな人とか。あっ、ジョン、あなたこういうの嫌いでしょ」
「食べる食べる。ここのパウンドケーキ旨いんだよね。雑誌の撮影の時、差し入れでもらったことあるよ」
「えー?」

あからさまにハウルは残念そうな顔をした。

「ハウル、余らなかったのはここが初めてだぞ」
「いやしいのが揃ってるわね~」
「おめーらがその最たるヤツじゃねえか。いらないって言った人のを全部自分のにして!」

そう言ってアロンが丸めた紙で勇夫とハウルの頭を叩いた。そして裕美子の所に来ると、その丸めていた紙を解いた。それは黒板消しの調査結果を記した校内地図だった。

「もう調査やっちゃったの?何が、あったんですか?」
「海上保安庁が海賊事件のお礼にって持ってきたこのお菓子を、各教室に配るのを先生から請け負ってきたんだ。教室に入る理由になるし。それで配る傍らで、黒板消しの痛み具合も見て回ってきた。それがさ、一人一人にケーキ手渡しして、甘いのとかケーキ嫌いな人がいたらそれは自分らで貰っちゃうって意地汚さでさ。呆れちゃうよな」
「はあ・・」

確かに呆れた。

「資源を大切にしてるんじゃない」
「物品破壊魔が言うか!」
「とにかくこれで、なんかよく来る先輩達がたかってくる口実の用事は済んじゃったし。うれしいでしょ」
「あ・・そうだな。そんなこと考えてたのか?なんで?」
「うっとおしいからよねえ、カーラ」
「し、し、し、知らない!」
「ありがとさん。でもすぐ他の用事見つけてやってきそうな気がするけど」

校内地図を受け取った裕美子は、その後のやり取りをもう見てなかった。校内地図に書かれた黒板消しの痛み具合コメントに集中してしまっていたのだ。こんなだからクラスの中の様子に疎いのだ。

『痛みの激しいのが2つある。調べておいてよかった。実在庫は1個。この1個は必ず保持しておくようにして、2個補充しよう。行方不明の1個は無いものとして見て、もし見つかればラッキーってことにして・・。そうすると予約在庫2個と合わせて、仮想在庫は3個っと』

ハウルやカーラ、アロンらがまだワイワイやっているのには目もくれず、手帳を開くと、やることリストに丁寧な字でメモ書きを始めるのだった。


次回「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(5):広報記事の決定」へ続く!

前回のお話「第2部:第6章 レソフィック宅の宴会(3):黒板消しを壊した人たち」


対応する第1部のお話「第1部:第9章 レソフィックの広報記事」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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