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<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(8):一度きりの今年の夏を> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第324回
<第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(8):一度きりの今年の夏を>


アロン君に幼馴染の許婚がいることが発表された翌日、金曜日。

わたしは晴れやまない気分で登校した。
カーラさんの様子を伺うと、意外とさばさばしているように見える。衝撃だったんじゃないのかしら。

休み時間、カーラさんにお手洗いへ誘われたとき、カーラさんの方からアロン君のことを話してきた。

「昨日の、超びっくりだったね」
「え?ええ、アロン君の・・ですよね?カーラさん、がっかりですよね?」
「えへ、どうして?・・ってこともないけど、まあ彼女いるってのは別に驚きでもないんじゃない?」
「そ、そうなんですか?」
「あたしだって中学のとき付き合ってる子いたもん。長続きしなかったけど」
「へ、へー」
「それが結婚まで約束してるってのは驚きだったけどね」
「そうですね。・・カーラさん、残念でしたね」
「なんでー、あたし別にアロン君の彼女でもないしー、あはは」

あれ?カーラさん、アロン君に好意持ってたんじゃないの?

「ところでユミちゃんは?カレシいた?」
「そ、そんなのいません」
「どうして?メガネ取るとかわいいのに」
「わ、わたしなんかに興味持つ人なんて、いません」
「そうかなー。一遍コンタクトで来てみなよ。きっと周りの反応変わるわよ?。それでユミちゃんはアロン君の許嫁のこと聞いてどうだった?」
「え?!ええ・・、びっくりです。そういう事言われて、うんって返事するものでしょうか・・」
「小さいときなんてそんなもんじゃん。好き、イコール結婚って、単純に。だってアロン君達のも中一の頃らしいじゃない?」

わたし、そんなふうに思えたかなあ。中一の最初の頃だとまだ元気だった頃だけど、あの頃は恋愛とかあまり意識なかったし・・。




放課後は、1学期最後となる生徒会があった。
生徒会では夏休みの注意事項などの伝達がほとんどだった。

「注意喚起のプリントだけぇも、終業式の日に配ったってな。みんな浮かれちゅうかぁよぅ、ぴしぃっち釘さしとぅよ」

生徒会長がいつもの分かりづらい訛でみんなに達した。


チャンと一緒に教室へ戻る裕美子は、生徒会から配るよう配布された注意連絡の紙を眺めていた。

『解放的な夏はつい心を緩めがち。その行動大丈夫ですか?もう一度冷静に見つめ直して、学生らしく相応の振る舞いを。一度きりの今年の夏、すばらしい思い出を作りましょう』

矛盾してるわ、このスローガン。思い出を作るために少々背伸びしたこともするんでしょ。アロン君は幼なじみと再会して、思い出を作っちゃうんだ・・。わたしは一度きりの今年の夏をどう過ごしたらいいんだろう。

「来週はいよいよ夏休みですよ。休みはどこか行かれるんですか?」

裕美子は聞こえないかのようで、プリントをまだ見つめていた。

「・・何か誤字脱字ありました?それ僕が配りましょうか?・・小泉さん」
「は!な、何か言いました?」
「どうかしました?休みどこか行くんですかって聞いただけですけど」
「夏休み?ダリ・ビーチ行くんでしょう?リーダーも行くんですよね」
「そう!ダリ・ビーチ行きます。楽しみだなあ!あそこのビーチはきれいだそうですね。小泉さん泳ぎましょうね!」

『そうだ・・アロン君、おさななじみとダリ・ビーチで会うんだっけ。レソフィック君はかわいい人って言ってたけど・・見たくないな、どうせアロン君と並んでる姿なんだろうし・・・』

「またぼうっとして・・海嫌いですか?」
「え?ああ、ごめんなさい。海?それほど好きじゃないです」
「泳げないんですか?もしそうなら少しくらい教えますよ」
「いえ、浮いてるだけって程度ですが、泳げます。大丈夫です」
「・・ちなみに・・小泉さんどんな水着を?」

顔を赤らめながら目尻の垂れたリーダーが聞いた。裕美子はその少しスケベそうな顔をしているリーダーに気付いて、メガネを直すと感情もなく答えた。

「ワンピースで、短パンもはいて、肩や腕も日焼けしたくないからずっとジャケット羽織ってるつもりです」
「え、ええ?!(それじゃぜんぜんつまらないですよー!!)」

裕美子は生徒会からのプリントを1枚リーダーに渡すと

「学生らしく相応の振る舞いをですって。C組のこと言われてるみたいですね。前に羽目外しすぎないよう監視しないとってリーダー言ってましたけど、生徒会委員正副二人ともいるところで、不祥事は起こせませんね。これ、わたし配っておきますから」

