So-net無料ブログ作成

<第2部:第10章 夏のエピソード(12):タンデムしちゃいます> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第336回
<第2部:第10章 夏のエピソード(12):タンデムしちゃいます>


海のすぐ後ろには椰子の林があって、その1本に青いバイクが立て掛けてあった。それを起こしてハンドルの所にある鍵穴にキーを挿し込むと、アロン君はわたしを上からつま先へと流し見た。

「ここじゃ乗りにくいと思うから、道路まで行こうか」
「・・わかんないから、お任せします」

キュルキュル、バオン!とエンジンをかけると、アロン君は椰子の木の間をバイクを押してゆっくり進み始めた。白い砂の上にイボイボしたタイヤの跡がつく。





50mほどで海岸沿いの道路に出た。そこでアロン君は折り畳んであった小さな棒を倒した。多分あれは2人目の人が足を乗せるところだろう。滑り止めのための溝が掘ってあるけど、本当に単なる銀色の金属の棒。
道路脇の縁石のすぐ横にバイクを持っていって、アロン君はバイクに跨った。

「乗っていいよ。縁石の上から乗れば車高の高さも少し緩和されるから、乗りやすいだろ。これがタンデムステップ。これに足乗せるんだ」

わたしが小さいから、乗りやすいようにここまで押してきてくれたのか。何しろアロン君のバイクはオフロード用なので背が高い。タンデムステップは太股くらいの高さにあるし、シートは腰より上のところにあった。

「気遣ってくれたんですね。ありがとう」

縁石のおかげで乗るのは楽にできた。だけどそこからの視線は立ってる時の自分より高いし、アロン君が動くとバイクも揺れて、このまま走られたら間違いなく不安定な体は落っことされると思った。どこかに掴まらなくちゃ・・

「どこつかんだらいいの?」
「後ろの荷台のグリップか・・」

アロン君は後ろに手を伸ばしてわたしの膝の外側を掴んで、アロン君のお尻を挟むようにわたしの膝を押し付けた。

「ひゃあぁ」

思わずまた変な声を出してしまった。

「あ、ごめん!」
「・・す、すみません。足掴まれたので、びっくりしちゃっただけです・・」
「わるい、生足、触っちゃった」
「ああ、いえ、たいした足じゃないので、気にしないで下さい・・」
「ごめんよ、無神経に触っちゃって・・。で、さっきみたいに膝で俺の体挟むと、全体的に安定するんだ。ニーグリップっていうんだけど、そうすると手は軽く添えるだけで大丈夫だから。後ろの荷台のグリップか、俺の体なら腰の辺り掴んでもらうと、運転する側は安定してていいんだけど」

そう言って腰の辺りで手をぽんぽんと打ちつけた。
掴むなら荷台なんかじゃなくて、アロン君の体がいい。

「こ、こう?」

手をアロン君の腰にそっと添えた。うわあ、アロン君に触っちゃってるのが、すごい嬉しいんだけど・・・

「少し動かしてみるよ」

アロン君は20mくらいゆっくりバイクを動かした。発進のとき身体が置いてかれそうになったので、言われたとおり内股できゅっとアロンの身体を挟むと、とたんに一体感が増して不安がなくなった。止まるときは慣性が働いて、体がアロン君の背中の方に押し付けられるようになる。これ、抱きついててもっとスピード出てたら、密着度凄いんじゃ・・

「どう?大丈夫そう?」

たぶん大丈夫だと思う。だけど、カップルがバイク乗ってる時って、もっとくっついてなかったかしら。抱きついてたよね・・・。

「あ、あの、上体が離れてるのって、ちょっと不安が、あるんですけど・・」
「え?」
「この、空間が、開いてるのが・・」
「・・空間?」
「つ、つまりですね、端的に申し上げれば、・・・くっついても、いいですか・・?」
「え、え?」

いいよ、もう、説明するの、めんどい。
わたしは、上半身をアロン君の背中にくっつけた。
うわあああ。

「か、体が、離れてると、ちょっと怖くて・・」

チャンスだからって、わたし、何てことしちゃってるの?!パーカー羽織ってるとはいえ、水着姿で・・。もう顔見せらんない、絶対真っ赤っかだ。

「あ、わ、分かった。それで大丈夫そう?」
「はい」
「そう。じゃあそれでかまわないよ。んじゃ行くよ」

バルルルとバイクは走り出した。怖くないよう控えて走ってるのがわかる。

「どう?」
「うん、平気です。もっとスピード出して大丈夫ですよ」
「本当?小泉凄いね」
「だからって、無茶しないでくださいよ」

それでもアロン君はさほど変わらず、わたしを気遣って走ってくれていた。
それにしても・・・わたし、憧れてた人に、今、抱きついてるんだ。アロン君の身体の熱が伝わってくる。本当にわたしの腕の中に、アロン君があるんだ・・
胸のどきどきが激しくなった。

