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<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(4):宿を探せ(4)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第320回
<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(4):宿を探せ(4)>


週が明け、月曜日。
アロン君は登校してきて席に着くと、鞄を置くなりすぐ立ち上がって教室を出て行った。
休み時間もしかり。チャイムが鳴ると直ちにどこかへ行ってしまった。
わたしは空になった席を見つめて、前にもどこかで見たような感覚を覚えた。

「なんだっけ・・」

その机の上を、しゃなりとした綺麗な手がすうっと撫でていった。その手を追うと、それは美女ことシャルロットさんの手だった。

「わぁ綺麗な手。あんなに美人で、手も白くてほっそりしててなんて、神様もずいぶんえこひいきですね・・」

わたしもあれくらい容姿が良かったら、アロン君に気にとめてもらえたかなぁ。

「ユミちゃん、お昼一緒に食べに行かない?」

カーラさんだった。このところわたしはすっかりハウルさんのグループの一員と見なされたみたいで、お昼や放課後になると誰かが誘いにやってくるようになった。

「わたし今日お弁当ですけど・・」
「別にいいんじゃない?あ、そしたら学食の席取っとくのお願いしちゃおうかな」







学食に移動したわたし達は、窓側の席を確保した。暑い日ざしが入る窓側は夏場は人気がないみたいですぐに座れた。

「それじゃ裕美子、お留守番頼むね」

ハウルさんはそう言うと定食コーナーに一目散に走っていった。
絵に描いたような高校生のお昼風景の中に自分がいる。うれしくて胸がじーんとした。部屋の片隅で一人お弁当をつついている日々ばかりを想像し、いつかお友達を作って一緒にお昼食べる日が来ることを祈って入学したというのに、いつの間にか実現してしまっている。分校に来て本当に生まれ変わってしまったみたいだ。

待っている間、壁に掛けられた大きなディスプレイに目をやった。お昼のニュース番組をやっていて、ちょうどこないだの時事問題に出ていた、大都会商事とリゾート開発公社の癒着事件の続報をやっていた。こんどは公社が開発主体だったスキー場が舞台のようだった。福利厚生とか言ってリフト券のタダ券と食事券を発行してもらっていたらしい。

「タダ券だって。ハウルさんが飛びつきそうな券です」
「え?なんの券だって?」

ハウルさんが戻ってきた。と、そのプレートに載ったサラダを見て目が点になった。学食にはサラダバーがあって、1回限り乗せ放題になってた。サラダバー用の小さな皿には斜めに傾いた千切りキャベツが微妙なバランスで立っていた。

「こないだの時事問題になってたリゾート開発公社が、大都会商事にスキー場のリフト券のタダ券を配ってたそうです」

タダ券と聞いて、慎重にテーブルにプレートを置こうとしていたハウルさんの手が一瞬震えた。とたんに千切りキャベツの塔がぐらりと傾く。座ろうとしていたカーラさんとクリスティンさんが口をあんぐり開けて固まった。ハウルさんはプレートを小刻みに動かしながら薄氷を踏むようなバランスを取り続け、目はサラダに凝視したまま震える声で

「ゆゆゆゆみこ、たたたすけて」

と言った。
わたしも体が固まりかけたが、とっさにお弁当箱を開けると、蓋をサラダの横に差し出した。
がんばって立つ必要のなくなったキャベツタワーはどさっと蓋の上に倒れこんだ。
4人してほぉーっと大きくため息をついた。
それどころか周りじゅうからも「おおー」っという声が上がった。

「やだもぅー、ハウルと行くの恥ずかしくてやだー」

カーラさんは冷や汗と恥ずかしさの赤い色を加えた顔を手で覆った。
わたしも『これ、理想の高校生活だったかしら』と少しだけ思い直った。




(ここからは裕美子ちゃんがいないので語り口調が変わります)

その日の放課後。
今日もファミレスの一角を陣取ったハウル達旅行準備メンバー。電話を切ったミシェルが頭を抱えて天井に向かって嘆いた。

「だめだ。ダリ・ビーチは全滅だ!」
「やっぱりシロートじゃ探すのも限界あるんだよ。一度は片いなかトラベルに相談しに行こうよー」
「なんでシャノン、そんなに片いなかトラベル使いたいの?」
「ふふふ、あそこの所長のおじさんがさー、いい人っぽいのよー。あんた達と違ってダンディーでさぁー」
※シャノンはおじさん好みです
「直接面と向かうと学生だってばれちゃうから、相談するとしても電話な」
「ぶーっ。電話じゃ受付の若いのしか出てこないよー」

シャノン、ご不満のようである。

見回すと、今日は学生の客が多かった。どうやら丘の上の片いなか短大も試験が終わり、夏休みに入ったようである。食べてる間に聞き耳をたてていると、みんな何らかのサークルのようで、ハウル達と同じように合宿先を探しているみたいだった。
どんなサークルかというと、聞いたところでは、ビーチバレー、読書、肝試し研究会、砂山建設会、夕日と馬鹿野郎、などなど。