スタスタと歩調を早めて教室へ行ってしまった。

「水着、聞いたのまずかったかなあ・・」





週が明けて7月20日の月曜日。
裕美子はちょっと心配していた。
この日の朝は、防災委員の安全巡視をすると先月決めていた日だった。


防災委員のアロン君と、直前に今日のこと念押しをしておくの忘れちゃった。気付いたの土曜日だったし、アロン君の電話番号とかメールも知らないから連絡もできなくて・・。結局何もせず今日の朝を向かえちゃった。
ハウルさんなら連絡先知ってるはずだから、ハウルさんに聞けば連絡取れたかもしれないんだけど・・・。
判ったところで、電話する勇気、なかったろうな・・。

『でも次回はリーダーがアロン君とやるって、日にち決めたとき言っていたっけ。リーダーとアロン君が今日のこと話してるとこ見てないけど・・・リーダー来るのかなぁ・・
できれば・・・来なくていいんだけどなぁ』


学校に着いたのは7時半だった。アロン君もリーダーもいなかった。文庫本を開くと、約束の時間の7時45分を待つことにした。
もしアロン君来なくっても、放課後とかにやってもらえばいいか。


本を読んでいたら、ガラッと教室のドアが開いた。見るとアロン君だった。

『よかった。忘れてなかったんだ』

僅かな時間また二人っきりになれると喜んだが、すぐその気は押しやられた。

『そうだ、この人は人様のものだった。決まった人がいるんだった』

アロン君は少し呼吸が荒いみたいだった。たぶん走って来たんだろうな。
アロン君はわたしの顔を見ると、勝ち誇ったようににかっと笑った。

「今日は間に合ったぞ!」

教室の時計に目を移すと、ちょうど7時45分だった。ドアを開けたときはきっと7時44分台だったろう。

「なんでいつもこんな秒単位でぴったりやってくるんですか?そんなぎりぎり狙うより5分10分前に着くよう出てきた方が楽じゃないですか」
「前回秒単位で遅刻とかいった人がよく言うぜ。それに5分10分の睡眠だって大事なんだから」

はぁ~っとため息をついた。

「途中で何かあったら挽回するゆとり無いじゃないですか。・・幼なじみさんとの約束の時間には遅れないで下さいね」
「え?」
「女の子、待たせちゃダメですよ」
「あ、ああー。へーきへーき。あっちもそういうの寛大だから」

少しむっとした。

「すみませんね。わたしは寛大じゃなくて」

そしてぷいっとそっぽ向いて言った。

「どうせ、わたしはアロン君の何でもないですし」

アロン君は隣の席までやってきて鞄を置くと、巡視カードをわたしに差し出した。

「そんなツンツンすんなって。かわいくなくなっちゃうぜ」

目線をそらしたままカードを受け取った。

まったく。
・・・・・あれ?
さっき何て言った?

『かわいくなくなっちゃうぜ』?

そ、それって・・・

「わ、わ、わたしでも、かわいい時が・・・あるって・・」

言ってますか?と言おうとしたとき、巡視カードを見て言葉を飲み込んでしまった。そして違う言葉が口から出ていった。

「このカード、また全部丸付いちゃってます!」
「い、いいじゃん。これからちゃんと巡視するんだし。小泉が丸書く手間省いてあげてるんだって」

ぎろっとメガネ越しに睨んでしまった。

「もしかして、来月以降のも丸付いちゃってるんですか?」
「カードは1学期分しかもらってないから、それでおしまい。2学期は2学期でまた配るんじゃない?だ、だから、そんな睨みつけるなって。メガネで表情よくわかんないのに、なんで感情はよく分かるのかな・・」

きっと1学期分は全部最初から丸付けてあったんだ。
表情がよくわかんない?何がさっきはかわいくなくなるだの何だのって・・
もう、いつものようにからかってるだけですね。

ぷんっと不機嫌なまま続けた。

「ところでリーダーは?」
「リーダー?来るんだっけ?あ、そういやそんなこと言ってたっけかなあ、すっかり忘れてた」
「リーダーも忘れちゃってるのかな。・・またわたしとやるでもでいいですか?」
「いいよ。小泉とやるつもりで来たんだし」

ぽっと頬が少し熱くなった。

「で、でも来月はもうこんなことないと思いますよ?。もう少ししたらリーダー普通に登校してくるだろうから、またわたし達見て忘れてたこと気付いて、来月こそは僕がやるって言うでしょう」

えぇ?っという顔でアロン君が止まった。

「・・俺、どっちかっていうと小泉との方がいいなあ」

ぼふっと顔が発火した。

「何珍しく照れてんだ?」
「うぇ?」

え?表情に、でちゃってる?!

