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<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(5):宿を探せ(5)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第321回
<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(5):宿を探せ(5)>


翌日、火曜日。
この日もアロン君は始業ギリギリにやって来た。それはいつものことだけど、ホームルームが終わるなりソッコーで席を立つと、次の半自習授業はチャイムが鳴ってしばらくして先生がやって来るまで戻ってこなかった。さらにその授業が終わると、アロン君は窓の方に目をやるやいなや、慌ててソッコーで教室を出て行った。

『何見て慌てたのかしら』

アロン君の妙な動きに気付いたわたしは辺りを見回してると、一人の女子がてくてくとアロン君の席のところに歩いてきて止まった。そのすらりとした長身の人がわたしに尋ねた。

「お腹でも壊してんの?」

それは美女さんだった。

「わ、わたしですか?」
「ううん、ここの人」
「さ、さぁ・・」

美女さんはどうしたものかという顔でわたしを見るともなく目線をアロン君の机に落とし、しばらくすると教室を出て行った。

思い出した。なんか似てる場面があると思ったら、キッカ先輩達がアロン君を頻繁に訪れてたときだ。あれはキッカさん達を煙たがってアロン君逃げてたのよね。

『・・もしかしてアロン君、美女さんから逃げてる?』

何かあったんだろうか。美女さんの用事を断るなんて、アンザックさんだったら絶対しなさそうなのに・・・。
そういえばアロン君はあんまり見た目で人を選らんでないことを思い出した。アロン君に気に入られるには容姿が良ければいいというわけではない。

『そういう意味では、わたしでも可能性ゼロってことはないかもしれないのかな』

それじゃあというと、よく一緒になる女の子はハウルさんのグループだ。そこにはわたしもいるわけだけど・・・、ハウルさんもクリスティンさんもカーラさんも、容姿いいよねぇ・・・。やっぱり見た目のかわいさはあるのかなあ。・・キッカさん達との違いというと、あからさまな色目使いがないことかしら。純粋にお友達、遊び仲間って付き合いだし。
ということは、わたしも単なるお友達ってことね。それか委員とかのお仕事相手。

お友達になりたいと思ってたわけだから、それはハウルさん達のおかげで叶ったんだ。
それなのに・・なんだか心の空間が埋まらないような感じがした。

望んだ通りの間柄じゃない。何物足りないとか思っちゃってるの?それ以上望みようもないのに。十分願い叶ってるじゃない。遠くで見つめてるだけとかじゃなくて、結構近くにいて、お話できるようになってるのよ。

・・・・

好きって・・・、なんて、欲張りなのかしら・・・。

『それにしても、何で美女さんから逃げてるんだろう』




(ここからはまた裕美子ちゃんがいないので語り部が変わります)

そのまた翌日の水曜日。
この日は追試試験日だった。C組で追試になった者はいなかったのでみんな休みである。ハウルやミシェル達、夏の旅行準備メンバーはこの日も宿探しのために3番ストリートのカフェに集まっていた。

夏休みまであと1週間というのに、まだ宿が見つかっていない。短大の学生達からも朗報はないし、ダリ・ビーチ以外のところでさえも見つからない。ハウル達にも危機感が迫っていた。

「それで昨日、短大の砂山建設会の人達がダリ・ビーチ行って実際に宿見てきたんだって」
「ほうほう、それで?」
「空いてるところなかったって」
「ああー・・・」

同じ悩みを持つ、丘の上の短大のサークルの人達と連絡を取り合っていたハウルの報告に、みんなはがっくりと首を垂れた。

「それなのにさ」

ハウルは話を続けた。

「海岸から5分の所にある好立地の貸しコテージが誰もお客泊まってないんだって。なのに予約でいっぱいだっていうらしいのよ」
「予約入れてるのに使ってないって事か?」
「7月から9月まで借り切ってるらしいんだけど、7月の頭くらいにお客が来ただけで、あとは暇してるそうよ。でも3か月分賃料は出てるから、客来なくてもいいんだって。こんな理不尽なことある?!」
「ひどっ!こっちはない部屋に定員オーバーでもいいから探そうってなったのに!」

シャノンが右のほっぺたにバニラアイスをくっつけながら怒った。あまりにも宿が取れないので、男女混合部屋になってもやむなしとクラスの女の子の了解を取ってあったのだった。しかし先日はそれでねじ込めそうだった宿も、もう手遅れだった。