「ビーチバレーを除けば浜辺や海でなくてもよさそうな、どうでもいいサークルばっかりじゃない」

ハウルの言に「それはC組も同じだな」とジョン。

「海に行きたいという願望は、何の集団かとは関係ない事だからな」

するとダリ・ビーチのどこかの宿にかけていた隣の席の会話が聞こえてきた。
「5人部屋3つならある?・・おしい。もう一部屋何とかなりませんか?・・・・ない。そうですか・・」

電話を切ろうとしたところで、ハウルが急に飛び出してきた。

「ちょちょちょちょっとすみません!一瞬その電話貸して下さい!」

呆気にとられてる人達から無理矢理スマートフォンを受けとったハウル、電話の先の宿の人にまくしたてた。

「もしもし?その5人部屋ですけど、一部屋6人は入れませんか?!」

ジョンとミシェルがびっくりて思わず席から立ち上がってしまった。

「・・はい。ベッドがない?ソファーとかは?」

ジョンが割って入った。

「ハウル、だめだろ。それ男女一緒の部屋に泊まらないとだぞ」
「私、別にいいけど」
「他の女子は?了解取ってねえし」
「あたしはどっちかって言ったらイヤだなあ」

とシャノンが言うやいなや、ミシェルが

「シャノンはお子さまだから誰も何とも思わねえけど、美女とかはさすがに嫌がるだろ。イテテテ!」

ミシェルの背中の肉をシャノンがひねり上げた。

「あ、そう。面倒ねぇ。ごめんなさい、やっぱそれじゃだめです。はい・・、どーも」

ハウルはスマートフォンを持ち主に返した。スマホの持ち主は通話を切ると、ハウルに聞き返した。

「あなた達も宿探してるの?」
「そうなんですよ。でも18人もいるから全然空きなくって」
「うちもなのよ。21人いるから、まとまった人数取れるところが見つからないの」
「やっぱり・・。あ、すみません、そちらはどういった感じで?」

ハウルは辺りにいる短大のサークルとおぼしき人達に次々声をかけていった。そのうち

「え?、ちょっ、ちょっとまとめさせて!」

というハウルの大声が聞こえ、紙を持ってウロウロする姿が見えた。そしてテーブルの一つに人が集まってガヤガヤとやりだした。

「なんだか周りを巻き込み始めたけど、大丈夫かあ?」

ミシェルがずるずるとコーヒーを啜っていると、ハウルが帰ってきた。

「それじゃあ、新しい話しあったら融通しあいましょう」
「うん、そっちも頼むねー」

隣の席の人達と挨拶すると席に座った。

「みんなのを総合すると、ネットやホテルガイド本、旅行会社一通り当たったけど空きがないということが分かったわ」
「周り巻き込んでまで・・ご苦労なこった」
「今日のところはこれ以上電話かけても無理っぽいわね。ミシェル、電話代助かってよかったねえ」
「おまっ、それ分かって俺のケータイ使い倒してんのか!」

シャノンは追加で頼んだらしいパフェを食べながら凄いこと聞いた。

「ウチらとあの人達みんな合わせると、100人くらい泊まれるところ探すのー?」
「え?なんだそりゃ!」
「そうなのか?!」

ジョンとミシェルはびっくりした。ハウルは氷の融けてしまったアイスティーを一気飲みし、お替りを入れに行こうと席から立ち上がった。

「まさかー。ずらせるところもあるから、日程はかぶらないで済みそうよ」
「あの連中の分も探すのか?」
「宿の条件はほぼ似たり寄ったりだから、空き部屋の情報をみんなで共有するだけよ。探し手が何倍にもなるんだからすごい効率いいじゃん」

ハウルはドリンクバーコーナーに歩いていった。
ジョンとミシェルは顔を見合わせ、ふーっとため息をついた。

「・・ようやるわ」


次回「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(5):宿を探せ(5)」へ続く!

前回のお話「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(3):宿を探せ(3)」


対応する第1部のお話「第1部第13章 夏のエピソード前編(2):脱げないパンツで対抗?」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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ハウルちゃんのサラダバーネタは、第1部でも3学期の話になりますが、29章「3学期(2):転校に仲間達は」でも出てきてましたね。既に1学期からハウルちゃんは乗せ方の研究に余念なかったようです。
シャノンちゃんはオジサン好み。初っ端の第1部第2章「入学式(2)」でいきなり「高校生ってガキ」発言をして、その後も同級生に興味を持たないようなセリフをあちこちでしてます。第1部第28章「スキー旅行:(2)バスもハウルが手配した」でバスの運転手さんとお話しようとするなど実際そういう行動を取っている場面もあるわけですが、小学生か?と疑いもたれるような容姿なので相手のおじさんは犯罪者扱いされるだろうなあ。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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TSO

くらいふさん、おっつぁんさん、ほちゃさん、ぼんぼちぼちぼちさん、F−USAさん、いっぷくさん、ネオ・アッキーさん、やってみよう♪さん、Ujiki.oOさん、niceありがとうございます。
by TSO (2014-08-28 20:38) 

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