『うそ・・夢見たい』

心臓のドキドキが、伝わっちゃってるかも・・




しばらくして、走りながらわたしはアロンの耳元に向かって声をかけた。

「名前、決まってるんですか?それに、日本人でいいんですか?幼なじみさん」
「いいよ。勇夫だって日本人だし、道場の関係で俺の周り結構いるから。好きな名前つけていいよ」

わたしが考えるの?まあいっか、どうせ数分しか使わない名前だし。

「うーん・・・・。じゃあ『ユカリ』さん」
「いいね。ユカリさんね」
「わたしのお母さんの名前、です」
「こ、小泉のお母さんの名前呼ぶの?なんか恐れ多いな。そうすると小泉とお母さんはイニシャル同じなんだ」

イニシャルなんてあまり使う事ないから、気にしたことなかったなぁ。持ち物には直接名前書くし。


そうこうしているうちにスーパーが見えてきた。
手前の信号が赤に変わったので、アロン君はブレーキをかけた。すると例の慣性が働いて、わたしの体はアロン君にまるで飛びついて抱きついたみたいにのしかかった。ほっぺたから胸、お腹、足広げてアロン君をニーグリップしてるから内股から股間まで全部!ぎゅーって!!「ひゃあぁ」ってまた変な声出しちゃった。

「ごめん、急ブレーキすぎた?」
「いいいいえ!慣性が働くのは、よょ予期してたんですが、思った以上だったので、びっくりしちゃって!」

こ、声のテンションが、上がっちゃってる!

「大丈夫だった?」
「う、うん、平気」

いいえ、ぜんぜん平気じゃありません!全身ですよ、全身でアロン君感じちゃってるのよ。いいの?わたしこんなことしちゃって、いいの?いいの?

「今度止まるときは、もうちょっと気を付けるね」
「だ、大丈夫!おんなじふうに止まって下さい、お気兼ねなく!」
「?」

ど、どうしよう。わたし、いつからこんな破廉恥になっちゃったんだろう。

信号が変わった。


バイクはスーパーの駐車場に入った。止めるところを探してゆっくり走ったので、止まるときはさっきほどにはならなかった。

「・・ものたんない」
「え?なに?」
「な、なんでもありません」

アロン君がスタンドを下ろして、左に傾けてバイクを制止させた。

「先に降りて」
「あ、はい。・・よいしょ」
「怖くなかった?」
「ぜんぜん。もっと乗ってみたいです」
「ほんと?小泉、意外だね」

アロン君はスーパーの入り口に向かって歩き出した。わたしもついていく。
「どのみちこの後、まだ何回か乗ることになるよ」

そうね。ここから戻るときとか。

アロン君の顔を見上げたら、アロン君もちょうど振り向いてこっちを見たところだった。

「へえ、小泉、笑ってる」
「えぇ?」

入り口のガラスドアを開けてくれた。わたしが入るの待ってくれてる。
ドアをくぐった。
ドアを閉め、アロン君がわたしを追い抜いていくとき、楽しそうに言った。

「いいもん見ちゃった」
「な、なに?どういうことですか?」

水着売り場に向かうアロン君を、きっとリンゴみたいに赤くなって追っかけてたに違いない。


次回「第2部:第10章 夏のエピソード(13):ビキニだって着ちゃいます」へ続く!

前回のお話「第2部:第10章 夏のエピソード(11):いなかった幼なじみ」


対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(4):大近眼は陸も海も同じ」 「第1部:第14章 夏のエピソード後編(5):5分だけおさななじみ」 「第1部:第14章 夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



Copyright(c) 2009-2015 TSO All Rights Reserved




今回は第1部になかったシーンでした。バイクの二人乗りって、意識しちゃってる人にはチャンスですよね。裕美子ちゃんも抑え切れませんでした。
抱きつかれる方も嫌な人なら抵抗感あるでしょうから、アロン君もこの時点でまんざらじゃなかったんでしょうね。
架空の幼なじみの名前『ユカリ』が裕美子のお母さんの名前から取ったというのは、第1部ではクリスマスパーティーのときに明かされたのですが、第2部ではまさに命名の瞬間が出てきましたね。
次回も第2部だけのシーン。さらにお色気増してアロン君に印象付けちゃったお話です。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



ぽちっと応援してください。
にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 イラストブログ オリジナルイラストへ
にほんブログ村
にほんブログ村 漫画ブログ 4コマ漫画へ
にほんブログ村


nice!(11)  コメント(0) 
共通テーマ:コミック

nice! 11

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。


☆☆ 災害時 安否確認 ☆☆




この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。