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<第2部:第10章 夏のエピソード(14):理想の娘にだってなっちゃいます> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第338回
<第2部:第10章 夏のエピソード(14):理想の娘にだってなっちゃいます>


二人がみんなのところに戻ったとき、みんなは本当にハウルが提案していた水中騎馬戦をやっていた。
そこでは最も小さくて非力そうなシャノンがどういうことか圧倒的な強さを見せていたのだが、その模様は第1部の通りなので、そちらをご覧ください。
「第1部:第14章 夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦」

14章_6_012挿絵s.jpg
騎馬戦最強だったシャノンちゃんの馬。


再びみんなから抜け出した裕美子と、幼なじみを迎えに行くといってこちらもみんなと別れたアロンは、宿の裏手で落ち合った。場面はそこからとなります。




どるるっどるるっとエンジン音をやや控えめにしてアロン君がバイクでやってきた。

「お待たせ。・・水着、着替えた?」

わたしは買ってもらったパーカーに身を包んで、前のボタンもしっかり閉めていたので、下に何着てるのかぜんぜん見えない格好をしていた。

「着替えましたよ、ご希望のビキニに・・・」
「あれ?髪の毛そのまんまだからかな。いつもと変わんないね」

そっか、イメチェンしないとばれちゃうか。意識していつものわたしがしないことをするようにしないと。

パーカーの前ボタンを全部外すと、肩に軽く引っ掛けてるだけのような着方に変えた。
恥ずかしいけど、胸張って、隠したりするようなしぐさもしないよう心がけた。

「あ、雰囲気変わった。・・ほら、やっぱその水着似合うよ」
「お世辞言っても、みんなには通用しませんよ」
「本当だよ。は、恥ずかしいかもしれないけど、その格好でぜんぜんおかしくないから」
「日焼けで水着の跡がつかないうちに終わらせましょうね」
「ごめんな・・なんか迷惑かけてるね、俺」
「気にしないでください。今アロン君は『ユカリ』さんと久しぶりの再開で幸せな状態なんでしょ?」
「・・・メガネかけてないよ、その『ユカリ』さんは」

おさななじみの名前を『ユカリ』と命名したのはわたしだ。実は実在しなかった幼なじみを、わたしを使って乗り切ろうとしたので、必然的に幼なじみは日本人ということになってしまった。命名権を与えられたわたしは、さして考えることもなく、どうせ一度きりだとわたしのお母さんの名前を拝借してしまったのだ。

「こうですか?」

メガネを取るととたんにぼうっとした世界になるけど、それでもアロン君がわたしの顔をのぞき込んでるのが分かった。わたしなんかを見てくれるのは嬉しいけど・・・

「うん、いいね」

誉めてもらっても特殊な事情下でのことだからなぁ・・。

外にある水道を使って髪を濡らしながら問いかけた。

「どんな性格ですか?『ユカリ』さん」
「え?・・明るくて元気な子・・かな」

そうかぁ、アロン君はそういう人が好きなのね。

「それがアロン君の理想の子ですか?・・わたしとは全然違いますね」
「そうかな・・」

巻いてた髪が濡れて真っ直ぐになると、先っぽは背中の真ん中くらいまで届く。冷たさが背中に感じる。
髪を櫛で整え、持ってた赤いピン留めで左の前髪をとめた。

「似合う?」
「か、かわいい、中学生みたい」
「ちゅう・・・、やめようかしら」
「いいよいいよ、すごく似合ってるし」

大人っぽくないことは自覚してるけど、中学生ですか。せっかくビキニまで着てるのに。あなたの許嫁ですよ?いいのかしら。

アロン君が先にバイクに跨り、わたしはアロン君の肩に掴まりながら後ろに乗った。これで今日3度目で、もうすっかり慣れたような感じがする。そしてまた、ぴとっと身を寄せた。

そうだ、今度は恋人どうしなんだ。もっと、想いを込めなきゃ・・。

「えっと、わたしはユカリ・・わたしはユカリ・・」
「名前間違えないようにしないとだね」

わたしは許婚であることを連想すると、目の前にいる大好きな人への想いを開放しちゃうことにした。アロン君の腰に添えていた手を、恋人らしく胴回りに巻きつけた。たくさんの想いを込めて、体をくっつけた。
熱い・・。前よりもっと・・、すごい・・。
アロン君が振り向いた。

