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<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(7):許嫁> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第323回
<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(7):許嫁>

(今回の語り部は全て裕美子ちゃんになります)


『美女さんがアロン君に告白?!』

学校中のだれかれもが認める超美人、そんじょそこらの駆け出しアイドルなんかまるで相手にならないくらいの美貌、スタイル、オーラを持つ、美女ことシャルロット・ドヌゥーヴ。そんな人がアロン君に?!

「び、美女が?アロンを・・?」

カーラさんの声はやや震えていた。

「本当なの?!」

クリスティンさんも信じられないという顔をしている。
勇夫君が神妙な顔をしてそれに重々しく答えた。

「本当だ。俺、聞いちまったんだ」
「そ、そんな・・」

カーラさんはうつむいてしまった。
勿論わたしにとっても大変な驚きだった。だけどアロン君がそれを受け入れるのかという点については、わたしはまだ冷静だった。

『そうか、それでアロン君逃げていたのか。ということはアロン君は美女さんが話しかけてくるということを事前に知ってたんだ。でもたとえ超美人であったとしてもアロン君的にはあまりうれしくないみたい。なにしろ逃げていたのだから』

でも次のレソフィック君とカーラさんとクリスティンさんのやり取りにはわたしも震撼した。

「でも、アロンは断るはずだ」
「え?なぜ?」
「アロン君には他に好きな人がいるの?」

真顔になったレソフィック君がはっきりとみんなに告げた。

「アロンには約束の人がいる」
「ええええー?!」



そこにいる女の子の口がみんな「え」を発音するために横に広がったまま数秒固まった。
固まった集団から最初に抜け出したのはわたしだった。

「誰なんですか、その人」

すぐ後をハウルさんとクリスティンさんが畳み掛けるように続いた。

「私達の知ってる人?!」
「この学校の人?!」

レソフィック君は首を横に振った。

「いや、この学校の者ではない。お前らは知らない人だ」

ハウルさんは勇夫君の方ににゅうっと顔を近づけ

「分校入る前のこと?もしかして中学の時の恋人とか?」

と聞いた。勇夫君が人差し指を左右に振る。

「ちっちっち。甘いな」

とたんにハウルさんがテーブル越しに勇夫君の襟首を両手で掴んで引っ張った。

「なに偉そうに!しもべのくせにもったいぶってんじゃないわよ!」

柔道の絞め技が決まりそうなほど「誰それ!」とひねり上げられ、勇夫君はハウルさんの腕をパンパン叩いてギブアップした。手が緩められたところで、ひーはー息をしながら答えた。

「幼少の頃住んでた所の、はあはあ、一言で言えば、ひーはあ、幼なじみだ」

カーラさんとクリスティンさんがすかさず

「幼なじみ?」
「いったいいつの話なの?」

と追加質問を浴びせる。これにはレソフィック君が引き継いだ。

「その後住むところは別々になってめったに会うことはないんだが、最後に会った中学のとき約束したんだそうだ。大人になったら結婚しようって」
「結婚?!」
「そこまで?!」
「どっちが言ったの?!結婚しようって!」

また襟首を掴むハウルさんの腕に力が入ったので、勇夫君が慌てて答えた。

「う!あ、あっち、あっち!」
「あっち?相手の幼なじみ?!」

ぶんぶんと勢い良く首を縦に振った。

「それ、アロン君は承諾したんですか?」

わたしの問いにもぶんぶんと首を縦に振りつつパンパンとハウルさんの腕を叩いた。

「あのアロン君が、OKしたんですか・・」

ハウルさんはやっとのこと勇夫君の首から手を離した。勇夫君はぜーはーと荒い息をしてテーブルに顎を落とした。
勇夫君が使い物にならなくなったので、ハウルさんは今度はレソフィック君を尋問の矛先に変更した。

「その子かわいいの?!」
「おー、けっこうかわいいぞ」
「本当?写真とか持ってないの?」
「んー、知らんなー。よっぽど小さいときのなら探せばあるかもしれんけど」

『・・こういうことを軽く受けるような人じゃない。ということは、アロン君もその幼なじみの人のこと、好きなんだ』

わたしはまだ見ぬ幼なじみだという人に対し、カーラさんに感じていたような嫉妬感を通り越して苦しさも飛び越え、無力感に苛(さいな)まれた。ハウルさんとクリスティンさんは盛んに憶測交じりの話に白熱し、カーラさんは魂が抜けたように白くなってる。
手前には首絞められてぐったりしている勇夫君がテーブルに横たわり、横ではレソフィック君が椅子にゆったりともたれて薄っすらと口元を緩ませて、みんなのその反応を楽しんでいるかのようだった。
そんなレソフィック君の様子を見て、なんだか気に食わなくなったわたしは、自分の気持ちを悟られたくないこともあって、背筋を伸ばすとレソフィック君をぎろっと睨みつけた。

