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<第2部:第11章 ピクニック(2):恐れていた明確なライバル(2)> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第342回
<第2部:第11章 ピクニック(2):恐れていた明確なライバル(2)>


翌日、バーベキューの前日。
女の子達はバーベキューの準備に向けて、町の東の公園に集まっていた。

朝とはいえ、夏の日差しはもうジリジリと肌を焼き付けるだけの威力を持っていた。
一番最初に着いた裕美子は、大きなケヤキの下の木陰に入ると、ふわっと薄手のレースのロングスカートを膨らませて中に新鮮な空気を送り込んだ。汗ばみそうな太ももに木陰の冷えた空気が涼しい。

程なくハウルとクリスティンがやってきた。

「やっほ、裕美子」
「おはよう、ユミちゃん」
「おはようございます」
「暑くなりそうね。畑の方を先に済ませちゃっおうね。時間経つとあの辺むあっとしてたまんないから。日焼けするかなあ」
「日焼け止めクリームあるわよぉ?塗る?」

膝上の青っぽいワンピースから伸びるピチピチ弾けそうなクリスティンの足は、こないだの臨海学校で日焼けして赤くなってたのも落ち着いて、白さが蘇っている。

お手入れ上手なんだなぁ。

ハウルはクリスティンから日焼け止めクリームをもらうと、ミニスカートから惜しげもなく出しているカモシカのようにしなやかな脚を石の上に乗せて、ペタペタと塗り始めた。

「ダリ・ビーチで美女が使ってた日焼け止めクリームがすごく良くって、あれ塗ったらほとんどダメージなかったのよね。帰ってきてからの方が日焼けしたわ」
「美女さん、お金かけてるもの。ユミちゃんも使う?」

2人は裕美子の足元を見た。裕美子の足で露出してるのはふくらはぎの半分より下だけだ。

「・・踝だって日焼けするよ~?あ、あと腕も」

そこにカーラが最後にやってきた。カーラは既に全身こんがりと日焼けしていて手遅れだった。

「みんな、おはよう」
「おはよ、カーラ。あらあら、そんなに焼けちゃって。ソバカス増えちゃうから気を付けなきゃって・・」

クリスティンがいつもの緩いにこやかな笑顔を向けたが、すぐ異変に気付いてカーラの顔を覗き込んだ。

「もしかしてダリ・ビーチから帰ってからずっとそんな?」

カーラは笑顔を作ってはいるものの、目が笑ってないというか、半分死んでいる。ぜんぜんいつもの調子と違っていた。力の抜けた肩とか、裕美子から見ても意気消沈してるのが分かった。

「おばあちゃんとこ行ってたんでしょ?」
「うん・・。ほとんど一日中庭のソファーで寝そべって空見てたわ・・」

それで日焼けしちゃったのか。

「空元気出してたと思ったけど、やっぱり相当ダメージ受けてたのねぇ~」
「美女もこれくらいショック受けてたらかわいげがあるんだけどね~。でももう違うこと考えてるんだろうな」

美女さんがショック受けてもよかったところで、カーラさんがショック受けちゃって意気消沈してるってことは・・・

カーラに対してモヤモヤ思っていたことが、これでようやくはっきりとした。

「あの・・カーラさん。やっぱりアロン君のこと、好きだったんですか?」

カーラは3m前の地面を見ていた顔を上げて裕美子を見ると、奇妙な笑い方をした。

「私が?あは?あははは・・・はぁ~・・」

ハウルが困ったものを見るようにして言った。

「裕美子、今まで気付かなかったの?」
「ご、ごめんなさい、わたしこういうのうとくって・・・。もしかしてそうかなとは思いましたけど・・でも近からず遠からず、いつも微妙な位置にいるからどうなのかなって。会話もいつもぎこちないし・・・」

これを聞いてハウルは「はぁ~」っとため息をついた。

「ほらあ、やっぱり。これじゃあアロンにもカーラの思いなんて届いてないわよ」
「いいのよ、アロン君はおさななじみの許嫁のものなんだから。あははは・・はぁ~・・」

やっぱりそうだったんだ。オリエンテーリングの後でも、あの海賊事件でも、アロン君を見るまなざしが何となく気になった。意外とガードの堅いアロン君でさえも気を許している人、それほど感覚の合う人だから気になってた。なんだか固い接し方してるけど、やっぱりあのまなざしは好きな人を想う目だったんだ。だから許嫁がいると分かった時、その娘を連れてやってきたのを見た時、大変なショックだったんだ。
結局あの許嫁の幼なじみは嘘で、あのお披露目会見もわたしが引き受けて変装してやったんだけど、カーラさんはそれ知らないから今まで・・・

「でもおさななじみさん、いつまでもいるわけじゃないんでしょう?」

まるで見透かしているかのように、クリスティンがその問いを裕美子に向けて投げかけた。裕美子は大慌てで答えた。

「え?も、もう帰っちゃったんじゃないですか?」

アロン君のこと好きならなんでもっと目立つようにしなかったのかしら。ハウルさんも知ってるって事は、わたしみたいな事情があるわけでもないんでしょ。だからこないだの臨海学校は美女さんと幼なじみの対決になっちゃって、カーラさんはぜんぜんそこに上がってきてないじゃない。

「あの、カーラさんはおさななじみがいようがいまいが、立場がよくわかんないです・・。それだから美女さんにも割り込まれちゃうんじゃないですか?」

するとカーラの目がどんどん潤んできた。

「ど、どうせあたしははっきり言う勇気もないわよ。ちょっと誕生日に連れ出してもらっただけで有頂天になって、それだけで満足しちゃうのよ」

え・・え?そ、それは初耳だわ!

