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<第2部:第10章 夏のエピソード(10):中庭で夕食です(5)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第334回
<第2部:第10章 夏のエピソード(10):中庭で夕食です(5)>


竜田揚げを持ってテーブルに戻ると、ウォルトさんやパウロさん、アンザックさん達はまだまだ旺盛な食欲で、やってきたばかりの竜田揚げを口に放り込み始めた。

「うおー、こおフライドチキン、食ったことない味だ」
「サンダースのチキンとはまた違ってしつこくないね。ウメー」

好評のようでうれしい。さて美女さんは・・。

「ほら、アロン。ビールと合うよ」

出来立てふわふわのチーズオムレツをアロン君の前にさし出した。アサリバターは大きなフライパンで作ったのでみんなのテーブルにも並んだが、オムレツは大量に作れるものでもないので、この1つだけだ。

「あ、何それ!あっちにはなかったよ。このテーブルにだけ?」

ハウルさん竜田揚げに引かれてたはずなのに、目ざとくオムレツを見つけた。

「アロンに作ってあげたのよ」
「美女、売り込んでるなあ」

そう言ってレソフィック君がアロン君より先にオムレツに手を出した。

「あ、私も!私にも!」
「アロンのだってば!」
「ちぇっ」

舌打ちしつつもレソフィック君は一口目をゲットする事に成功し、オムレツは二口目でなんとかアロン君にたどり着いた。

「おいしいでしょ?」
「う、う、うん・・」
「どう?見直した?」

アロン君、美女さんの意外な一面を見せつけられてタジタジになってる。どうにか虚勢を張って皮肉入りのジョークを交えて返答した。

「料理も得意とはね、驚いたよ。でもジャンルはつまみ?夜の商売っぽくて美女に合ってるなあ」
「夜の商売?失礼な!」

レソフィック君がビールをプハッとしてその感想を引き継いだ。

「くーっ。でもマジでビールとも合うぞ」

アロン君三口目を口に入れるとオムレツをこっちにも回してくれた。

「チーズの塩っ気とか、味も濃い目にしてあるからかな。本当に”つまみ”作るの上手いんだな。”つまみ”。食べてみる?」
「ちょっと、一部分だけ強調しないでくれる?」

ハウルさんがお皿受け取ると、わたしと一緒に一口ずつ分け合った。

「旨!」
「ほんとだ。意識して濃いめの味付けにしてるんですね」
「美女が料理できるなんて、ちっきしょー」

何でかハウルさん悔やしがった。そしてわたしの二の腕掴んで引っ張った。

「いいもん!うちには裕美子がいるから。裕美子、なんか言ってやってよ」

わたしは作るところも見ていたので、味付けよりも美女さんのテクニックの方に一目置いていた。あれは付け焼き刃じゃないですもの。

「美女さん、すごい上手。ほら、おむれつの火加減、いい具合ですよ」
「えー?ほめちゃうの?」
「だって難しいんですよ、こうふわって作るの」

美女さんが自信持って堂々と勝負してくるのにはそれなりの下地を持ってるからなんだ。それは普段からきっちり積み上げてきているもの。こんな凄い人のアタック受けちゃったら、許嫁がいるとはいってもアロン君、動揺しちゃうかな・・・




みんな程良く酔いが回ったところでお酒もなくなり、幸い泥酔するものもなく夕食は終わった。リーダーやジョンさんが率先して片付けをしてくれ、料理作りに奔走したわたしやイザベルさんは休んでるよう言われた。イザベルさんは文字通り休んでるというか、部屋に戻ってまた寝てしまってる。
アロン君達は炭火コンロとか特殊な道具を使ってたので、他の人では勝手が分からないので、片付けも自分達でしてた。カーラさんはアロン君達を手伝うのに付いていった。カーラさんは男っぽい作業のお手伝いが上手なので、アロン君やレソフィック君が有り難がってた。

男子の部屋にお菓子やソフトドリンクがあるということで、暇な人達は男子の棟に上がることになった。わたしもハウルさんとクリスティンさんに付いていって、中庭を見渡せるバルコニーに座った。
中庭を見下ろし、アロン君達の片付けの様子を見ると、バーベキューコンロの火があるものだから、片付けそっちのけで勇夫君が花火を始めてる。手で持って振り回したり、打ち上げ花火を水平に撃ったり、やっちゃいけなさそうなのを率先してやってるものだから、食器洗いが終わって戻ってきたリーダーにこっぴどく怒られた。

その後はバルコニーから見ててものどかな花火となり、ぱちぱち、しゅわしゅわと弾ける音を聞きながら海の上に浮かぶ月を眺めてた。

ちょっと疲れたな。大人数の料理を作っただけあって、心地いい疲労感を通り越しちゃったかな。でも、充実したなぁ。

しばらくすると歌声が聞こえてきた。
透き通るような心地よい声、胸の中に風が吹き抜け、何かが洗われるような、そんなきれいな声だった。
誰が歌ってるかはみんなすぐ分かった。それは美女さんだ。昼間にも聴いたけど、この人の歌はちょっと普通じゃない。悪い意味じゃなくて、いい方にずば抜けてる。人の心に入ってくるものがある、特別なものだ。みんな聞き入ってしまっていた。

歌が終わると、静けさがしばし広がった。みんなが手を止め、食べるのも飲むのも忘れて恍惚としていたのだ。
それを破ったのもまた美女さんだった。

「おーい、花火、もっとやってよー」

はっとして、花火をやっていた勇夫君が上を向いた。

「今の美女?へー、手が止まっちゃったよ」

クリスティンさんが目をうるうるさせてる。キャリーさんは目をつぶって余韻に浸ってた。ハウルさんも部屋からバルコニーに出てきた。

「今の歌、こんなにジーンとくる歌でしたっけ?」
「違うよ、オリジナルはこんなじゃなかったよ。美女のアレンジ?」
「美女って美人なだけじゃなくて、いろんな才能あるんだ。見直したわ」

振り返った美女さん、歌ってた人とは思えないような調子でハウルさんに返した。

「あんたの食いしんぼうと派手な行動も才能と思うけど」

なんかアロン君の幼なじみという人が心配になってきた。明日こんな人と対峙しなければならないなんて・・・。
わたしがもし普通の汚れない女の子で、アロン君といい仲だったとしたら、美女さんの挑戦を受けられるだろうか。
どう考えても無理だわ。とてもじゃないけど勝負にならない。

こんな困難も乗り越えられなきゃ恋人ってなれないものなの?


次回「第2部:第10章 夏のエピソード(11):いなかった幼なじみ」へ続く!

前回のお話「第2部:第10章 夏のエピソード(9):中庭で夕食です(4)」


対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(2):美女の才能」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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やっとお食事が終わりました。次回は2日目。
1日目を長々とひっぱってしまいましたが、第1部を書いた時点(同時に第2部下書き時点)では裕美子ちゃん視点は2日目しかなかったのです。ともあれようやくアロン君が裕美子ちゃんを強く意識することになるお話に入ることになるはず・・です。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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コメント 2

(。・_・。)2k

今年1年ありがとうございました
佳い年をお迎えくださいね(。・_・。)

by (。・_・。)2k (2014-12-31 20:39) 

TSO

bitさん、げいなうさん、Ujiki.oOさん、やってみよう♪さん、まっつんさん、ネオ・アッキーさん、(。・_・。)2kさん、niceありがとうございます。
(。・_・。)2kさん、コメントありがとうございます。新年もすばらしい写真が撮れるといいですね。

by TSO (2015-01-01 01:32) 

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