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<第2部:第13章 アロン君の誕生日(1):残暑の倉庫作業> [片いなか・ハイスクール]

「片いなか・ハイスクール」連載第359回
<第2部:第13章 アロン君の誕生日(1):残暑の倉庫作業>


週明けの月曜日は、2学期最初の消耗品補充の日だった。

やった。またオフィシャルに二人っきりになっていい日が来たわ。

「アロン君、業者のトラックが到着したそうなので、台車持ってきてもらえますか?」
「お、今日はその日かあ。わかったすぐ行く。先に荷物受け取っといてくれ」

わたしが業者の人と荷物の数をチェックしている間に、アロン君は用務員室から台車を借りて転がしてくる。アロン君が来る頃にちょうどチェックも終わって、すぐ台車に荷物を乗せられた。なんて手際いいのかしら。流れるようにスムーズで、何も言わなくてもやることが通じ合って気持ちいい。

「荷物少ないね」
「夏休みでしたから。そんなに減ったりしてないはずです」
「あ、そうか。そりゃそうだな。思いがけず何か異常に減ってたりしたら面白いけどな」
「そんな面倒な事になるの、わたしは嫌です」

倉庫の前に着いたところで、わたしは倉庫の鍵を取り出す。鍵を開けようとしたところでアロン君が横からわたしを覗きこんだ。

「小泉。あのさ、もしかして倉庫の中ってサウナ状態?」

7月の晴天猛暑程ではないにしろ、残暑厳しい9月の初旬。お天道様は真上でギラついて倉庫の屋根を焼いている。暑いだろうなぁ。

「たぶん・・熱気ムンムンでしょうね。また汗だくになっちゃうかしら」

鍵を開けてガコンと扉を開けると、もおっと暑い空気が倉庫の中から飛びかかってきた。ああ、7月の補充の時を思い出しますね。

「うわ!しばらく開けっ放しにして暑い空気出るの待とうぜ」

わたしも同意見。

「そうですね。奥の小窓開けてきます」

奥の壁に一つだけある小さな小窓を開けた。僅かだけど空気の流れができて、中の熱気が外へ出てくる。でも微々たるものだ。

「備品に扇風機ないかなあ」
「アロン君と何度か中の在庫数えたりしたけど、扇風機なんてなかったじゃないですか」
「そうだよな~。小泉、次の補充の時に扇風機頼んじゃえよ」
「でも次は10月ですよ。もういらないんじゃないですか?」
「じゃあ来年のために」
「アロン君、来年もこのお仕事やるんですか?わたしはもうこの係やってないと思いますよ」
「あ、そうか」
「アロン君、手慣れてるから、来年の係りの人が有難がると思いますよ。来年もやったら?」
「ええ?いいよもう」
「・・もし来年もわたしこの係やらされたら、アロン君呼んじゃおうかしら」
「そういや、小泉のお願い聞くのって、期限どうなってんのかな」

アロン君がわたしの備品管理係りを手伝っているのは、入学してすぐやったオリエンテーリングのときにいろいろあって、わたしのお願いを何でも聞いてくれるっていう約束をしたからだ。わたしは月初に必ずある備品補充にアロン君を手伝わせることで、月に1回は必ずアロン君とお話ができる機会を作ったのだった。
わたしは傾いだ首をアロン君の方に向け囁いた。

「ずっとです、ずっと」
「え、俺一生小泉の使いっぱ?」

高校通ってる間じゃなくて、一生って言ってくれたのが嬉しかった。
そして、いつの間にかこうして自然にお話ができるようになったことに感謝した。

「そ。ずっとです」






扉を開けて換気したものの、壁や天井、中にある備品もすっかり熱を帯びていて、結局あまり倉庫内の温度は下がらず、わたし達は仕方なくその中で消耗品の補充と在庫台帳の更新をした。
わたしは1枚脱いでTシャツ姿になり、髪も後ろで縛って出来る限り防暑対策したけど、やっぱり汗だくになってしまった。

うわあ、アロン君あんまり近寄らないで・・

あからさまに壁に張り付いて避けたのがよくなかったみたい。

「何で逃げてンの?」
「う・・だって汗だくだから、汗くさいかもと思って・・」
「そうか?それなら俺の方がよっぽど心配だけど。・・小泉は汗っていうより、髪の匂いが・・さっきより強くなった?」
「か、髪?!」

