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<第2部:第11章 ピクニック(4):バーベキュー当日> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第344回
<第2部:第11章 ピクニック(4):バーベキュー当日>


翌日。バーベキュー当日。
ここはアロン達のアパート。アロンの部屋では男子達が荷物の分担を振り分けていた。

「勇夫は炭火コンロと食器、レソフィックは飲み物のクーラーボックス、リーダーはこの炭持ってってな。って、リーダー目覚めたか?」
「うぇっぷ。なんか頭が痛いんだけど・・」
「なんだよ二日酔いか?だらしねえなー」
「一番飲ませたレソフィックが言うか」
「で、俺は肉をと。勇夫、豚肉の方いいか?」

勇夫が担当した豚バラ肉は、この日の朝に茹でてタレに漬けていた。勇夫からアロンに茶色いしょうゆベースのタレに漬かった豚バラ肉が渡された。

「3,4時間後にはちょうどいい漬かり具合になってるんじゃねえか?」

アロンはそれをクーラーボックスに入れた。

「よっしゃ。そんじゃ行こうか」
「おーいリーダー、しゃきっとしねえと小泉に愛想つかれるぞ。ハハハ」
「くそー、向こう行ってもこのままだったらレソフィック恨むからな」

小泉と聞いたアロンはぴくっと反応した。2週間前のC組臨海学校で、2日目途中に帰ったアロンを最後見送ってくれたのが裕美子だった。架空の許婚の幼なじみを完璧に演じ、C組の男子のみならず女子からもアロンにはかわいくて元気闊達な許婚がいるという認識をたった5分で定着させてしまったのだ。その裕美子が演じた幼なじみにはアロンもびっくりしたが、その前後、幼なじみ役を頼んで水着を買いに行くところから、一足先に帰るのを見送ってもらうまでの長時間を一緒に、それも水着姿でバイクにタンデムして、肌と肌を触れ合って過ごしたことで、学校では見なかった裕美子を垣間見て、アロンも裕美子という人への関心が高まっていた。だから今日会えるというのが、密かに楽しみになっていた。

『普段学校では結構きついこと言われるし、あんま起伏のないしゃべりをしてるけど、臨海学校のときは二人でいて結構楽しかった・・て思ったもんな』

でも昨夜のビールを一杯引っ掛けながらの話で、主に裕美子の相手は裕美子を気に入っているらしいチャンがすることになっていた。

『でもまあ少しくらい話するときもあるだろうし。』




片いなかの駅前ロータリー。女の子達は一足先に集まっていた。
木陰になるところで待っていると、アロン達が車輪のついたキャリアに荷物をたくさん載せてやってきた。

「お、来たね。ご苦労ご苦労」

『ハウルさん、呼び出して準備させておいて、もうちょっとましな言いようないですかね』
腰に手を当てて偉そうに迎えるハウルに裕美子は心の中でそう突っ込んだ。

「今日はありがとう。すごい大荷物ですねぇ。大丈夫?」

『クリスティンさんはさすがです。ちゃんとねぎらってますね』

「なんだ、ハウルも何か担いできてるじゃないか」

ハウルの姿を見たアロンが言った。ハウルが肩からかけているのはクーラーボックスだった。

「こっちも頼まれてたデザートちゃんと準備してきたんだから。私作ったんだよ?」
「ぜってー、それはねえ」

いつものように即座に力強くレソフィックが否定した。

「失礼な奴だな。こんな重たい思いして持ってきてるのに、持ってあげようかとか言えないの?」
「こっちだって荷物満載だし」
「ひねくれ者が。いいわよ、あんたにはあげないから」
「ああ!デザート運搬ご苦労様です!確かに運んでおります!確認しましたです!」

脅されてとたんに弱くなるレソフィック。分け前がなくなるのだけは嫌なようだ。でもハウルが作ったというところを認めた訳じゃない。

「肉も大量に仕込んで持ってきたから。たんまり食ってもらうぜ」

アロンが自分の提げているクーラーボックスをポンポンと叩く。

『アロン君とレソフィック君も大きなクーラーボックスを担いでいるな。本当にたくさん準備したんだな』

裕美子は男子の食欲を読み切れなかったので、どれだけ食材を持ってきたのか気になっていた。

「わーい、期待してまーす。それじゃ行こうか」

ハウルが先頭切って改札へ向かった。
裕美子はメガネ越しにアロンを追っていたら、アロンもこっちを見た。てへっと笑った。

『あら、目が合ったら、アロン君少し照れたように笑って・・かわいい。アロン君と会うのは、臨海学校で一人先に帰るアロン君を見送って以来。でもあれはみんなには内緒のことだから、ここでおおっぴらに話すわけにいかない。二人して目で合図して笑うくらいしかできない。でも、それはわたしとアロン君だけが知っていることだと思うと、ちょっと幸せ。あ、でもレソフィック君と勇夫君にはさすがに話してるかな。』