「そのコテージって何人泊まれるんだ?」
「12人くらい泊まれるのが2棟。2棟よ?!それどっちも空いてるのよ?!」
「うちら全員収容できるじゃん!それも男女別々で使えるじゃん!」

左のほっぺたにチョコアイスを追加したシャノンがさらに怒った。

「その通りよ。例え予約が入ってようと客来ないんだったら、私なら貸しちゃうわよ。一人一泊50カレントとして・・、20人で1日1000カレントよ!私らと短大のサークル合わせて7団体。この人数で平均3泊したら・・・21000カレント?ちょっとこれ凄い額じゃん!私説得してみようかしら」

今にも突っ走りそうになっているので、ジョンはハウルの肩をなだめながら「まあまあ」と落ち着かせようとした。

「なに気安く触ってるの?背中じゅう撫で回して、くすぐったい」
「撮影のとき、女性モデルの人を落ち着かせるのによくこうやるんだ」
「いやらしい・・。そうやってモデル同士でスキンシップ取ってるんだ。いかがわしい業界ね」
「そ、そんなことはないぞ?・・いや、ちょっとは・・いや、ないぞ?!」

ミシェルが口を挟む。

「ところで、誰がそこを3ヶ月も借り切ってるんだ?」
「んー、なんだっけ。最近不祥事を起こしてる会社」
「もしかして大都会商事か?」
「んー、そうかも」

それを聞いてシャノンがテーブルの上にあるミシェルのスマートフォンに手を伸ばした。が、手にアイスが付いていた。ジョンがお手拭で手を拭いてあげるついでに、両のほっぺたのアイスも拭きとった。両目を瞑ってされるがままのシャノンはまるで幼稚園児だ。さっきのハウルに対してもそうだが、なんというかジョンは世話焼きのようだ。
手がきれいになったシャノンはスマホを操作して、大都会商事とダリ・ビーチで検索した。すると、

「リゾート開発公社から福利厚生用として、ダリ・ビーチの研修所と、海の家1軒、貸しボート、貸し浮き輪などを夏季期間に提供受ける。大都会商事からはレジャーボート数艘を公団へ。公団会長らそれで釣り三昧」
「この事件、どんどん広がるな」
「研修所って、その貸しコテージのことじゃないの?シャノン、それいつの記事?」
「今朝のだよー」
「3ヶ月借り切ってるったって、もうその会社使えそうにないじゃん。絶対キャンセルするでしょ!」

ハウルは珍しく自分のケータイを取り出すと、短大のサークルに電話をかけた。それ見てミシェルが呆れる。

「持ってるじゃん、自分の・・」
「もしもーし、片いなかの分校のハウルだけど。昨日言ってた貸しコテージ、連絡先教えてもらえる?」

テーブルの上の紙ナプキンを取ると、そこに電話番号をメモし、電話を切ると、今度はミシェルのスマートフォンを拾い上げ、

「交渉してくる!」

と言って飛び出してった。

「ちょっ、ちょっと!なんでそこはオレのケータイを?!」



数分後、財布の中身を見ながら涙目のミシェルと共にハウルが戻ってくると、自分のケータイで短大のサークルに電話し、

「今から貸しコテージに電話して予約入れて。・・・・うん。いくつも依頼来て埋まるようならやるって。私のところだけじゃ信用なくって。みんなで電話しまくってほしいの。・・・うん、「ビーチバレー」と「夕日に馬鹿野郎」へは私から連絡する。よろしく、じゃね!」

電話を切ると、ハウルはVサインを返した。

「勝ち取ったわ!。予約が確定したらミシェルのケータイに折り返し連絡来るから」

首を左右に振るジョンに、スプーンを咥えたままぱちぱちと拍手するシャノンだった。


次回「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(6):美女の告白」へ続く!

前回のお話「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(4):宿を探せ(4)」


対応する第1部のお話「第1部第13章 夏のエピソード前編(2):脱げないパンツで対抗?」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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第1部では「宿取るの大変だったんだから」で済ませてた夏の旅行の宿決めエピソードでした。下書き時点では本当にこの部分は考えてなくて、第2部清書に当たり新たに起こしたものです。第2部第9章冒頭の期末試験社会科時事問題「大都会商事とリゾート開発公社の癒着」から種まきを始め、第1部とも整合取れるよう話を追加するのはなかなか大変でした。たぶん4種類くらい書いたと思います。
この先本当に話の矛盾が出てこなければいいですが・・(^^;



※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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by TSO (2014-08-28 20:40) 

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