わたしは、もわもわしたくせ毛の髪に手をやった。

「なんか付けてるの?」
「な、何も・・・臭い?」
「変な匂いじゃないよ。香水みたいの付けてる訳でもないんだ」
「あ、あの、たぶん・・そういう年頃だから、かも。女の子の・・」
「そうなの?そういや他の女子もいろんな香りが漂ってくると思ってたけど、あれ香水とかじゃないんだ」
「コロンとか使ってる人もいると思いますけど・・わたしはあんまりそういうの・・」
「化粧もしないもんな」
「う、ごめんなさい、色気なくて・・。よく見てますね?」
「肌とかきれいだから、そのままでいいんじゃねえの?それでも小泉でも化粧すると化けるのかな」

肌きれい?!そこまでわたし見られてるの?

頬を思わず覆ってしまった。

顔、熱い・・
この火照りは、倉庫の中の暑さのせいだけじゃなさそう。

「も、もう出ましょう。ゆでダコになりそうです」
「あ、そうだね」

いつの間にかアロン君、わたしの事、見てるんだ・・。嬉しいような・・・






作業が終わって倉庫の外に出ると、けっして気温は低くないのに、外の空気がひんやりと感じた。キャミソールが汗で張り付いて気持ち悪い。

「あー、しんど。小泉ー。冬になったらこの中に温まりにこようぜ」

な、なんですか?誘ってるんですか?わ、わたしとでいいんですか?

「な、なんでわたしがそんなことに付き合わされるのかわかんないですが・・・。それよりたぶん冬の倉庫の中は、残念なことに寒々としてるんじゃないかと思います」
「えー?使えねーな。夏はくそ暑く、冬は寒ざむかい」
「居住するところじゃないですから。それじゃ戻りましょう。今回もありがとうございました」
「あいよ。あー、喉渇いた」
「わたし、カフェでアイスティーもらっていきます」
「それで水筒持ち歩いてたのか」

カフェテリアに行くと、格安でお茶やコーヒーを淹れてもらえるのです。ただしマイカップ持参が基本。わたしは300mmlくらい入る保温水筒をあらかじめ持ってきていた。

「アロン君も教室戻ってマグカップ取ってくれば?」

アロン君はいつも教室で大きな陶器のマグカップを使っていた。確か船の絵か何かが描いてあったと思う。

「そうしようかな」
「わたし倉庫の鍵を生徒会室に戻してくるので。もういいですよ」
「ああ。そんじゃお先」


次回「第2部:第13章 アロン君の誕生日(2):マグカップ粉砕」へ続く!

前回のお話「第2部:第12章 女の子たちのグループ交際反省会(10):アロン君の家に初めてお邪魔」


対応する第1部のお話「第1部:第17章 アロンの誕生日:カーラのプレゼント」
☆☆ 「片いなか・ハイスクール」目次 ☆☆



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九州の地震、こんなに酷くなるとは思いもよりませんでした。
長くなりそうですが、人的被害は今からでも抑止できるものがあるかも。そしてこんな時こそ助け合いましょう。

ページ下の方に安否確認サイトのリンクがありますのでご活用ください。
(通年貼り付けていましたが、熊本地震で活性化されてますね)

これを見てると首都圏直下は想像したくありません。
でも備えよです。それが自分を守るかもしれないし、自分が無事なら他の人を助ける余力も生まれるでしょう。
自分のためでもあり、人のためでもあります。


長らく更新が滞っておりました。
東日本大震災のときのような特別記事は書かず、いつものとなります。
二次小説の方のネタは順調に溜まっているのですが、次は片いなか・ハイスクールで更新したかったので、できあがってくるまで更新しませんでした。筆が進まないときはこんなこともあるので、見捨てず、たまに覗きに来ていただけると幸いです。


※片いなか・ハイスクール第2部は、第1部のエピソードを裏話なども交えながら本編のヒロイン裕美子の視点で振り返るものです。ぜひアロン目線の第1部のその部分と読み比べてみてください。「対応する第1部のお話」で飛ぶことができます。



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