「そんなことがあったの?」
「すごいじゃない!誕生日に誘い出されたんだ」

クリスティンとハウルも初めて聞いたようで、びっくりして聞き返した。

「あ、いや、偶然ばったり会って、誕生日なんだけど頼んでたものが手に入らなくなったって言ったら、それじゃ代わりにって連れてってくれたの・・」
「なんだ、計画されてたわけじゃないのね」

ちょ、ちょっと待って。だとしても、その場で急に思い立って、どこだか知らないけど、アロン君から誘って連れてってくれたんでしょ。

「いつだっけ?誕生日」

クリスティンが聞いた。

「7月8日」
「期末考査の真っ最中か。それで私らにも言ってなかったのね」

試験の真っ最中?!そんな時に時間割いて行ってくれたの?

お勉強が大事な裕美子から見れば、期末試験の真っ最中にそれと引き替えに何時間も遊びに出るなんて事は、よほどの事がないとできない事柄と思ったみたいで、結構ショックだった。普段率先して詮索する人ではないのに、思わず突っ込んで聞いてしまった。

「それで、何か起こらなかったんですか?その、連れてってもらった他に」
「別に・・・普通に行って帰ってきただけだけど」

ハウルとクリスティンはがっかりした顔を見合わせた。

そ、そっか。アロン君困ってる人には損得なく手を貸してあげるからな・・。そんな状況だったら美女さんにだって・・・。

「アロン君、誰にでもやさしいところあるから・・」

でも、何頼んでたのかわからないけど、お誕生日に手に入らなかったとはいえ、期末考察中に行かなければならないほどの事だったんだろうか・・。やっぱりそこは、カーラさんだからじゃないんだろうか・・・。

一方、裕美子の言にカーラはその場にしゃがみ込んでしまった。

「どうせ誰にでも優しくしたうちのひとつよ!」

裕美子は慌ててカーラの側に寄り添った。

「あ、でもでも、アロン君好き嫌いははっきりしてるから、試験中にそんな気を使ってくれたってことは、カーラさん気に入られてるからじゃ?美女さんはあんなに遠ざけようとしてたのに」

そうよ。アロン君といえど、そこまでしてくれたのはカーラさんだからだと思う。他のC組の女の子でそこまでしてあげる人なんて、思い当たらない。

しかし裏事情を知らないカーラはなおも伏せ込んだ。

「決まった人がいたからでしょ?あたしが告白してたら、同じように避けられたのよ」
「そうかなぁ~」
「あの反応は美女さんだからって感じよね」

わたしも、もし本当にアロン君に幼なじみの許嫁がいたとしたら、そこにカーラさんが告白してきたとしても、逃げ回ったりはしないんじゃないかと思う。きっときちんと断ったか、カーラさんへの思いが強かったならカーラさんを・・・

急に悲しさがこみ上げてきた。

わたしじゃ・・ないんだよね、選ばれるのは・・・

しかしそこに疑問が浮かんできた。幼なじみは架空の人だったのだ。小さかったが、声を出してそれを口にしてしまった。

「でも好意あるなら、カーラさんに頼めばよかったのに・・なんでしなかったのかしら・・」

幼なじみの代役・・。

その呟きが聞こえたらしいハウルが聞き返した。

「?。なんのこと?」
「い、いえ!なんでもありません!あの、カーラさんは美女さんよりずっとリードしてます。だから美女さんに対して劣等感持つことなんてぜんぜんないと思いますよ。そ、その・・あとは気付いてもらわなきゃ・・」
「そうよ。今回はいいチャンスよ~」
「う、うん・・」

アロン君がカーラさんの事気に入ってるんだったら、わたしはそれを応援しなきゃいけないんだよね・・。わたしは彼を影から支えるんだから。
そしたら・・幼なじみの許嫁はわたしの芝居だったって、言ってあげたら?カーラさん喜ぶよ?
・・・・・違う。わたしが応援するのはカーラさんじゃなくてアロン君。必要ならアロン君がカーラさんに打ち明けるはず。わたしから明かしちゃいけないんだと思う。

そろそろ頃合いと思ったハウルが切り出した。

「よーし、それじゃそろそろ買い出し行きましょ!デザートを頼まれたんだ」

今日集まった本来の目的。それは明日河原でやるバーベキューに持って行くデザートを女の子達で作ることだった。
メインのお肉や野菜は勇夫率いる男子達、アロン、レソフィック、それにリーダーことチャンが準備してくれる。なので食後のデザートを女子で受け持つ事になった。それも涼しげなのがいいというリクエスト。
まずは材料を買うため、片いなかの町に隣接する畑に近いここに集まったのだった。


次回「第2部:第11章 ピクニック(3):カレシ候補選び?」へ続く!

前回のお話<第2部:第11章 ピクニック(1):恐れていた明確なライバル(1)>


対応する第1部のお話「第1部:第15章 ピクニック(2):女の子集合中」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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第1部と同じ場面を裕美子ちゃん視点で振り返っています。この章はもしかしてずっとこうなるかも?
ここで裕美子ちゃんがあの幼なじみは自分の変装だったことを隠しちゃった事は、当然のことながら後々の火種になってしまいます。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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