「ほら、小泉とは消耗品の補充搬入とかもやってるから、勝手が分かるっていうか・・・意志疎通がスムーズっていうか。だからだよ」

び、びっくりした。そうよね、お仕事相手としてという事よね。
そのお仕事だって、来年にはクラスも委員も変わっちゃって、もう一緒になんかできないんだろうし・・。わたしも一度きりの今年の夏を、こうして一緒にいられる時間を、大切にしていかないとなのよね。

「そ、そういう事なら、リーダー来る前に終わらせましょう」

アロン君がぱっと明るく笑った。
もう、何でそんな顔するの?あなたには許嫁がいて、わたしの手の届かないところにいる人なのに・・。ちょっと、うれしくなっちゃったじゃないですか・・・。

「そ、それではさっさと片づけましょう。アロン君、消火器から」





翌日、終業式。

今日終わるといよいよ夏休みである。
教室ではホームルームが始まる前に、あらかたみんな揃っていた。生徒会長が言ってた通り、もうみんな午後には夏休み開始とあって、頭の中はそのことで一杯なのが手に取るように分かった。みんなの服装も、真夏の日差しに合わせるように、なんとなく開放的になってるように見える。

『確かに注意喚起するにはいいタイミングのようですね』

裕美子は昨日の生徒会からのプリントを各机に配っていった。

美女の席に配ったところで、

「浮かれてるところに水刺すわね」

と睨まれたので、びくっと萎縮してしまった。

「しゅ、終礼に配るよりは煙たくないかなと思って・・・」
「ふーん。確かに終礼よりはましね。生徒会の仕事だし、仕方ないか」

そう言うと、ぽいっとプリントをバッグに放り入れた。

こ、怖かった。
・・アロン君は許嫁がいるからって言って、美女さんのこと断ったはずなのに、全然気にしてないみたい。

シャノンさんのところに来ると、シャノンさんはいきなりTシャツの裾をまくり上げた。

「シャ、シャノンさん、何やってんですか?!」
「ヘソ出しルックに改造中!だってあたしのことみんなして子供扱いするんだから!」
「子猫のプリントTシャツにふわふわカーデガンがかわいいねって言ったのよ。ね、ウォルト」
「公園で遊んでた子にそっくりって言っただけだよな、ハウル」
「小学生みたいでかわいいって言った!公園で遊んでた小学生にそっくりって言った!あたしあんたらよりおねーさんなんだから!小学生とちゃうんだから!ナイスバデー見せつけてやるんだわ」

おへそどころか、お腹丸出しになるほど捲り上げたので、裕美子は慌ててシャノンのTシャツを押さえた。

「わっ、れ、冷静に・・・『もう一度冷静に見つめ直して、学生らしく相応の振る舞いを』ですよ!」

Tシャツを下に引っ張って急いでお腹を隠した。が、引っ張られたせいで形よく目立つようになった胸元に目が止まった。

「・・・シャノンさん、お胸、大きいですね・・」

シャノンは裕美子より背も低くて、長い金髪でお人形さんのようだから幼く見えるが、よ~く分析すると、普通の女性を縮尺小さくして、頭大きくして少し幼児体型にしたような感じで、意外とバランスのとれた体をしていた。

「ほんとう?こいずみより大きい?」
「う・・ん、わたしよりひょっとすると・・・」

シャノンが立ち上がった。

「みんな聞いてー。こいずみよりあたしの方が・・うぎゃああ!」
「ひゃああ!ダメです!」
「やぁねー、じゃれ合っちゃって」

ハウルが言うと、後ろのクリスティンも振り向いて

「わぁ~、二人は仲良かったんだぁ~」

とニコニコ顔を注いだ。
そのクリスティンに目を向けると、白っぽいブラウスの前全開にして、下に着ている薄水色のキャミソールからはこぼれんばかりの巨乳が・・。
シャノンや裕美子の争いなんか一瞬にして水平線の彼方の取るに足らないものに思え、二人とも黙ってしまった。



一回りして自席に戻ると、自分の分を取った。あと1枚残っていた。

『久しぶりに幼なじみの人に会ったら、きっと嬉しくて、いろんなことするんだろうな。一度きりの、今年の夏の、二人だけの思い出を作りに。だって相手は許嫁なんだもの・・』

その最後の1枚を横のアロンの前に突き出すように差し出した。

「はい、アロン君。幼なじみさんとはしゃぎすぎないように気を付けてください」
「え?おさな・・?ああ、何もないって、平気平気」

『・・なにいってるんだろう』


次回「第2部:第10章 夏のエピソード(1):海へ出発」へ続く!

前回のお話「第2部:第9章 宿探しと美女の告白と許嫁(7):許嫁」


対応する第1部のお話「第1部:第13章 夏のエピソード前編(4):約束の人?」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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第1部にはなかった、アロン君の許嫁が発表されてから終業式までのお話でした。
それにしてもこれから夏休みの話だというのに、掲載日の日付では夏休みもラストスパートへ・・。この分だ;と夏のエピソードが終わるころは冬かもしれませんね。(^^:
次章はいよいよ裕美子ちゃんとアロン君の運命の歯車がついにかみ合うことになった一大イベント、夏の旅行の話です。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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by TSO (2014-09-23 20:12) 

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