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<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(5):無意識の危機感> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第311回
<第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(5):無意識の危機感>


カーラがホワイトボードの横に貼ってあるカレンダーをめくって7月にした。
このカレンダーは文化委員のカーラが初仕事でシャノンと作ったもので、日付の上にはシャノンが街中で撮影した猫の写真を引き伸ばしたものになっている。7月は猫が全身を伸ばして道路から手前の川か池に向かって大ジャンプしている写真だった。
水の嫌いそうな猫がなぜ盛大に飛び込もうとしているのか。このカレンダー用の写真を撮るにあたって、シャノンは被写体の猫をアンザックに執拗に追いかけさせていた。そして追い詰められた猫が、思いも寄らぬ行動を取った瞬間を集めたのがこのカレンダーなのだ。


裕美子は自分の席で文庫本を読んでいた。カレンダーをめくり終わったカーラが、裕美子の横にいるアロンの後ろをゆっくり通っていった。と思ったら、アロンの後ろで立ち止まってじっとている。気になった裕美子はちらっと目をやった。カーラはアロンが手にしているものを見てるようだった。そして少しの間もじもじすると、アロンに話しかけた。

「そ、それ何の写真?」
「これ?ホタルだよ。ホタルが光りながら飛んだ航跡の写真」


20100514_ホタル写真見せs.jpg

『ふうん。アロン君、写真を持っていたのか』

何かカード状の物をめくって見てるなあと思っていたのだが、気にとめてないふりをしていたので、確かめていなかったのだ。裕美子は依然そ知らぬふりをして、本に目を落としながらも聞き耳を立てた。

「へぇ、きれい!ホタル?。それ、どうしたの?」
「俺が撮ったんだよ。案外近くなんだぜ」
「え?この近くでホタルが飛んでるの?どこ?」
「秘密」
「ええ?教えてくれないの?」
「こないだ偶然見つけてさ、まだだれにも教えてないんだよね。あまり有名にしたくないし」
「そうなんだ・・・」

しばらく二人は会話を続け、話が途切れたところでカーラは立ち去っていった。
裕美子は文庫本の開いているページに栞を挟んだ。

『ホタル飛んでるとこ、秘密だって。有名にしたくないから、教えないって』

あまり知らない人や、いわるゆ単なるクラスの男女程度の仲ならならそうかもしれないけど、カーラとは海賊事件のときも最後まで一緒にいて戦った仲だ。内容にもよると思うけど、これくらいの秘密なら共有してもいいんじゃないだろうかと思った。水臭い。
海賊事件のとき同じく最後までアロンと一緒にいた裕美子は、もし自分にも「秘密」なんて言ってきたらどうするだろうと思った。

「わたしはそんなに信用ないですか?ペラペラと人に言いふらすようなふうに見えますか?」

素直でない今のわたしはそんなふうに責めちゃうかもしれない。でも、素直なままならこう言うはずだ。

「秘密、教えて欲しいな。そして、二人だけの秘密にして、連れてってくれないかな」

そのセリフを想像しただけで顔が火照ってきた。裕美子はぽっと熱くなった頬に手を当てて思った。
男の人同士の会話ならともかく、女の子の裕美子からそんなこと言ったら・・

『そ、そこまで言ったら、もう告白してるみたいよねぇ。どうみても好意持ってるって、わかっちゃうよねぇ』

かしげた首はアロンの方を見た。

『言ってみたい、言えるものなら・・・。でも・・わたしにそんな資格、ない』

そしてこうも思った。

『さっきカーラさんが、そう言わなくてよかった・・』

カーラさんは、わたしの大切なお友達。実際、気も利いて気配りもできてとってもいい人。それに、遊びにやって来ても、アロン君が逃げたりしない人。それはつまり、アロン君が認めている女の子だということ。
アロン君は、わたしが影から支えようとしている人。だから、誰と付き合うことになったとしても文句言えない、むしろ応援しなくちゃいけないんだけど・・・

カーラさんとは、なんだかくっついてほしくないな・・・


それは、裕美子無意識の危機感だった。


次回「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(6):ホタル見学ツアー」へ続く!

前回のお話「第2部:第8章 7月のホタル鑑賞(4):ヘビーデューティー・ライスクラッカー」


対応する第1部のお話「第1部:第11章 7月のホタル鑑賞(1):2人で行けばよかったんじゃない?」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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ようやく第1部と同じ場面にたどり着きました。挿絵は当時のです。
裕美子は横の席なので、当然この時からずっと見てたということですね。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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by TSO (2014-04-27 21:02) 

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