一方アロンの方も、

『みんないるところでは話しづらいな・・』と思っていた。

『それにしてもなんか小泉の印象が違うな。・・・そっか、あの時は髪を濡らしてストレートヘアにしてたから、その印象が強く残ってんのか。幼なじみユカリバージョンっていうのかな』

裕美子のくるくるとした髪の毛は、濡れるとクセが取れて真っ直ぐになるという特徴あるくせっ毛だった。アロンの幼なじみを演じたときは、裕美子であることを隠すためもあって、髪を濡らしてストレートにした。その外観の違いとめちゃくちゃ明るく振舞ったことで、幼なじみ『ユカリ』が裕美子だと気付いた人はいなかった。
二人で言葉交わさずに目だけで意志を通じ合わせていたら、そこにカーラがやってきた。というか、後ろからクリスティンに押されてやってきたみたいだった。
口元がカチコチに強張りながら「な、な、何か、も、持とうか?」とアロンに言った。

「それは助かるけど・・、どれも重いよ?」
「へ、平気。力持ちだから」
「じゃ、これ頼もうかな」

キャリアに少し不安定そうについていた袋を外すと、それをカーラに渡した。

「野菜とかが入ってるんだけど」
「うん、わ、分かった」
「それにしてもカーラ、ずいぶんよく日に焼けてるねえ」
「わひっ!!やっ、やっぱり?!ソ、ソバカス、増えちゃったかな」

二人は並んで改札へ向かって行った。

『カーラさん、がんばってね。・・・はあ、ちょっと寂しいなあ』

ふと横に人の気配を感じて裕美子は振り向くと、そこにリーダーが立っていた。とたんに昨日、リーダは裕美子のカップリングの相手と勝手に決められていたことを思い出して、「ひゃっ!」と飛びのいてしまった。

「ああ、いきなり横に立っててびっくりさせちゃいました?すみません・・」

いつものリーダーらしい覇気がなくてなんか変だった。

「こ、こちらこそ、失礼しました。・・なんでしょう、元気ありませんね」
「ああ、昨日ちょっと飲み食いしすぎたみたいで・・。もうちょっとしたら回復しますよ。ははは・・」
「そ、それは・・・。大丈夫ですか?荷物も重そうですし・・」
「大丈夫です。少し動いて汗かいたほうがいいみたいなんで。ははは・・」

リーダーは右手と左手にそれぞれビニール袋に入った段ボール箱をぶらさげていた。

『手伝ってあげたいけど、わたしも敷物が入った袋を持ってるし・・。』

「たいして違わないかもしれないですけど、こっちの手のビニール袋の手さげの片方だけでも持ちましょうか」
元気ないリーダーでも目が輝いた。

「心配してくれるんですか?う、うれしいな」

『あ、リーダーになんか、き、期待させちゃった?』

「でも大丈夫ですよ。それにこれ結構重いですから。さあ、行きましょうか」

『でもちょっと元気になったみたい。よかった。』


次回「第2部:第11章 ピクニック(5):河原」へ続く!

前回のお話「第2部:第11章 ピクニック(3):カレシ候補選び?」


対応する第1部のお話「第1部:第15章 ピクニック(8):バーベキュー当日」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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裕美子ちゃん視点の第2部ではありますが、この先はアロン君の心の内も少し載せていこうかと思うようになりました。第1部でも書いてこなかったのになぜ??
第1部ではアロン君が誰を選ぶのかというのをなるべく後ろに引っ張るために、そういう描写は書かないように努めていたというのがあったからです。またまた情報操作で申し訳ありません。
夏のエピソードで大きく印象付けた裕美子ちゃんと、この章で進むカップリングの話とで、アロン君もすんなり決めたわけではありません。ということでその辺の揺れ動く気持ちも書いていこうと思います。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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