「な、なんで睨んでるんだ?」
「・・ヒドイじゃありませんか。今までアロン君のところに何人か女の子来ましたが、そういう決まった人がいるなら前もって言っておいてくれれば、彼女らももう少し違った対応しただろうに」
「誰のことだ?イザベルか?ハウルやカーラもアロンとこによく来るけど、単に遊びに来てるだけだし・・、お前もそれに加えて委員仲間だからだろ。なんか仕事に影響あるのか?」
「・・別に。あなたにもそういうヒトいるなら今のうち言っとくといいですよ」
「オレ?なんで?気になる?」
「あなたのような人にもそんな奇特な人がいると知ったら、わたしも将来に希望が持てるってだけです」
「どういうこったそりゃ?でもお前ならリーダーあたりが引き取ってくれんだろ」
「なっ!」

リーダー?そ、そりゃリーダーは生徒会委員のパートナーですから、いろいろわたしにしてくれているのは分かってます。けどわたしを引き取るなんて・・

「そ、それはあまりにリーダーに失礼です」
「そぉかぁ?」

レソフィック君はまた薄っすらにやついた顔でみんなを眺めるのに戻っていった。

そこにアロン君がとぼとぼと帰ってきた。
レソフィック君はそっくり返るようにアロン君を見ると

「どうだ、うまく断れたか?」

と聞いた。しかしアロン君は元気なく両の肩を下げてうなだれた。

「保留だ・・会わせろってせがまれて、引き合わせることになっちまった・・」
「なにぃ!」

レソフィック君はもたれてた椅子から跳ね起きた。そこをアロン君はガシッと捕まえて引き寄せ、ひそひそと二人して盛んに何か話し始めた。わたしにはごしょごしょ言ってる内容は聞き取れなかったが、最後に方でレソフィック君の「ちょっ、ちょっと考えよう」というのだけかろうじて聞こえた。
その様子を見てたハウルさんが

「なにヒソヒソやってんの?」

と聞く。
レソフィック君もさっきの小ばかにしたような顔はどっかへ行って困ったような表情になってたが、

「なんでもない」

と苦笑いした。そしてハウルさんに

「何?夏の旅行ってダリ・ビーチに決まったんだって?」

と逆に聞いた

「そうなの。キャンセルが出たところがあって、速攻で抑えたわ。大変だったんだから」
「ええー、マジでダリ・ビーチ取れたのか」

アロン君がすごい焦った様子で言った。そして

「もうダリ・ビーチはないってミシェル言ってたのに、無茶な取り方したんじゃねえだろうな~」

と心配げにつぶやいてるところでわたしと目が合った。すると、へへへっとすごいばつの悪そうな顔をした。
そこにカーラさんが

「アロン君。お、おさななじみの許嫁がいるんですって?」

と切り出した。するとアロン君はぱっとわたしからレソフィック君達の方へ振り返り、

「お前ら、ここでも言ったのか?」

と問いただした。いつの間にか起き上がっていた勇夫君が腕組して

「地固めはあちこちに必要だ」

とうんうんうなずいている。

「そうなら早くいってくれればいいのに・・どうりで身が堅いと思ったわ」

クリスティンさんは判ったような顔をしたが、カーラさんはぶすっとした。

「いや、別にそういうわけじゃないんだけど・・」

と、またそこから逃げるように目をそらすと、じーっと見てたわたしと再び目が合ってしまった。

『じゃあどういうことなんですか』

とわたしは目で詰問した。ひへっとアロンの口元が少し引きつった。

「ダリ・ビーチに宿取れた事驚いてましたが、何かあるんですか?」
「あ、い、いやあ・・ダリ・ビーチで幼なじみと久しぶりに会う約束してて・・・。んなもんだから、今度みんな行くってなると、その時紹介しろよって美女に・・」
「ダリ・ビーチに来るんだ!」
「それは美女さんだけじゃなくて、私達にも紹介してもらいたいわぁ~」
「や、やっぱそうなった!」

そこで昼休み終了5分前を告げる予鈴が鳴った。


次回「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(8):一度きりの今年の夏を」へ続く!

前回のお話「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(6):美女の告白」


対応する第1部のお話
「第1部:第13章 夏のエピソード前編(4):約束の人?」
「第1部:第13章 夏のエピソード前編(7):どうする?どうする?」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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アロン君が美女さんに告白されるシーンは、「第1部:第13章 夏のエピソード前編(5):美女、口説く」「第1部:第13章 夏のエピソード前編(6):会わせてやる!」の方に描かれています。



※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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TSO

ほちゃさん、shin.sionさん、copperさん、F−USAさん、ネオ・アッキーさん、くらいふさん、ぼんぼちぼちぼちさん、yu-papaさん、Ujiki.oOさん、やってみよう♪さん、niceありがとうございます。
by TSO (2014-08-28 20:45) 

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