「え?こ、小泉?」

呼ばれてくいっと上を向いた。

「お前、顔・・真っ赤だぞ」
「そ、それは男性にこんな格好して抱きついてるんですから・・・。アロン君は、なんで赤くなってるの?」

アロン君もまたほっぺたをいい色に色付けていた。

「~~~、あの、小泉、なんか、や、柔らかいのが・・・当たるのが、わかっちゃって・・・。買い物の時と違う・・」

そういえば水着をビキニのに着替えて、初めてのタンデムだった。さっきと違って、買ってもらったパーカーは前も開けてるから、直に触れてるし、胸も強調されてるから余計・・・。アロン君はTシャツ着てるから、かろうじて布一枚で隔ててるけど、もしアロン君も上裸だったら、もう二人して肌と肌くっつけ合うことになっちゃって、うわぁ~、も、もしかして相当破廉恥な状況?
でも、もうスイッチ切り替わってるんだから。もう、わたしは『ユカリ』さんなんだから。そ、そういうこともあるくらいの仲だよね?
からっとした元気な声で言い放った。

「許嫁なんだから、いいでしょ?」

そしてもっとぎゅっとくっついた。

「早く見せつけてあげようよ、わたしたちの仲を」
「こ、小泉、人格変わってねえ?」
「わたしはユカリだよ。アロン君も早いとこ切り替わって」
「・・・」

前を向くと、意を決したようにエンジンをかけ、勢いよくアクセルを煽った。

「よーし、行くぞユカリ!決戦へ!」






バイクは松林の中の白い砂の道を海の方に向かって走っていた。少し砂が深いところではバイクが砂の抵抗を受けて少しうねうねとした挙動をする。アロン君の体が小刻みに動く。多分バランスを取るためなんだろう。ここまで体を密着させてたけど、それだとアロン君が動きづらそうだから、わたしは体を離した。

「あれ?離れて大丈夫?怖くない?」
「わたしくっついてると邪魔だよね」
「そんなことないよ」
「アスファルトの上と違って、未舗装の道って運転気を使うというか、常に道の変化に対応してなきゃいけないというか、一種スポーツですね。アロン君がこういうバイクに乗るのわかるな」
「へえー、よく気付いたね。その通りだよ」

体を離したことで、わたしも単に座ってるのではなくてバランスを取るようになった。

「あそこ砂深そうだからタイヤ取られるよ」

明らかに砂の抵抗が増え、バウウウッとアクセルを開けたバイクは真っ直ぐ走らないで斜めに滑ったりした。
アロン君がちらっと後ろを伺ったので、
「大丈夫、怖くなかったよ」
と先に答えた。

「さすが『ユカリ』だね」

向こうにC組のみんなが見えてきた。


次回「第2部:第10章 夏のエピソード(15):わたし達の仲を見せつけちゃいます」へ続く!

前回のお話「第2部:第10章 夏のエピソード(13):ビキニだって着ちゃいます」


対応する第1部のお話「第1部:第14章 夏のエピソード後編(6):水中騎馬戦」「第1部:第14章 夏のエピソード後編(7):ユカリ」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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今回と次回は第1部と同じシーンですが、裕美子ちゃん視点でより細かい描写、特に裕美子ちゃんの心情も書いていきます。挿絵は全て第1部のときのものです。
文章では明確に書いてませんが、アロン君が裕美子ちゃんに好印象を持ったものの一つに、バイクでタンデムしたときに見せた適応能力の高さがあります。
アロン君のバイクの後ろに乗った女の子は、裕美子ちゃん(第1部でいうと第14章 夏のエピソード後編にて)と、ライバルのカーラちゃん(第1部でいうと第18章 校外展覧会絵画展にて)がいますが、裕美子ちゃんの凄さが判ると思います。ここも何気に裕美子ちゃんがアピールしちゃってたところでした。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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